【枯れた花に涙を】29話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
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【枯れた花に涙を】第29話をネタバレありで解説する

第28話のラストで、元夫・鉄平との「キラキラと輝く青春時代」を思い出した樹里。第29話は、その言葉の通り、二人の出会いから恋の始まりまでを鮮やかに描く、甘くも切ない追憶の物語です。現在、樹里を苦しめる存在となった鉄平が、かつてはどれほど眩しい少年だったのか。そして、二人の幸せな日々に、いかにして不穏な影が差し始めたのかが明らかになります。

運命の始まり―町の人気者と地味な私

物語は、まだ二人が言葉を交わしたこともなかった高校時代に遡ります。ありふれた通学路の階段が、二人にとっては運命の舞台となりました。

突然の出会いと不思議なプレゼント

ある日の放課後、一人の少年が樹里に声をかけます 。彼こそが、若き日の金子鉄平でした 。彼は「俺のこと知らねぇの?」と悪戯っぽく笑いながら、なぜか樹里の名前を知っていました 。戸惑う樹里に、彼は持っていたパンを「特別にこれやるよ」と押し付け、颯爽と去っていきます

この強引で少し不思議な出会いが、すべての始まりでした。しかし、樹里のモノローグが示す通り、彼女は彼のことを一方的に知っていたのです。「知らないほうがおかしいぐらいの人だったから」と 。

光と影を併せ持つ少年

若き日の鉄平は、町で誰もが知る有名人でした。早くに両親と祖母を亡くし、丘の上の青い門の家で一人暮らしをしていた少年 。夜になれば仲間と集まってタバコを吸うような、いわゆる「不良」としての一面を持っていました

しかし、それだけではありません。彼は毎日のように地元のおばあさんのリアカーを代わりに引いてあげるような、心優しい青年でもあったのです 。不良っぽいのに、人懐っこくて優しい。そんな光と影を併せ持つ彼は、町の大人たちから絶大な人気を博していました

強引な優しさに、心惹かれて

最初の出会いから、鉄平の猛烈なアプローチが始まります。彼の強引さは、やがて樹里の心を少しずつ溶かしていくことになります。

「1ヵ月だけ待ってろ」

鉄平は毎朝のように樹里に声をかけ、そのたびにバナナオレやカップラーメンなどをくれました 。そんな日々が1ヶ月ほど続いたある日、彼は「お前が聞いてくるまで待つつもりだったんだけど」と、しびれを切らしたように連絡先を教えてほしいと迫ります

しかし、樹里は携帯電話を持っていませんでした 。普通なら諦めてしまいそうな状況ですが、鉄平は違いました。彼は「よしわかった」と笑い、こう宣言するのです。

1ヵ月だけ待ってろ。俺がなんとかしてやるから

この常識外れな優しさと行動力に、樹里が心を揺さぶられないはずはありませんでした。

「俺と連絡するため」だけの携帯電話

そして約束の1ヶ月後、鉄平は本当に携帯電話をアルバイト代で買い、樹里にプレゼントします 。なぜこんなことをするのかと問う樹里に、彼は当たり前のようにこう答えました。

どうしてって…俺と連絡するために決まってんだろ

彼の行動原理は、常にシンプルで真っ直ぐです。彼は樹里の隣に座り、自分の電話番号を登録させます。樹里がためらいながらも「鉄平🖤」と登録する場面は、彼女の初々しい恋心の表れであり、二人の関係が大きく前進した瞬間でした

幸せな日々と、忍び寄る不穏な影

携帯電話を手に入れた二人の距離は、急速に縮まっていきます。他愛もないメッセージのやり取り、学校での友人たちとの交流。幸せな時間は、永遠に続くかのように思えました。

「俺の彼女だ」―幸せの絶頂

鉄平は学校の友人たちに、まだ付き合ってもいない樹里のことを「もうすぐ彼女になる予定だ」と公言してはばからず、他の女子からの好意も全く意に介しません 。そしてついに、友人たちの前で樹里を指し、「挨拶しろよ 俺の彼女だ」と、満面の笑みで紹介します 。友人たちの祝福の歓声と、恥じらう樹里。それは、まさに青春の輝きの絶頂でした。

「もったいない」―彼に向けられた同情

しかし、この輝かしい日々の裏には、一つの影が存在していました。樹里は、近所の主婦たちが鉄平について「もったいない」と噂しているのを耳にします 。「あんなにいい子なのに、両親が亡くなって…」「せめてお祖母さんだけでも長生きしていたら…」

このとき樹里は気づいたのです。町の人々が鉄平に向ける優しさには、彼の境遇に対する「同情」が色濃く混じっていたことに 。彼はただの人気者ではなく、誰もが認める非の打ちどころのない優等生であり、だからこそ、その孤独を誰もが憐れんでいたのでした 。

新たな火種

幸せの絶頂にあった二人に、突如として不穏な空気が流れます。樹里が一人でいると、見知らぬ女子生徒たちに取り囲まれ、「あなたが児玉樹里さん?」と、敵意のこもった視線で問い詰められました 。時を同じくして、鉄平も友人から「(樹里は)聖学園の奴らと仲いいの?」と、不可解な情報を耳にします 。二人の知らないところで、何かが動き始めていました。

まとめ【枯れた花に涙を】29話を読んだ感想

今回の第29話は、あまりにも眩しくて、そして同じくらい胸が痛くなる回でした。今の歪んでしまった鉄平を知っているからこそ、若き日の彼の、不器用で、強引で、それでいて真っ直ぐな優しさが心に沁みます。「俺がなんとかしてやるから」と、携帯電話をプレゼントするなんて、少女漫画の王道ど真ん中をいくロマンチックな展開に、思わず頬が緩んでしまいました。

しかし、物語はただ甘いだけではありません。彼に向けられていた「同情」という視点には、ハッとさせられました。常に憐れみの目で見られることが、彼のプライドを少しずつ歪めていったのでしょうか。彼の後の異常なまでの支配欲や嫉妬深さの根源が、この「可哀想な優等生」というレッテルにあったのではないかと考えると、物語の深みに震えます。

そして、ラストの急展開。幸せの絶頂から突き落とすかのような、不穏な女子生徒たちの登場。幸せな思い出語りでは終わらせない、この作品の容赦のなさを改めて感じました。この小さな綻びが、どのようにして二人の関係を破壊していったのか。輝かしい過去があったからこそ、未来に待つ破滅の足音がより一層恐ろしく聞こえる、見事な構成だったと思います。

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ABOUT ME
コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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