【枯れた花に涙を】26話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

【枯れた花に涙を】第26話をネタバレありで解説する
「捕まえた」―蓮(れん)の強引な一言で、彼のバイクの後ろに乗せられてしまった樹里。第25話のラストから続くこの展開は、二人の関係を新たなステージへと進ませます。第26話では、蓮が樹里を連れてきた特別な場所で、彼女の心が大きく解放されていく様子と、その裏で深まる謎が描かれます。
「一緒に来たかった場所」―蓮が樹里を連れてきた夜景
蓮が樹里を連れてきたのは、彼女の住む街を一望できる、美しい夜景が広がる高台でした。そこは、蓮が考え事があるときによく一人で訪れるという、彼にとっての特別な場所でした 。
疲れきったあなたに、この景色を
蓮は、樹里がこの美しい夜景に気づいていないことを知っていました。「忙しいスケジュールをこなして家に帰る疲れきったあなたは、ただの一度もすぐ後ろで輝く光を眺めたことなんてなかったということを」 。彼の言葉は、常に時間に追われ、心の余裕を失っていた樹里の日常を的確に言い当てています。
「何か言いたいことはありますか?」
美しい景色を前に、樹里は「私の住んでる街がこんなに美しかったなんて」と、今まで気づかなかった故郷の魅力に心を奪われます 。そんな彼女に、蓮は「何か言いたいことはありますか?」と優しく問いかけ、この場所なら何を叫んでも迷惑にならないと、彼女の心の解放を促すのでした 。
「鉄平のバカ野郎!」―樹里、魂の叫び
蓮の言葉に背中を押され、樹里はこれまで胸の内に溜め込んできた想いを、夜空に向かって解き放ちます。
絶望と未練の絶叫
「鉄平のバカ野郎おおお…!!」 。樹里の口から飛び出したのは、元夫への痛切な叫びでした。「救えないクズ男…!!!」と罵りながらも、「元気でね…」「今さら後悔しても遅いんだからね…戻ってきても絶対に許してあげないから…!!!!」と、憎しみの中に未練が滲む、複雑な感情を吐露します 。
「ありがとう、蓮くん」
全てを叫び終え、心が少し軽くなった樹里は、蓮に向かって「ありがとう、蓮くん」と、初めて心の底からの感謝を伝えるのでした 。この瞬間、蓮の存在は、彼女の中でより一層大きなものになっていきます。
「捕まえた」―強引な優しさと、新たな関係の始まり
樹里からの感謝の言葉を受け、蓮の心には彼女への歪んだ愛情が渦巻きます。そして、二人の関係は新たな局面を迎えます。
歪んだ愛情と「不健全なこと」
樹里の「ありがとう」という言葉を聞いた蓮は、「そうやってあなたはいつも、自分でも気がつかないうちに俺をどんどん酷い男にしていく…」と、彼女への独占欲を募らせます 。彼は樹里を強く抱きしめると、「好きな人にそんなこと言われたらどんなことを考えるかわかりますか?」「不健全なこと」と、意味深な言葉を囁くのです 。
強引なデートの結末
蓮の言葉に顔を赤らめ、「寒いからよ」とごまかす樹里。そんな彼女の姿を微笑ましく思った蓮は、「もう行きましょう、家まで送ります」と、彼女の肩を抱いてその場を後にします 。そして、再び彼女をバイクの後ろに乗せると、しっかりと掴まるよう促すのでした。彼の背中にしがみつく樹里は、これまで感じたことのない温かさと安らぎに包まれます。
監視者の苦悩:会長の依頼と蓮の不気味さ
場面は移り変わって、蓮の父である一ノ瀬会長に雇われた黒服の男・譲二の葛藤が描かれます。彼は会長から「私の息子はときどきわけのわからない行動をする」ため、その行動を報告するようにと依頼されていました 。
当初、譲二はこの依頼を軽く考えていたようです。天下の会長といえども、結局は息子に振り回されるただの父親なのだと感じ、少しおかしくさえ思っていました 。仕事は辞めればそれまでだと割り切り、裕福な家の息子の「お遊び」を適当に監視して大金を得るつもりだったのです 。
しかし、実際に蓮を監視するうちに、その考えは大きく変わっていきます。蓮の様子は、単なる「わけのわからない行動」という言葉では片付けられないものでした。「むしろ暴れん坊の悪ガキだったらどんなによかったか」と思うほど、蓮の雰囲気は異様だったのです 。男は蓮に対して「何かおかしい」、「怪しいほど病的で」 と、得体の知れない不穏な何かを感じ取ります。
