【みいちゃんと山田さん】15話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

【みいちゃんと山田さん】第15話をネタバレありで解説する
第15話のタイトルは「モラトリアム」。これは、社会的な責任や義務を一時的に猶予される期間を指す言葉です。このエピソードでは、就職活動に励む「普通」の大学生・ココロちゃんと、その生き方に疑問を抱く山田さん、そして社会のレールから外れて生きるみいちゃん、三者三様の人生の岐路が描かれます。
就活生ココロと、交わらない価値観
物語は、大学3年生のココロちゃんの視点から始まります。2012年6月、彼女は就職活動の真っ只中におり、「一度切りの人生 完璧に幸せなまま走り切ってみせる」と、エリートコースを歩むことに強い意志を持っています 。そんなある日、彼女は街で偶然みいちゃんに遭遇しますが、「お店にいるココロちゃん!」と源氏名で呼ばれたことに嫌悪感を示し、人違いだと嘘をついてその場を去るのでした 。
後日、店でそのことをみいちゃんに咎められたココロちゃんは、さらに「みいちゃんにちんちくりんな服装でそばにいられるの恥ずかしかったんだから」と、辛辣な言葉を浴びせます 。彼女にとって、みいちゃんは自分の「完璧な人生」には相応しくない、価値観の合わない存在でしかありませんでした。
「普通」を生きる苦悩と、山田さんの選択
同じ大学3年生でありながら、山田さんはココロちゃんとは全く違う価値観を持っていました。就職活動を一切していないことを心配するココロちゃんに対し、山田さんは「私ってなんのために生きてるんだろうか?」と、自身の存在意義について深く悩んでいたのです 。
彼女は、親の望む通りに学校へ行き、就職し、本当にやりたいことと違うことに人生の大半を費やすという生き方に「頭がおかしくなりそうだよ」と感じていました 。会社に入ってやりたいことも特にないため、「就職はしないかな」と結論付けています 。
そんな二人の様子を見ていた客の男性は、ココロちゃんを「結局何者にもなれないモラトリアム人間」と揶揄します 。しかし、本当に「モラトリアム」の只中にいるのは、社会のレールから自ら外れ、自分の生きる意味を模索する山田さんの方だったのかもしれません。
一日のデートと、手作りのイヤリング
ココロちゃんに侮辱され、傷ついたみいちゃん。その様子を見ていた山田さんは、「(そばにいて)恥ずかしいなんてことないよ」と、みいちゃんをかばいます。そして、その言葉を証明するかのように、翌日の出勤前に二人で買い物へ出かけることになりました 。
アクセサリーショップで、みいちゃんは浴衣イベントでつけたいという、金魚モチーフのピアスに一目惚れします。しかし、彼女にはピアスホールが開いていませんでした 。すると、山田さんは「ちょっと寄りたい所があるんだけど…」と言い、ある行動に出ます。彼女は店の店長からペンチを借りると、ピアスの針の部分をカットし、別のパーツを接着剤で取り付けて、見事な
イヤリングへと作り替えてみせたのです 。
宝物と、夏の日の消失
「すごーい!!」と、手作りのイヤリングにみいちゃんは大喜びします。「宝物にするね」という言葉に、山田さんの心は温かい感情で満たされました 。
「私が手がけたものが誰かの宝物に…」「私がやりたいことか……」
誰かのために何かを作り、喜んでもらうこと。そこに、彼女は自分が本当にやりたかったことの、小さな光を見出したかのようでした。二人の心温まる交流は、梅雨が明け、夏の訪れを感じさせます。
しかし、物語の最後のページで、ナレーションは非情な一文を告げます。
「この夏 みいちゃんは 私の前から姿を消した」
まとめ【みいちゃんと山田さん】15話を読んだ感想
第15話は、キャラクターたちの人生観の対比が鮮やかに描かれた回でした。「普通」の幸せを信じて疑わないココロちゃんと、その「普通」に息苦しさを感じる山田さん。二人の会話は、多くの人が一度は考えたことのあるであろう、人生の選択というテーマを鋭く切り取っていたように思います。
そんな中で最も心に残ったのは、山田さんがみいちゃんのためにピアスをイヤリングに作り替えるシーンです。これまでの彼女は、どこか冷めた視点で世界を眺めていましたが、この時初めて、自分の行動によって誰かを心から喜ばせるという、能動的な幸福感を得たのではないでしょうか。「私がやりたいことか……」というモノローグには、彼女が長いモラトリアムの末に見つけた、確かな手応えが感じられました。
だからこそ、最後の「この夏 みいちゃんは 私の前から姿を消した」という一文は、あまりにも残酷です。山田さんがようやく見つけた生きる意味、その光そのものであるみいちゃんが、間もなくいなくなってしまう。束の間の幸福な時間に、これ以上ないほどの不穏な影を落とす、見事な構成に鳥肌が立ちました。二人の夏に、一体何が起こってしまうのでしょうか。
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