【はじまらない結婚】3話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

【はじまらない結婚】第3話をネタバレありで解説する
結婚式が破綻した翌日。物語は、始まるはずだった二人の甘い新婚生活とは程遠い、重く冷え切った空気の中から始まります。予定されていた新婚旅行は当然のように取り止めとなり、家路につく車内で交わされる会話は、必要最低限の事務的な言葉だけでした 。陽の心は固く閉ざされ、夫である木の存在そのものを拒絶しているかのような、息苦しい時間が流れます。
冷え切った「はじまり」と過去の温もり
結婚というスタートラインで、あまりにも大きな亀裂が入ってしまった二人の関係。現在の絶望的な状況と、対照的に描かれる過去の思い出が、陽の心の痛みをより深く浮き彫りにします。
音のない部屋と眠る夫
自宅に帰っても、二人の間の沈黙は続きます 。陽は、木の気遣いの言葉に対して「うん」と相槌を打つことすらできなくなっていました 。彼女が「コンビニ行ってくる」とだけ告げて部屋を出て、戻ってきたときには、木はすでにベッドで眠りについています 。
この状況に、陽は「うっわ。(神経)ズ太」「よく先に寝られるよね」と、怒りを通り越して呆れ果ててしまうのです 。あれだけの事件を起こしておきながら、先に眠れる木の無神経さが、陽の心をさらに逆撫でします。
全てが正反対だった新生活の準備
陽の脳裏に、過去の記憶が蘇ります。それは、新生活の準備を進めていた頃の、他愛ないけれど重要な価値観の衝突でした。
- 新居選び: 木は「安いし!」という理由で、ベランダのない物件を気軽に提案します 。しかし陽は、洗濯物が干せないという現実的な問題点を指摘し、意見は平行線を辿ります 。
- 家具選び: 木が「コスパ重視」で量販店を提案するのに対し、インテリア関係の仕事をしている陽は「いいもの買おう」とデザイン性を求めます 。色の好みも、落ち着いた色を好む木と、気分の上がる色を選びたい陽とで全く正反対でした 。
「何でイチイチ反対のこと言うの!?」と苛立つ陽に、木は悪気なく「陽はこだわりが強すぎるよ」と正論を返してしまい、彼女の心を傷つけてしまうのでした 。
価値観の対立が生んだ「新しい形」
ことごとく意見が食い違う二人。しかし、かつての陽は、その違いの中にこそ、二人で生きていくことの意味を見出していました。この幸せだった頃の記憶が、現在の裏切りをより一層、残酷なものとして際立たせます。
「こだわりが強すぎる」という言葉の重み
前述の通り、木から「こだわりが強すぎるよ」と言われたことは、陽にとって大きなショックでした 。なぜなら、彼女のこだわりは仕事にも繋がるアイデンティティそのものであり、これまでの恋人は皆、それを尊重してくれていたからです 。自分の大切な部分を理解してもらえない、初めての経験でした 。
アイスクリームが溶かした心の氷
喧嘩で気まずくなった雰囲気の中、木は不器用ながらも彼なりの優しさを見せます。黙って席を立ったかと思うと、二つのアイスクリームを手に戻ってきたのです 。そして、最終的には自分の意見を曲げ、陽が気に入っていた家具を買うことに同意します 。
この出来事を通して、陽は価値観の違いを乗り越えることに、ささやかな希望を見出していました。「これまでにない角度から何かに気付いたり」「相手にゆずったり ゆだねたり」すること。それこそが、「2人で生きていくのに新しい形だと思った」のです 。この前向きな気づきが、今は虚しい思い出として彼女の胸に突き刺さります。
「切るしか、ないよね」友が促す決断
回想から現在に戻り、一人きりで現実と向き合う陽。彼女の元に現れた友人の言葉が、固く閉ざされていた彼女の心を、新たな決意へと向かわせます。
「ごめんて謝ってそれで『終われる』?」
仕事へ向かう木を見送った後、陽は自問します。「どう修復するつもりなんだろう」 。ただ謝るだけでこの問題が解決するはずがない、という彼女の強い意志が、そのモノローグから痛いほど伝わってきます 。
幼なじみという名の裏切り者
場面は変わり、陽は友人と会っています 。友人に「別れないんですか?」と問われた陽は、「そんな簡単じゃないよ」と力なく答えるのが精一杯です 。そして、ここで衝撃の事実が明かされます。木の浮気相手は、なんと陽の「私の幼なじみ」だったのです 。夫と幼なじみという、信頼していた二人に同時に裏切られたという事実が、陽をさらに深い絶望の淵へと追いやります。
「女も旦那も」断ち切るべき縁
全てを知った友人は、陽に一枚の封筒(おそらく手紙)を差し出し、ハサミを手に取ると、力強くこう言います。「切りましょう」「『切るしか』だよね」 。この言葉は、手紙の封を切るという意味だけでなく、腐れ縁を断ち切るという強いメッセージが込められています。友人の後押しを受け、陽は静かに、しかし確固たる意志を持って呟くのでした。
「女も旦那も かなぁ」
その表情には、ただ悲しむだけではない、新たな決意の光が宿っているように見えます。
まとめ【はじまらない結婚】3話を読んだ感想
第3話は、現在の冷え切った時間と、過去のぶつかり合いながらも温かかった時間の対比が鮮やかで、胸が苦しくなる回でした。新生活の準備における価値観の対立は、あまりにもリアルで「あるある」と頷いてしまう一方、そのすれ違いを「2人で生きていく新しい形」と前向きに捉えていた陽の健気さを思うと、現在の裏切りが本当に許せなく感じます。
特に、木のキャラクター描写が絶妙です。回想シーンでは、ただ空気が読めないだけでなく、不器用な優しさで陽に歩み寄ろうとする一面も見えました。だからこそ、彼がなぜあんな過ちを犯したのか、その心の闇に興味が湧いてきます。
そして今回、物語を大きく動かしたのは、陽の友人の存在です。彼女の「別れないんですか?」というストレートな問いや、「切るしかだよね」という力強い後押しは、絶望の淵で立ちすくんでいた陽にとって、大きな転機となったに違いありません。ラストの「女も旦那も かなぁ」という陽の呟きは、復讐の狼煙のようにも聞こえます。悲劇のヒロインで終わらない、彼女の反撃がここから始まるのか。先の展開から目が離せません。
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