【枯れた花に涙を】30話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

幸せの絶頂にあった樹里に、突如として悪意が襲いかかります。その中心にいたのは、鉄平に好意を寄せていた沙由美(さゆみ)先輩でした。
女子トイレの惨劇と白馬の騎士
沙由美とその仲間たちは、学校の女子トイレで樹里を捕まえます。彼女たちは「あんた鉄平とどんな関係なの?」と樹里を問い詰め、嫉妬に駆られた一方的な暴力を振るおうとします。 「服脱ぎな」と迫る沙由美たちの手から、樹里はなす術もなく逃れられません。
その絶体絶命の瞬間、扉を蹴破って現れたのは鉄平でした。 彼は激しい怒りを露わにし、震える樹里を自分の後ろに隠します。沙由美がカッターナイフを取り出し「ぶっ殺してやる」と脅しても、鉄平は一切ひるみません。 彼は冷たい瞳で沙由美の手首を掴み、こう言い放つのです。
「やってみろよ クソ女」
その姿は、まさしく樹里を守る白馬の騎士そのものでした。彼の内なる激しさと、樹里への深い愛情が初めて明確な形となった瞬間です。
夕暮れの誓い―「どうして私に優しくするの?」
鉄平に助け出されたものの、恐怖で心が揺れる樹里。彼女は、仕返しを恐れて「あの先輩たちに何かするかもしれない」と鉄平を心配します。 彼は「喧嘩なら絶対負けねぇからさ」と強がりますが、後日、負けたことを樹里に指摘されると、ばつが悪そうに「一気に何人も来られたらさすがにな…」と本音を漏らします。
この弱さを見せたことで、彼の優しさは一層深みを増します。涙を流す樹里を見て、鉄平は「悪かったって」「次からは絶対に殴られないからさ」と必死に慰めます。 そして、驚くべき言葉を口にするのです。
「それとも俺のこと殴ってみるか?」「泣くぐらいなら俺を殴れって」。
自分を傷つけてもいいから、君には笑っていてほしい。そんな彼の不器用で真っ直ぐな愛情を前に、樹里は心の底からの疑問をぶつけます。
「…どうして私に優しくするの?」。
燃え尽きてもいいと思った恋
樹里の問いに、鉄平は答えられません。ただ耳を真っ赤にして、照れ隠しにそっぽを向くだけでした。 しかし、その姿こそが何よりの答えでした。樹里のモノローグが、その時の感情を物語っています。
「体中傷だらけのその少年を…愛さずにはいられなかった」
この事件を経て、樹里の恋心は決定的なものになりました。彼女は、この「真っ青な青春に燃え尽きて死んでしまってもいいと思った」とさえ語ります。 これ以上ないほどの純粋で激しい恋。しかし、この輝かしい思い出語りはここで終わり、物語は非情な現在へと引き戻されるのです。
現在―酔いと本音が交差する雪の夜
長い回想から覚めた樹里は、蓮と二人、屋台でお酒を飲んでいます。過去の記憶に浸る彼女に、蓮は静かに、しかし大胆に言葉を投げかけます。
「嫉妬しちゃいますよ」―蓮の危険な誘い
「目の前にいる俺を差し置いて他の男のことを考えながらお酒を飲んでるなんて」
蓮はそう言って、冗談めかしながらも嫉妬心を覗かせます。 彼の大人びた表情と言葉に、樹里は「いやらしいわ」「その顔でそんなこと言ったら女の子はみんなメロメロでしょ?」と、酔った勢いもあってか、からかうように返します。
この軽口の応酬の中で、蓮は核心に触れる提案をします。鉄平が8歳年下の女性と浮気したことに触れ、「俺はそれより若いですから」と前置きした上で、こう囁くのです。
「今からでも復讐したいなら俺のことを利用してください」
これは、彼の本心からの手助けの申し出なのか、それとも別の目的を隠した罠なのでしょうか。
酔った勢いか、それとも…
樹里は「あなたは本当にいい子だから…」と、蓮の危険な提案を退けます。 しかし、屋台からの帰り道、降りしきる雪の中で、二人の関係は予期せぬ形で一線を越えることになります。
「帰りたくない…」とつぶやく蓮。 そして、樹里のすぐそばで「一緒にいましょうか?」と問いかけます。
これまでの樹里なら、きっと戸惑い、流されるだけだったでしょう。しかし、今の彼女は違いました。「うるさいわね 大人ぶらないの」と蓮をたしなめると、彼女は自らの手で彼を引き寄せ、その唇に静かに口づけをするのです。
まとめ【枯れた花に涙を】30話を読んだ感想
まさに息を呑むような展開の連続でした。前半の回想シーンは、胸が張り裂けそうです。鉄平が樹里を守るために見せた、あの冷徹なまでの怒りと覚悟。そして、夕暮れの屋上での不器用な慰め。今の彼がどれだけ憎むべき存在に変わってしまったとしても、この時の彼を「愛さずにはいられなかった」という樹里の気持ちが、痛いほどに伝わってきました。
そして、後半の現在パート。蓮の「俺を利用してください」というセリフには、ゾクゾクしました。彼の真意は未だ謎に包まれていますが、樹里を巡る物語の重要なキーパーソンであることは間違いありません。
何よりも衝撃的だったのは、ラストのキスシーンです。これまで受け身で、傷つけられるばかりだった樹里が、初めて自らの意志で行動を起こしたように見えました。それはアルコールの力だったのかもしれません。あるいは、蓮の言葉に心が動かされたのかもしれません。いずれにせよ、このキスが二人の関係、そして物語全体を大きく動かすことは確実です。過去の美しい思い出から一転、現在時制での危険な関係が始まった瞬間。次週、このキスに応える蓮の表情がどうなるのか、想像するだけで眠れなくなりそうです。
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