【はじまらない結婚】1話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

【はじまらない結婚】第1話をネタバレありで解説する
物語は、主人公である陽(ひなた)の、ささやかで愛おしい習慣から始まります。それは、「いいことあった日にはシールを貼る」というもの 。彼女のカレンダーは、夫となる「木(いつき)」との初デート、彼の誕生日、そして入籍記念日と、輝く太陽のシールで埋め尽くされています 。彼女の名前の通り、陽だまりのような幸せな日々の記録です。そして物語の冒頭、彼女はウェディングドレスに身を包み、まさに人生で最高に輝かしい日である「結婚式」の欄にも、太陽のシールを貼るのでした 。しかし、この幸せの絶頂は、あまりにも突然、そして残酷な形で終わりを告げます。
幸せの絶頂から突き落とされた日
希望に満ち溢れていたはずの結婚式当日に、陽は想像を絶する悪夢の淵へと突き落とされます。当たり前だったはずの日常が、音を立てて崩れていく様子が描かれます。
幸せの象徴が示す残酷な現実
前述の通り、陽にとって太陽のシールは幸せの象徴でした。カレンダーには、お腹に新しい命が宿ったことを示す「赤ちゃん 妊娠」の文字とシールも貼られており、彼女がこれから始まる未来をどれほど楽しみにしていたかが伝わってきます 。
ところが、物語は急転します。結婚式の直前、陽は夫となる木がホテルのの一室で別の女性と一緒にいる場面を目撃してしまうのです 。その瞬間、彼女が信じてきた「特別な人」との幸せな世界は、すべてが偽りであったかのように崩れ去りました 。幸せの記録であったはずのカレンダーが、一転して痛々しい過去の遺物に見えてしまう、あまりに衝撃的な展開です。
誓いの場での絶叫
場面は、何も知らずに進行していく結婚式の誓いのシーンへと移ります。神父が新郎の木に永遠の愛を問い、彼はよどみなく「はい 誓います」と答えます 。しかし、同じ問いを投げかけられた陽は、言葉に詰まり、長い沈黙の末、溜め込んでいた全ての感情を解き放ちます。
「誓えるわけないでしょー!!」
静寂なチャペルに響き渡る彼女の悲痛な叫び声。この一言で、偽りの結婚式は崩壊します。彼女の行動は、単なる感情的なものではなく、裏切りに対するあまりにも当然で、人間的な抵抗でした。
過去に隠されていた綻び
なぜ、こんなことになってしまったのか。物語を読み進めると、この悲劇が突然起きたものではなく、二人の関係には以前から小さな綻びが隠されていたことが明らかになります。
陽が感じていた違和感の正体
実は陽自身も、この幸せすぎる状況にどこか違和感を覚えていました。「おかしいと思ってた こんなに上手くいくはずがないと」 、そう心の中で呟きます。幼なじみと結ばれ、子どもを授かるという、あまりに完璧なストーリー展開に、彼女の心は無意識に警鐘を鳴らしていたのかもしれません 。
その違和感の正体は、過去の回想シーンで具体的に示されます。妊娠を告げた陽に対し、木の最初の言葉は喜びではなく、「避妊してって 言ったのに」という冷たいものでした 。この一言に、彼の無責任さと、陽がこれから背負うことになる孤独の影が色濃く映し出されています。
一人だけで進んでいく時間
妊娠による身体の変化は、当然ながら陽だけに訪れます。つわりは想像以上に重く、医師から「ケトン体が出てる」と診断され点滴を受けるほどでした 。心身ともに辛い状況の中、彼女は「変わっていくのは 私の方だけで」と、深い孤独感に苛まれます 。
このどうしようもない不公平感と、木への不信感が積み重なった結果、陽は心身ともに限界に達していました。病院のベッドで「私のことを大事にしない男となんか」と後悔の念に駆られる彼女の姿は、痛々しくて見ていられません 。
絶望の淵で交わされる言葉
物語のラスト、病院に迎えに来た木に対して、陽の感情が堰を切ったように溢れ出します。それは、これまで彼女が一人で抱え込んできた苦しみの結晶でした。
「もうやだ 産まないよ!」
「こんな風に産まれてきて 幸せな子なんていないよ」
これは、決して産まれてくる子どもを憎んでいる言葉ではありません。むしろ逆です。愛されていないかもしれないという不安の中で、この子を本当に幸せにできるのだろうかという、母親としての深い苦悩から生まれた悲痛な叫びでした。この言葉は、何も言えずに立ち尽くす木に、そして読者の心に重く突き刺さります。愛のない関係から生まれる命の幸せとは何か、という根源的な問いを投げかけ、第1話は幕を閉じるのです。
まとめ【はじまらない結婚】1話を読んだ感想
第1話を読んで、まず心を鷲掴みにされたのは、そのジェットコースターのような展開の激しさです。太陽のシールで彩られた幸せな日々が、結婚式当日に地獄へと叩きつけられる。この落差があまりにも見事で、一瞬で物語の世界に引きずり込まれました。
特に印象的だったのは、陽が感じていた「うまく行き過ぎる」という違和感です。幸せの絶頂にいるはずなのに、どこか醒めている彼女の視点があったからこそ、その後の悲劇がより一層リアルに、そして切実に感じられました。妊娠を告げた時の木の冷たい反応は、多くの女性が共感し、そして怒りを覚えるポイントではないでしょうか。
陽の視点から見れば、木はただの無責任で冷酷な裏切り者です。しかし、彼のどこか追いつめられたような、悲しげな表情を見ると、彼にも何か事情があるのではないかと勘ぐってしまいます。そして、彼と一緒にいた「星」という女性は一体何者なのか。謎が謎を呼び、ページをめくる手が止まりませんでした。
「はじまらない結婚」というタイトルが、まさにこの第1話の状況そのものを表しています。始まるはずだった結婚が、始まる前に終わってしまった。この絶望的な状況から、二人の関係、そして陽の人生は、一体どこへ向かうのでしょうか。これは単なる恋愛の物語ではなく、一人の女性が理不尽な現実と向き合い、自分自身の幸せをどう見つけていくのかという、壮絶なヒューマンドラマの幕開けなのだと感じました。
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