【みいちゃんと山田さん】18話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

【みいちゃんと山田さん】第18話をネタバレありで解説する
第18話のタイトルは「母が来た!」。このエピソードでは、これまで断片的にしか語られなかった山田さんの家庭環境、特に彼女を縛り付ける母親との関係が、息の詰まるような筆致で描かれます。みいちゃんとは正反対の形で、山田さんもまた、親という存在に人生を歪められていました。
母の来襲、そして暴かれる嘘
物語は、山田さんが仕事帰りに自宅アパートへ戻るところから始まります。しかし、彼女を待っていたのは安らぎではなく、ドアの前に座り込む母親の姿でした。彼女は、連絡がつかない娘を8時間も待ち続けていたのです。
「来るなら事前に連絡してよ…」という山田さんの言葉を遮り、母親は「何回も電話したわよ!」「毎日連絡するって約束だったでしょ」と、一方的に彼女を責め立てます。
さらに、母親は山田さんのお隣さんと接触し、彼女が毎晩深夜に帰宅し、大学に行っていない様子であることまで聞き出していました。娘の嘘は、すべて暴かれていたのです。
「あなたのため」という名の支配
母親の支配は、ここから一気に加速します。娘の部屋にあがりこむと、ヒラヒラした服を「変な男やお友達と付き合ってるんでしょう」と断じ、人間関係にまで口を出し始めます。
そして、最も恐ろしいのは、彼女がすでに大学の教務課にまで足を運び、山田さんの留年の事実を突き止めていたことでした。プライバシーへの過剰な干渉も厭わない母親は、彼女が用意した就職先の資料を突きつけ、「結婚相手もママが良い人見つけてきてあげるから」と、娘の人生を完全にコントロールしようとします。
魂の叫びと、砕かれた夢
母親からの逃れられない圧力を前に、山田さんは、これまで誰にも言えなかった、心の奥底からの叫びを口にします。
「私は…漫画家になりたいの!!!!」
10年間、ずっと言えなかった夢。しかし、母親はその魂の叫びを、「何いきなり幼稚園児みたいなこと言ってるの?」と、一笑に付します。「あなたがその歳で何もできてないってことはそっちの才能はないってことなのよ!!!」と、夢を無慈悲に、そして完全に否定するのでした。
母親は、自分自身が父親に「女が大学に行っても意味ないだろって」と言われ、進学を諦めた過去を語ります。その叶えられなかった夢を、娘に託していたのです。それは愛情というより、もはや呪縛でした。打ちのめされた山田さんは、「わかった」「ちゃんと大学行くし就職もするね」と、力なく答えるしかありませんでした。
絶望的な”親子”と、遠い友の報せ
母親が帰った後、山田さんは気づきます。親が喜ぶように、望むように振る舞う。自分の人生は、ずっと「演技を続けてきたんだ…」と。その事実に、彼女は自己嫌悪で吐き気を催すのでした。
数日後。同僚から、急に店を辞めたみいちゃんが、新大久保の風俗店で働いていると知らされます。しかし、その知らせを聞いても、山田さんの心は大きく揺れません。「まあみいちゃんならやりそうですよね」と、驚くほど冷静な自分自身に、むしろ驚いているかのようでした。
まとめ【みいちゃんと山田さん】18話を読んだ感想
第18話は、みいちゃんの物語と対をなす、山田さんの地獄を描いたエピソードでした。ネグレクトに近い形で育ったみいちゃんとは真逆に、山田さんは母親からの過剰な干渉と支配の中で生きてきました。どちらも「毒親」という言葉で括られますが、その形は全く異なります。
母親の「あなたのため」という言葉は、一見すると愛情のようですが、その実態は、自分の果たせなかった夢を娘に押し付け、彼女の人生を自分の思い通りに作り変えようとする、凄まจまじいエゴの発露でした。山田さんが勇気を振り絞って打ち明けた「漫画家になりたい」という夢を、嘲笑と共に一瞬で踏みにじるシーンは、読んでいて血の気が引くほどでした。
この経験が、山田さんのどこか達観し、他者と深く関わろうとしない性格を形成したのでしょう。自分の夢や感情を押し殺し、「良き娘」を演じ続けてきた彼女にとって、感情のままに生きるみいちゃんは、眩しくもあり、理解しがたい存在だったのかもしれません。
最後の、みいちゃんの報せを聞いても「あんまり驚いてない」という山田さんの反応が、非常に印象的でした。母親によって自らの夢と心を破壊された彼女は、もはや他人の不幸に大きく心を動かすことすらできなくなってしまった。そう思うと、彼女の抱える心の傷の深さに、改めて気づかされます。
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