【わたしの好きな人は、】1話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

【わたしの好きな人は、】第1話をネタバレありで解説する
「普通に結婚して、平凡な幸せを手に入れたい」。多くの人が一度は描くそんな人生設計を、主人公・小宮山莉乃(29歳)もまた、強く願っていました 。物語は、彼女が長年待ち望んだ瞬間、恋人の裕人(ひろと)からプロポーズされる、まさに幸せの絶頂から幕を開けます 。しかし、その輝かしい未来予想図には、すでに小さな、しかし見過ごすことのできない亀裂が入り始めていました。第1話は、幸せへの期待と、婚約者への拭えない違和感との間で揺れ動く、莉乃のリアルな心境を丁寧に描いています。
理想と現実…婚約者に感じる小さな違和感
プロポーズの幸福感も束の間、莉乃は裕人との日常の中に、些細なすれ違いを感じ始めます。残業続きで疲れている二人が、久しぶりに一緒に食事をする場面。莉乃が「私のところも今忙しくってさ」と、大変さを分かち合おうと歩み寄ります 。しかし、彼から返ってきたのは、「でも俺よりいつも帰り早いじゃん?」という、思いやりのない言葉でした 。
莉乃が求めていたのは、大変さの比べっこではありません。「お互い頑張ろうねってそんな風に分かち合いたかっただけなのにな」 。彼女の心の中のつぶやきが、二人の間にある見えない壁を浮き彫りにします。彼女は諦めたように、その日も聞き役に徹することを決めるのでした 。
「私の姿が見えてないんか⁉」見過ごされたサイン
しかし、その決意はすぐに打ち砕かれます。自分のグラスが空になり、次の飲み物をメニューで探している莉乃のすぐ隣で、裕人は店員を呼び止め、自分の分の飲み物だけを注文するのです 。
「え⁉ 自分の分だけ⁉」 「さっきからメニュー見てた私の姿が見えてないんか⁉」
莉乃の心は、驚きと怒りでいっぱいになります。ですが、その感情をぐっと飲み込み、笑顔で自ら追加注文をするしかありません 。彼女の心の叫びに、裕人は全く気づいていないのです。この出来事を通して、莉乃は時折抱く不安を再確認します。「ヒロくんって私のことちゃんと見えてるのかなーって」 。
幸せへの焦りが招く悲しい決断
この人で本当にいいのだろうか。そんな迷いが頭をよぎっても、莉乃はすぐにそれを打ち消します 。なぜなら、彼女には「早く結婚がしたい」「平凡な幸せを手に入れたい」という強い焦りがあるからです 。この人を逃したら、また結婚が遠のいてしまう。そう思うと、彼のマイペースな性格も、借金やギャンブルをしないといった長所で上書きしようと自分に言い聞かせるのでした 。
その日の帰り道、裕人は莉乃に「うち泊まっていくだろ?」と誘います 。「もっと一緒にいたいと思ってくれてる…?」と莉乃が一瞬期待したのも束の間、彼はこう続けました。
「アイロンかけてないシャツがすっげたまってんだよねー」
彼は悪びれる様子もなく、これを「結婚生活の予行練習」だと言います 。莉乃は、自分がパートナーとしてではなく、まるで家政婦のように見られているのではないかと、言葉を失うのでした。
運命の出会いは飲み会で?謎のイケメン登場
後日、職場の飲み会に参加した莉乃 。恋人と過ごす時間は疲れるものだったっけ、とぼんやり考えています 。くじ引きで決まった席に座り、隣に誰が来るのかを待っていると、一人の男性が目の前に現れました 。
その瞬間、物語の視点は彼へと切り替わります。彼は莉乃を真っ直ぐに見つめ、心の中で確信していました。
「一目でわかった。あの人が噂の…」
幸せなはずの婚約者の隣で孤独を深める莉乃。この出会いは、莉乃の人生に何をもたらすのでしょうか。波乱を予感させるラストシーンで、物語は次話へと続きます。
まとめ【わたしの好きな人は、】1話を読んだ感想
第1話を読んで、幸せなプロポーズから一転、生々しいまでの関係性の不協和音を描く展開に一気に引き込まれました。特に婚約者・裕人のキャラクター造形が絶妙です。彼は暴力を振るうわけでも、暴言を吐くわけでもありません。しかし、その「悪気のない自己中心性」が、じわじわと莉乃の心を蝕んでいく様子は、現実にもありそうで非常に恐ろしく感じました。自分の飲み物だけを頼むシーンや、アイロンがけを「予行練習」と言ってのける場面は、小さな出来事でありながら、相手を一人の人間として尊重しているかどうかが透けて見える、秀逸な描写だと思います。
一方で、主人公・莉乃の「幸せへの焦り」にも強く共感します。「この人を逃したら次はないかもしれない」という不安から、明らかな問題点に目をつむってしまう心理は、年齢や周囲からのプレッシャーを感じている人にとって、痛いほど理解できるのではないでしょうか。
そして、ラストに現れた「噂の人」。この王道ともいえる展開が、これまでの息苦しい現実描写の後に訪れることで、カタルシスと同時に「本当にこの出会いは運命なのか?」という新たな問いを投げかけてきます。莉乃が、見せかけの幸せではなく、本当に心から満たされる関係性を見つけ出すことができるのか。彼女の選択を、固唾をのんで見守りたくなりました。
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