【復讐の王子様】44話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

【復讐の王子様】第44話をネタバレありで解説する
前回、黒幕・鴨志田妃菜乃(かもしだ ひなの)の母・蘭子(らんこ)と、運命的な(そして計画的な)出会いを果たした、復讐の王子様・美馬響(みま ひびき)。第44話では、響が、その類稀なる美貌と演技力で、蘭子の心を完全に虜にしていく様が描かれます。最終章の、静かなる序曲が、今、奏でられ始めます。
カフェでの出会いと、蒔かれた種
物語は、妃菜乃の母・蘭子が、響の働くカフェで彼に声をかけるシーンから始まります。
「名門私立のアルバイト」
「あなた天馬学園の生徒でしょ?」。蘭子は、響が娘と同じ名門校の生徒であることを見抜いていました 。そして、「名門私立に通う生徒がアルバイトなんて珍しいわね」と、彼の家庭環境に探りを入れます 。響は、その問いに直接的な答えを避け、謙虚で、どこか影のある青年を演じます 。
気遣いと謎めいた態度
響は、「もっとお話ししたいんですがそろそろ仕事に戻らないと…」と、礼儀正しく、しかしどこか名残惜しそうにその場を去ります 。その奥ゆかしい態度と、時折見せる翳りのある表情。そして何より、その完璧なまでの美貌に、蘭子は完全に心を奪われてしまいました。「なんていい子なの!?」「美しくて頭もよくて…その上気遣いまで完璧なんて!」 。彼女は、この「逸材」を手に入れるための、ある計画を思いつくのでした。
会員制レストランでの「告白」
蘭子の計画は、迅速かつ大胆でした。
強引なお誘い
アルバイトを終えた響を、蘭子は高級車で待ち伏せしていました 。そして、「今から少し時間あるかしら?」と、有無を言わさぬ様子で、彼を食事へと誘います。連れてこられたのは、美しい夜景が一望できる、会員制の高級レストランでした 。
完璧に練られた「身の上話」
蘭子は、「大人としてあなたのような優秀な子が困っているのを見過ごすことはできないわ」と、響に悩みを打ち明けるよう、優しく促します 。その言葉に、響は、待っていましたとばかりに、完璧に用意された「悲劇」を語り始めます。「…実は学校を辞めようか悩んでいて…」 。彼は、母子家庭で経済的に苦しいこと、そして、その母親が過労で倒れてしまったこと、本当は高校を辞めたくないという本心(もちろん、全て嘘ですが)を、涙ながらに訴えるのでした 。
救いの女神、あるいは…
響の悲痛な告白は、蘭子の心を強く打ちました。
「綺麗な子」の苦労
「…こんなに綺麗な子が苦労を強いられているなんて…!」 。蘭子の目には、もはや、苦学生の姿ではなく、泥の中に咲く、美しい花が映っていました。彼女にとって、響の苦境は、自らが救い出すべき、美しい悲劇の物語に他なりませんでした。
「私があなたを助けてあげる」
そして、彼女は、響にとって、そして彼女自身にとって、運命を変える一言を口にします。「辞める必要なんかないわ」「響くん」「私があなたを助けてあげる」。響の復讐計画の、最も重要な歯車が、今、静かに噛み合った瞬間でした 。
まとめ【復讐の王子様】44話を読んだ感想
第44話は、響の、役者顔負けの演技力と、ターゲットの心理を完璧に掌握する、悪魔的なまでの計画性を見せつけられた回でした。彼が演じる「美しく、聡明で、しかし家庭の事情で苦労している薄幸の美少年」。それは、美しさを至上の価値とし、そして救済者となることに喜びを見出す、蘭子のような人間にとって、これ以上なく魅力的な「獲物」だったのでしょう。
響が語る、「母子家庭」や「過労で倒れた母」というキーワードは、彼自身の本当の境遇と重なり、その嘘に、奇妙な説得力を与えています。彼は、自らの悲劇すらも、復讐の道具として、冷静に、そして効果的に利用しているのです。その姿には、もはや哀れみはなく、復讐の修羅と化した者の、凄まじい覚悟を感じました。
そして、ついに響に「私があなたを助けてあげる」と手を差し伸べてしまった蘭子。彼女は、美しい才能を自分の手で開花させることに、至上の喜びを感じているようですが、それが、自分の娘・妃菜乃の、そして自分自身の破滅への第一歩であることには、まだ気づいていません。
母と娘、そして、その間に存在する「美馬響」という、完璧な異物。この歪な三角関係が、どのような悲劇を生み出すのか。物語は、最も静かで、最も残酷な最終章へと、歩みを進めています。
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