【タコピーの原罪】最終回「2016年のきみたちへ」あらすじから結末まで全てネタバレ解説

第15話「しずかちゃん」 これまで誰にも言えなかった心の叫びを吐き出し泣き崩れるしずかちゃんに、タコピーはただ寄り添います。そして、しずかちゃんに本当に欲しいものを手に入れて笑ってほしいと願い、タコピーは自らの存在を犠牲にして「ハッピーカメラ」を作動させ、再び過去へ介入しようとするのでした。
【タコピーの原罪】最終回「2016年のきみたちへ」をネタバレありで解説する
前話、タコピーはしずかの本当の願いを叶えるため、自らを犠牲に「ハッピーカメラ」を使い、再び過去へと介入しました。そして迎える最終話「2016年のきみたちへ」では、タコピーの最後の願いが紡いだ、新たな2016年の世界と、そこに生きるまりな、しずか、そして東の姿が描かれます。物語は静かに、しかし確かな余韻を残して幕を閉じます。
新たな2016年、タコピーのいた日常
物語は、タコピーがしずかを起こす朝の風景から始まります 。記憶を保持しているかのようなタコピーは、「あっ学校っていうのは きみが教えて くれたんだから・・・ 忘れるはず ないっピ」と、しずかと過ごした日々を覚えていることを示唆します 。
登校すると、そこにはいじめを受けているまりなの姿が。しかし以前と違うのは、しずかがどくだみを付けておらず、まりなが「今日は どくだみ つけて ないんだ」と話しかけ、タコピーが「まりなちゃん しずかちゃんと お話してるっピね!」と喜ぶ場面です 。東も現れ、兄とPS4でケンカした話をし、まりなとしずかも交えて和やかに会話が弾みます 。タコピーは、かつて一人だったしずかと 、そして同じように一人だったまりなの姿を思い返します 。
「おはなし」の大切さとタコピーの願い
時間は少し遡り、まりながタコピー(ごみくそ)と初めて出会った頃の回想が、まりな視点で描かれます。気味が悪く、何もしてくれないのにずっと話しかけてくるタコピーを、まりなは鬱陶しく感じていました 。
しかし、タコピーは「おはなしが いちばん ハッピーを うむんだっピ」「いちばん大切な やくそく」という、かつて自分が忘れてしまっていた大切なことを思い出していました 。それは、以前の世界で、まりなが母親の亡骸の前で「最後に おはなし できなくて ごめんね ママ」と泣き崩れていた姿と重なります 。
タコピーは、離れてしまった家族や、自分だけのものではない親を持つ子供たちに対し、「何にも できないけれど それでも きみが きみたちが もう一人じゃない きみが きっと大人に なれるように」と強く願います 。そして、「ありがとう バイバイ」という言葉を残し、彼の姿は消えていきます 。おそらくこれは、第15話で自己犠牲を選んだ瞬間のタコピーの心象風景なのでしょう。
タコピーのいない2016年、そして未来へ
タコピーが消えた後の「新たな2016年」。しずかは「うち今日ママ やばそーだから ケーキ 買って帰る」と言い、それに対してまりなは「まりなちゃんの ママ いっつも やばいじゃん・・・」「誰のせいだと 思ってんだよ」と憎まれ口を叩きながらも、二人の間には以前のような険悪な雰囲気はありません。東も加わり、三人はどこかぎこちないながらも、共に下校しています。しずかが持っていたアイシャドウを見て、まりなは「これ なんかに 似てない?」と問いかけます 。
そして、しずかはふと思い出すのです。「土星 ウサギの ボールペン!」と 。それは、かつてタコピーがまりなにあげようとしたひみつ道具の名前でした。まりなは「なにそれ 知るかよ」と素っ気なく返しますが、しずかは「お前が 言ったんじゃん」と笑顔を見せます 。タコピーの存在は消えたかもしれませんが、彼が残したささやかな記憶の欠片は、少女たちの心に残り、未来へと繋がっていくことを予感させます。物語は、「タコピーの原罪(完)」という言葉で静かに幕を閉じます 。
まとめ【タコピーの原罪】最終回「2016年のきみたちへ」を読んだ感想
「タコピーの原罪」最終話は、タコピーの自己犠牲によって再構築された2016年を舞台に、これまでの過酷な運命とは異なる、ささやかな希望の光が灯る未来を示唆する形で締めくくられました。タコピーの存在そのものは消えてしまったかのように見えますが、彼が最も大切にしていた「おはなしすること」の重要性が、新たな関係性の中で息づいているように感じられました。
最終話で描かれたまりな、しずか、東の日常は、以前の世界のような激しい憎しみや絶望に満ちたものではありません。もちろん、それぞれの家庭環境が根本的に解決したわけではなく、しずかの母親は依然として問題を抱えている様子ですし、まりなもまた複雑な感情を抱えているでしょう。しかし、彼女たちは互いに言葉を交わし、ぎこちないながらも「友達」としての時間を過ごしています。これは、タコピーが心から願った「きみたちが もう一人じゃない きみが きっと大人に なれるように」という願いが、形を変えて実現しつつあるのかもしれません。
特に印象的だったのは、しずかが「土星ウサギのボールペン!」という、タコピーのひみつ道具の名前を口にするシーンです。まりなはその意味を理解していませんが、しずかの記憶には、タコピーと過ごした時間の断片が確かに残っている。それは、タコピーという存在が完全に無に帰したわけではなく、彼が蒔いた「ハッピー」の種が、少女たちの心の中で小さな芽を出し始めていることの証のようにも思えました。
この物語は、終始「普通」とは何か、「幸せ」とは何かを問い続けてきました。そして、タコピーの「原罪」とは、善意からであっても他者の心を完全に理解することなく、一方的に「ハッピー」を押し付けようとしたこと、そしてその結果として悲劇を拡大させてしまったことにあるのかもしれません。しかし、最終的にタコピーがたどり着いたのは、「おはなし」という最もシンプルで、最も大切なコミュニケーションのあり方でした。
劇的な大団円や、全ての謎が完全に解き明かされるような結末ではありませんでしたが、この静かで穏やかな終わり方は、「タコピーの原罪」という作品が持つテーマ性や余韻を深く感じさせてくれるものでした。タコピーの願いが、この新たな2016年を生きるまりな、しずか、東の未来を、少しでも明るいものにしてくれることを願わずにはいられません。読後、登場人物たちのこれからの人生に思いを馳せ、静かな感動と共にある種の切なさが心に残る、忘れがたい最終回でした。
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