【はじまらない結婚】11話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

【はじまらない結婚】第11話をネタバレありで解説する
季節は5月。お腹の子供は順調に育ち、陽は木に家を出てもらった後、一人での生活を送っていました。第11話は、別居後も続く二人の対話と、許したい気持ちと現実の間で揺れ動く、陽の苦しい胸の内が描かれます。そして物語は、夫のあまりにも純粋で、あまりにも無力な愛の告白へと繋がっていきます。
夫の言い分と、妻の冷めた分析
木は時折、陽の元を訪れ、話し合いを続けていました。彼は、これまで語らなかった自身の弱さや、過ちを犯した時の心境を、ようやく陽に打ち明けます。
「最低だと言わない人が、味方に見えた」木の告白
木が語ったのは、父親になることへの、誰にも言えなかった不安でした。避妊をしなかったことへの罪悪感や、陽が本当にこの結婚を望んでいるのかという疑念。しかし、それを誰かに相談すれば「オレが最低だ」と非難されることは分かっていました 。そんな時、彼の弱さを否定せず、味方のように振る舞ったのが星だったのです。彼は、自分の愚かさを認めつつ、星に傾倒してしまった理由を必死に説明します 。
「それを私に許せって言うの?」パワーバランスの罠
木の告白を聞いても、陽の心は晴れません。彼女は、木の言い分を「全く納得はいかなかった」と、心の中で冷徹に分析します 。陽には、この状況が、木が「許しを乞う人」、自分が「それを許す人」という、不均衡な関係性を生み出しているように見えていました。もしここで彼の弱さを受け入れてしまえば、この先もずっと、彼が引き起こす問題を自分が受け入れ続けなければならない。彼女は、この「パワーバランスが決まる」瞬間を、鋭く見抜いていたのです 。
許したい自分と、許せない現実
心の中では、木との関係を再構築したいと願う陽。しかし、現実はあまりにも厳しく、彼女は一人で答えを見つけようともがき苦しみます。
「1人で育てていくことは大変ですよ」第三者の言葉
陽は、産婦人科の相談員に、これまでの経緯を打ち明けます。相談員は、陽が心の奥底では夫を「許したいのかな」と感じ取りつつも、「時間をかけて許せるかもしれないし」「断言は出来ません」と慎重に言葉を選びます 。そして、「ただ1人で育てていくことは大変ですよ」と、現実的な問題を陽に突きつけるのでした 。
「浮気 許す」――ネットの海に答えを求めて
専門家からのアドバイスでも、陽の心は晴れません。彼女は、スマートフォンの検索窓に「浮気 許す」と打ち込み、ネットの海に答えを求めます 。しかし、そこに並ぶのは「結局は本人の問題」「苦しむだけだから別れるべき」といった無責任な言葉や、「子供には両親がいた方がいいですよ」「あなた1人で育てる覚悟はあるの?」といった、彼女をさらに追い詰めるような言葉ばかりでした 。
「許したい」という願望の呪い
陽は、自分が「許したい」「愛情を信じたい」と願えば願うほど、その願望自体が自分を捕らえて放さない呪いになっていることに気づきます 。母親からも実家に帰るよう促され、心は限界に達していました。そして、散らかった部屋の中で、彼女は涙ながらに呟くのです。「じゃあ 私たちの結婚は何だったんだろう」と 。
全てを捨ててでも、そばにいたい
人生のどん底で、途方に暮れる陽。そんな彼女の元に、ある日、木が再び現れます。彼の口から語られたのは、これまでの言い訳とは全く違う、魂からの叫びでした。
「オレの全てが否定されても、陽と一緒に居たい」
アパートを訪れた木は、陽に対し、驚くべき提案をします。「この部屋 全部陽の好きにしてくれていい」「オレの荷物を全て捨ててくれてもいい」「足りないものは全て買う」 。そして、こう続けるのです。
「オレの全てが否定されても オレは陽と一緒に居たい」
これは、彼の全てをかけて、陽と、生まれてくる子どもへの償いをし、そばにいたいという、あまりにも純粋な愛の告白でした。
「そんなことに何の意味があるの?」すれ違う二人の想い
しかし、木の必死の告白に対し、陽の反応は冷ややかでした。「許さなくていいから一緒に居させてほしい」と繰り返す木に、彼女は静かに問いかけます 。
「そんなことに 何の意味があるの?」
彼が差し出す「全て」を、陽はどうしても受け入れることができません。彼の覚悟と、彼女の絶望。二人の想いが痛々しいほどすれ違ったまま、物語は幕を閉じます。
まとめ【はじまらない結婚】11話を読んだ感想
第11話は、これまでの感情的なぶつかり合いとは一線を画す、静かで、しかし胸をえぐられるような回でした。木の未熟な告白には、彼の弱さや愚かさが滲み出ていましたが、同時に、不器用ながらも必死に陽と向き合おうとする誠実さも感じ取れました。
しかし、それ以上に印象的だったのは、陽の心理描写の巧みさです。「許す」という行為が、いかに複雑で、時に新たな力関係を生む危険性をはらんでいるか。彼女の鋭い分析には、思わずハッとさせられました。また、「許したい」というポジティブな願い自体が、自分を縛る呪いになりうるという視点は、この物語の深さを象Cしていると感じます。
そして、ラストの木の渾身の告白と、それに対する陽の冷たい一言。愛を取り戻すために「全てを捨てる」覚悟の木と、その行為に「意味」を見出せない陽。二人の断絶は、もはや修復不可能なレベルにまで達してしまったかのようです。希望が見えかけた先で、またしても絶望に突き落とされる。このジェットコースターのような展開から、全く目が離せません。
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