このため譲二は、もし蓮の奇怪な行動を正直に会長へ報告すれば、自分の命が危うくなるかもしれないという恐怖に駆られます 。結果として、会長と蓮という二人の金持ちの間で板挟みとなり、「誰の言うことを聞ききゃいいんだよ」と深刻なジレンマに陥っています 。譲二は、これからどう立ち回るべきか、慎重に考えなければならない状況に追い込まれました 。
樹里の純粋な想い:蓮へのプレゼント
場面は変わり、樹里が一人、部屋で過ごす様子が描かれます。彼女は蓮を想いながら、一体のテディベアに赤いハートを縫い付けていました 。修理を終えると「できたわ」と満足げに微笑みます 。
彼女は完成したテディベアを「思いのほかかわいい」と感じており、蓮に渡すことを心待ちにしています 。ただ、仕事に持っていくと汚れてしまうかもしれないと考え、次の日にバイトから帰宅した後に渡そうと決めました 。その健気な姿からは、「蓮くん、喜んでくれるわよね…?」という、蓮への純粋でひたむきな愛情が伝わってきます 。
鉄平の焦燥と苛立ち:会いに来ない樹里への想い
一方で、家を出て亜里沙の元に身を寄せている鉄平は、樹里からの連絡が一切ないことに苛立ちを感じています。家を出てから何日も経っているのに、なぜ連絡してこないのかと疑問に思っているのでした 。
鉄平は、たとえ自分の行動に腹を立てていたとしても、樹里ならすぐに会いに来ると信じていたようです 。なぜなら、樹里はいつもぶっきらぼうなフリをしながらも、本当は自分のことを気にかけてくれる存在だからです 。どこで何をしているか、食事はとっているか、体を壊していないかと、常に見守ってくれていたのが樹里でした 。
亜里沙からは「必要なものは全部新しく買って、死んでも家には帰るな」と釘を刺されています 。しかし、樹里のことが気になって仕方がない鉄平は、荷物を取りに行くという口実を作り、一度家に戻ることを決意します 。彼の行動からは、樹里への強い執着と依存が見て取れます。
すれ違う連絡と不穏な予感
鉄平が帰宅を決意した頃、樹里はバイト先で蓮からのメッセージを受けていました。内容は「すみません、今日は行けないと思います」というものでした 。毎日会うことに慣れてしまっていた樹里は、当然のように今日も会えると思っていたため、少し戸惑いを見せます 。
しかし彼女はすぐに、「あの子にもあの子の生活があるんだし、会えない日だってあるわよね」と自分に言い聞かせ、彼の状況を理解しようと努めます 。そして、心を込めて作ったクマのぬいぐるみは、また今度渡そうと気持ちを切り替えました 。
ただ、蓮の方から「来られない」と連絡をもらったのは、これが初めてのことでした 。その事実に、樹里の心に小さな不安が芽生えます。「まさか… 何かあったんじゃ…」という不穏な予感が、彼女の胸をよぎるのでした 。
物語の最後は、鉄平が自宅と思われる建物の前に一人佇むシーンで幕を閉じます 。家に戻った鉄平を何が待ち受けているのか、そして樹里の不安は的中してしまうのか、次回の展開から目が離せません。
まとめ【枯れた花に涙を】26話を読んだ感想
第26話は、鉄平という過去の呪縛から解き放たれ、樹里が初めて自分の感情と向き合う、非常にカタルシスのある回でした。夜景に向かって13年分の想いを絶叫するシーンは圧巻で、彼女の心の重荷が少しでも軽くなったかと思うと、読んでいるこちらも安堵しました。憎しみだけでなく、最後に蓮への感謝を口にした彼女の人間としての深みと強さに、心を打たれました。
また、蓮の行動も印象的です。彼はただ優しいだけでなく、樹里が自らの力で立ち直るための「きっかけ」を巧みに作り出しています。彼の行動は、樹里の心を解放するための、計算された優しさなのかもしれません。しかし、「ありがとう」という彼女の予想外の言葉に、彼の心もまた揺れ動いているように見え、二人の関係がより人間味を帯びてきたと感じます。
一方で、譲二の視点から語られる蓮の異様さや、鉄平の未練がましい執着など、新たな不穏な要素も描かれ、物語は一筋縄ではいかないことを予感させます。樹里がようやく見つけた小さな安らぎが、壊されることのないよう願うばかりです。
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