【枯れた花に涙を】32話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
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【枯れた花に涙を】第32話をネタバレありで解説する

雪の夜の衝動的なキスから一夜。第32話は、高級ホテルのベッドで目覚める樹里の混乱と、その裏で冷徹な計算を巡らせる蓮の姿を対照的に描きます。過去の思い出を振り切り、新たな一歩を踏み出そうとする樹里の決意と、恋をゲームのように楽しむ蓮の思惑が交差する、物語の新たな序章となる回です。

朝、ホテルのベッドで―夢と現実の狭間

心地よい目覚めとは裏腹に、樹里は見知らぬ天井を見上げていました 。昨夜の出来事が、夢か現実かも曖昧なまま、彼女の心は大きく揺れ動きます。

「…きっと夢よね」―混乱する樹里の記憶

樹里は、お酒を飲んだ後の記憶を必死にたぐり寄せます 。断片的に蘇るのは、蓮との激しいキスの記憶。あまりにも現実離れした出来事に、「きっと夢よね」と自分に言い聞かせようとしますが、そこには紛れもない現実の痕跡が残されていました 。

残された優しさと、一通の手紙

ベッドの傍らには、彼女の靴がきちんと揃えられ、脱いだ上着も丁寧に畳まれていました 。それは、昨夜の蓮の優しい手つきをありありと思い出させるものでした 。現実を突きつけられた樹里は、年下の男の子に自分からキスをしたという事実に、恥ずかしさで身を丸めます。

彼女は「なんてことない」「あの子だって初めてのはずないし」と必死に平静を装いますが、そのキスが「ものすごく…上手だった」と感じてしまったことも否定できません 。自分を「ダメな大人」だと責め、謝罪しようと立ち上がった彼女の目に、蓮が残した一通の手紙が飛び込んできます 。

貸し借りのゲーム―蓮の冷徹な計算

樹里が一人で混乱している頃、蓮は余裕の表情で次の一手を考えていました。彼にとって、昨夜の出来事は恋の始まりであると同時に、ある「ゲーム」のスタートでもあったのです。

「彼女ができたら使おうと思ってた」

蓮が残した手紙には、酔いつぶれた彼女をホテルに運んだことへの謝罪が、丁寧な言葉で綴られていました 。そして追伸には、こう書かれていたのです。

「PS.ホテル代のことは心配しないでください。

彼女ができたら使おうと思ってたホテルの宿泊券があったので

これは、相手に罪悪感を抱かせないための、完璧で紳士的な配慮。しかし、その裏には蓮のしたたかな計算が隠されていました。

「貸しが増えたからさ」―恋は駆け引き

部下との会話で、蓮はその真意を明かします。彼は昨夜の件で、自分から樹里に連絡するつもりはないと言います 。その理由は、「

貸しが増えたからさ」 。

先にキスをしたのは樹里。そして、親切に介抱したのは蓮。この状況で、連絡をするべきなのは樹里の方だと彼は考えているのです。彼は樹里に「貸し」を作り、彼女が自ら動かざるを得ない状況へと巧みに誘導していました。優しさの裏に隠された、これが蓮の恋のゲームの進め方なのでした。

過去の追憶―鉄平の失われた純情

場面は変わり、現在の鉄平が亜里沙とベッドで過ごす様子が描かれます。亜里沙に「初体験でさえも余裕そうね?」とからかわれた鉄平は、「生まれたときからベテランだとでも思ってんのか?」と一笑に付します 。

しかし、彼の脳裏には、樹里との本当の初体験の記憶が蘇っていました。痛みと気まずさで、樹里に「こっち見んな…!!」と叫んでしまった、若く不器用な自分 。今の彼からは想像もつかない、純情な過去の姿でした。

過去との決別、そして未来へ

ホテルから自宅に戻った樹里は、ある決意を固めます。それは、13年間蝕まれ続けた過去との完全な決別でした。

「もう私のものじゃない」―思い出の断捨離

樹里は、鉄平との思い出が詰まった品々を、一つ一つ片付け始めます 。なかなか捨てる決心がつかないものもありましたが、彼女は「もう泣かない」と心に誓い、過去を整理していくのです 。

新しい下着と、新たな一歩

家の中を見渡し、この家に「私のもの」が本当に少ししかなかったことに気づいた樹里 。彼女は古くなった服や下着を捨て、

空っぽの心を埋めるように、新しい下着を買おうと考えます 。これは、彼女が過去の自分を脱ぎ捨て、新しい自分として生まれ変わろうとしている象徴的な行動です。そして、綺麗に片付いた部屋で、彼女は思います。「…蓮くんに連絡して一緒にご飯でも食べようかな…」と 。蓮の仕掛けたゲームの駒が、今、彼女の手によって動かされようとしていました。

まとめ【枯れた花に涙を】32話を読んだ感想

前回の衝撃的なキスから一夜明け、第32話は登場人物たちの内面が深く掘り下げられる、静かながらも非常に重要な回でした。ホテルのベッドで目覚め、昨夜の出来事を思い出しては羞恥心に悶える樹里の姿は、とても人間味にあふれていて共感してしまいます。「上手だった」なんて思ってしまうあたりも、生々しくて最高でした。

対する蓮の「貸しが増えた」という言葉には、彼のキャラクターの真髄を見た気がします。ただ優しいだけの青年ではない、相手の心理を読んでゲームのように事を進める冷徹な戦略家。しかし、そんな彼が前話で見せた「我慢しなくちゃ」という本音を知っているだけに、この計算高ささえもが彼の魅力に思えてなりません。

そして、今回最も印象的だったのは、樹里の「断捨離」です。鉄平との過去を物理的に捨てていく行為は、彼女が精神的に自立し、新しい一歩を踏み出すための神聖な儀式のようでした。特に、古い下着を捨てて新しいものを買おうと決意するシーンは、彼女が女性としての自分を取り戻そうとしているようで、胸が熱くなりました。

蓮が仕掛けた「貸し借りのゲーム」。その誘いに、樹里は自らの意思で乗ろうとしています。もはや彼女は、ただ守られるだけの存在ではありません。これから始まるであろう二人の駆け引きが、どんな展開を迎えるのか、楽しみで仕方がありません。

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ABOUT ME
コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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