【枯れた花に涙を】38話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

【枯れた花に涙を】第38話をネタバレありで解説する
第37話、1000万円という樹里の「テスト」に対し、蓮は「臓器を売った」という狂気の答えを提示しました。泣き崩れる樹里と、それを受け止める蓮。二人の関係が後戻りできない場所へたどり着いたその夜、物語はついに核心へと触れていきます。第38話は、すべての嘘と建前が剥がれ落ち、むき出しになった本音と本音がぶつかり合う、息を呑むほどに濃密な回です。
決壊する理性の堤防
樹里の涙は、彼女を縛り付けていた最後の理性を洗い流しました。彼女は、目の前の青年が自分のために払った(と思った)犠牲の重さに打ちのめされ、そして抗いがたい欲求に身を任せていきます。
「やめるなら今のうちよ」―主導権の逆転
蓮の腕の中で、樹里は自ら唇を重ねます。それは謝罪でも同情でもない、紛れもない欲望の表れでした。一度は蓮が「今ならまたやめられます」と最後の逃げ道を用意しますが、樹里は自ら彼の体勢を覆し、こう言い放ちます。
「そっちこそやめるなら今のうちよ」
これは、彼女が初めて自分の欲望を肯定し、この関係の主導権を握ろうとした瞬間でした。もう後戻りはしないという、樹里の強い覚悟が感じられます。
「嫌です」―予期せぬ蓮の拒絶
二人は、これまで抑えつけていた感情を爆発させるかのように、激しく互いを求め合います。樹里は、義務的でしかなく、前戯もなかった鉄平との行為を思い出し、蓮の丁寧で優しい愛撫に、これまで感じたことのない感覚を覚えていました。理性が溶け、本能が突き動かすままに、彼女は「早く…挿れてって…!」と彼を求めます。
しかし、その瞬間、蓮の動きが止まります。そして、彼は樹里の耳元で、はっきりとこう告げたのです。
「…嫌です」
嘘と真実―明かされた傷跡の理由
絶頂の直前での、あまりにも冷たい拒絶。しかし、それは蓮の意地悪などではありませんでした。彼が体を起こした時、その表情は苦痛に歪んでいたのです。
腹部に残る、生々しい傷
蓮の腹部には、第37話で見せた生々しい手術の跡がありました。それは臓器売買のための新しい傷ではなく、彼の過去に刻まれた古い傷跡でした。激しく求め合ったことで、その古傷が開き、彼に激痛を与えていたのです。
「あなたに嫌われたくなかったから」
傷の痛みに耐える蓮の姿を見て、樹里は我に返ります。自分の欲望が彼を苦しめてしまったことに気づき、後悔と心配の涙を流しました。そんな彼女に、蓮はついに、すべての嘘の理由を告白します。
臓器を売ったなどという大嘘をついたのは、彼が恋愛初心者で、どうすれば彼女を繋ぎ止められるかわからなかったから。そして何よりも、「年下の男」という理由で彼女が自分を拒絶することを恐れていたからでした。
「あなたに嫌われたくなかったから」
彼の口から語られたのは、あまりにも純粋で、痛々しいほどの本心でした。
嘘を越えた先にあるもの
すべての嘘が暴かれ、残ったのは傷ついた二人のむき出しの心だけでした。しかし、この瞬間こそが、二人の関係が本当に始まる瞬間でもありました。
許しと、新たな誓い
蓮の悲痛な告白を聞き、樹里の心にあった罪悪感や迷いは、彼への深い愛情と憐れみへと変わっていきます。「どうしてこんなことするのよ…!」と涙ながらに彼を抱きしめる樹里。彼女の涙は、彼の嘘を許し、彼の心の傷ごとすべてを受け入れるという決意の表れでした。
言葉はいらない
ひとしきり泣いた後、穏やかな時間が二人を包みます。蓮は、傷ついた獣のように、ただ静かに樹里の腕の中にいました。もうそこに、計算高く立ち回る青年の姿はありません。樹里は、そんな彼をただ優しく抱きしめ、二人の心は言葉なくして通じ合ったのです。
まとめ【枯れた花に涙を】38話を読んだ感想
感情のジェットコースターとは、まさにこの38話のことでしょう。前半の燃え上がるような情事から、蓮の突然の拒絶、そして衝撃の真実の告白まで、一瞬たりとも目が離せませんでした。
樹里が初めて自らの欲望を解き放ち、主導権を握るシーンは、彼女の成長を感じさせるカタルシスがありました。しかし、その欲望の果てに待っていたのが、蓮の身体的な苦痛と、精神的な脆さの露呈だったという展開には、胸を締め付けられます。
そして、蓮の「あなたに嫌われたくなかったから」という告白。これまでの彼のミステリアスで計算高いイメージをすべて覆す、最高のどんでん返しでした。彼の全ての行動が、初恋に戸惑う青年の、不器用で必死な愛情表現だったとわかった瞬間、彼というキャラクターがたまらなく愛おしくなりました。
嘘も、見栄も、駆け引きもなくなった今、二人はようやく本当の意味で向き合うことができたのではないでしょうか。傷だらけの二人が、互いの傷を舐めあうようにして寄り添うラストシーンは、あまりにも美しく、そして切実でした。ここから始まる二人の関係が、どうか幸せなものであってほしいと、心から願わずにはいられません。
◁前の記事はこちらから

▷次の記事はこちらから
