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【タコピーの原罪】第9話「大丈夫」あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー

第8話「しずかキングダム」 まりなちゃんの死が学校で公表され、東くんはタコピーと共に隠蔽工作の綻びに直面します。そんな中、しずかちゃんはまりなちゃんの死を気にも留めず東京行きの計画に執着し、東くんにプレッシャーをかけ続けます。兄の潤也くんや母親との関係も変化し追い詰められた東くんに対し、しずかちゃんはついに「これ持って 自首してくれない かな」と衝撃的な提案をするのでした。

【タコピーの原罪】第9話「大丈夫」をネタバレありで解説する

前話では、まりなの死を隠蔽しようとする東に対し、しずかが凶器らしきものを渡して自首を促すという衝撃的な展開で幕を閉じました。第9話「大丈夫」では、東の過去の記憶と、彼が「大丈夫」という言葉にすがるようになった背景、そしてしずかとの歪んだ共犯関係がさらに深く描かれます。

完璧を求める母と天才の兄、東の幼少期

物語は、東の幼少期の回想から始まります。テスト前にもかかわらずゲームをしている東に対し、母親は「そんなんじゃ 100点 取れないよー!」と厳しく叱責します 。母親の言葉は、常に100点を取ることが当たり前というプレッシャーを東に与えていました。実際に東は常に高得点を叩き出し、周囲からは「まじめで えらいねぇ」と評価されますが、それは同時に「天才だった」兄・潤也と比較される日々でもありました

母親は「同じように 育ててるのに なんで」「同じもの 食べさせてる のになぁ」と兄弟の差を嘆きつつも、成績優秀な東に期待を寄せます 。兄が使わなくなったメガネを母から譲り受けたことも、東にとっては複雑な出来事だったことでしょう

兄の変化と東の「長所」

ある時、兄の潤也が「グレた」ように見え、反対を押し切ってバイトを始めます 。東はこれを、自分が跡取りとして母の期待を一身に受ける「チャンスだ」と捉えます 。しかし、潤也の成績は全く落ちませんでした 。この出来事を通して、東は自分の「長所」が「まじめなだけ」であり、「要領」や「地頭のよさ」では母譲りの才能を持つ兄には敵わないことを痛感したようです

現在の苦悩と「完璧」への渇望

回想が終わり、場面は現在に戻ります。クラスでいじめの対象にされているまりな(の姿をしたタコピー)を見て、学級委員長である東は「ここは僕が クリニックの 名を落とさない ためにも」と、事を収めようとします 。しかし、彼は「母によく似た 潤也なら きっと―」「女の子一人にすら 期待して もらえない」と、兄ならば完璧にこなせるであろう状況に、自分の無力さを感じています

そこへ、しずかが「東くんしか いないの」「助けて」と東に助けを求めます 。この言葉は、東にとって自分が誰かに必要とされているという強烈な承認欲求を満たすものでした。「今度こそ 完璧に」「完璧にこなそう」「だって僕は こんなにも 久世さんには 期待されてる」「僕だけが」と、しずかの期待に応えることで自分の価値を見出そうとします 。母親が医師として多くの命を救ってきたように、自分も誰かを「助ける」存在になりたいという歪んだ願望が彼を突き動かします 。

しずかの言葉と「大丈夫」の意味

しずかは東に対し、「私にはもう 東くんしかいないの」「東くん 少年院に 入っても 私ずっと 待ってるよ」「その間に チャッピー探して おくから」と、巧みな言葉で東をさらに操ろうとします 。東は、しずかが本当に自分を頼ってくれていると信じ込み、「ほんとに 久世さんは 僕のこと 諦めないでくれ」と彼女の言葉に強く影響されます

東は繰り返し「大丈夫だよ 大丈夫 大丈夫」と自分に言い聞かせますが 、その言葉とは裏腹に彼の精神状態は極めて不安定です。そして、彼はふと「お母さんが 抱きしめて くれたのは あの日が 最後だったと 思い出した」と過去を回想します 。その「あの日」とは、兄の潤也が家を出ていく日でした。「こんな早くに どこ 行くんだよ 潤也…!」と潤也に呼びかける幼い東の姿が描かれ、物語は幕を閉じます

まとめ【タコピーの原罪】第9話「大丈夫」を読んだ感想

第9話「大丈夫」は、東が抱える心の闇の根源を幼少期の記憶と母親との関係から深く掘り下げており、読んでいて非常に胸が苦しくなる回でした。母親からの過度な期待と、天才的な兄・潤也へのコンプレックスが、東の「完璧でなければならない」「誰かに必要とされなければ価値がない」という強迫観念を形成していった過程が痛々しく描かれています。

彼が繰り返す「大丈夫」という言葉は、自分自身を必死に保とうとする悲痛な叫びのように聞こえました。しかし、その言葉とは裏腹に、彼の精神はしずかによってどんどん追い詰められ、歪められていきます。しずかの言葉巧みな操作は、承認欲求に飢えた東にとって抗いがたい魅力を持っているのでしょう。彼女の「東くんしかいないの」という言葉が、彼にとってどれほどの意味を持ったのかを考えると、その関係性の危うさにぞっとします。

母親が最後に東を抱きしめたのが、兄が家を出て行った日だったという事実は、東の心に大きな傷を残し、母親からの愛情に対する渇望を決定的なものにしたのかもしれません。優秀な兄がいなくなったことで、自分が母親の期待に応えなければならないというプレッシャーと、それでも兄のように完璧にはなれないという絶望感が、彼をさらに苦しめているように感じられます。

しずかにとって東は都合のいい駒でしかないのかもしれませんが、東にとってしずかは唯一自分を必要としてくれる存在、自分の価値を証明できる相手となってしまっているのでしょう。この歪んだ共依存関係が、二人をどのような結末に導くのか、そして東が本当に「大丈夫」になれる日は来るのか、今後の展開から目が離せません。

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ABOUT ME
コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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