【枯れた花に涙を】40話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

【枯れた花に涙を】第40話をネタバレありで解説する
第39話で、ついに心と体を結びつけた樹里と蓮。第40話は、その翌朝の、甘く穏やかで、それでいて戸惑いに満ちた時間を丁寧に描きます。過去の傷を乗り越え、新しい関係を築き始めた二人。情事の後の気だるい空気の中で、樹里は蓮という存在が、いかに自分の日常を根底から揺るがすものであるかを、改めて実感するのでした。
甘い目覚めと、消えない戸惑い
温かい腕の中で目覚めた樹里。そこは、昨夜までの孤独な部屋ではなく、蓮という確かな温もりに満たされた空間でした。しかし、その心地よさとは裏腹に、彼女の心は複雑な想いで揺れ動きます。
「どうせいつもと同じだと思ってたのに」
樹里は、昨夜の出来事を「お酒に酔って衝動的にそうなった」と、よくある大人の過ちとして処理しようとします 。しかし、昨夜の二人は素面であり、衝動だけでは説明できない感情があったことを、彼女自身が一番よくわかっていました 。
彼の「経験」を巡る、ひとりよがりな分析
彼女の心を占めていたのは、蓮の「経験」に対する考察でした。最初はどこか不器用だった彼の手つきが、あっという間に慣れたものに変わっていったことを思い出し、「やっぱり経験は少なくないみたいだわ…」と、少しだけ寂しそうに結論付けます 。読者だけが知る「恋愛初心者」の彼とは裏腹に、樹里は自分に自信が持てず、彼にとって自分は特別な存在ではないと思い込もうとするのでした。
新しい日常の始まり
仕事に行こうとベッドを抜け出そうとする樹里。しかし、そんな彼女を、蓮は子供のように引き止めます。ここから、これまでとは全く違う、二人の新しい日常が始まりました。
「俺…まだ具合悪いんですけど…」
蓮は、まだ本調子ではない腹部の傷を口実に、「俺…まだ具合悪いんですけど…」と甘えた声で樹里に訴えかけます 。その子供っぽい言い訳に、樹里は呆れながらも、結局バイトをサボってしまうことを決意するのでした 。彼の前では、彼女の固い決意もいとも簡単に揺らいでしまいます。
キッチンに立つ、大きな背中
樹里が朝ごはんを作ろうとすると、今度は蓮が「得意なんです」と言って、キッチンに立つのを譲りません 。そして、文句を言う彼女を軽々と抱き上げ、ベッドに戻してしまうのです 。その光景は、かつて料理に失敗して火事を起こしかけた、元夫・鉄平との思い出とは全く異なるものでした。
あなたに、どうかしてる
ベッドから、キッチンに立つ蓮の広い背中を眺める樹里。彼の存在が、自分の小さな世界を、良い意味で壊していくのをただ感じることしかできませんでした。
小さな家と、大きすぎる存在
蓮がキッチンにいるだけで、これまで慣れ親しんだはずの家が、やけに狭く感じられます 。彼の鍛え上げられた筋肉を見ながら、「何を食べたらあんなに大きくなるのかしら」と、素朴な疑問を抱く樹里 。その思考は、彼女自身が蓮という人間に、そして「男」に強く惹かれていることを示していました。
「私までおかしくなっちゃったみたい」
振り返った蓮と視線が合い、樹里は心臓が跳ねるのを感じます。衝動的にお金を使い、ついには仕事までサボってしまった。彼に出会ってから、自分らしくないことばかり。彼女は、幸せな溜息とともにつぶやくのでした。
「本当に…どうかしてるわ 私…」
まとめ【枯れた花に涙を】40話を読んだ感想
前話までの、息詰まるようなシリアスでドラマチックな展開から一転、第40話は穏やかで甘い空気に満ちた、極上の「朝チュン」回でした。読んでいるこちらの頬まで緩んでしまうような、二人の初々しいやり取りに、束の間の平和を感じることができました。
特に印象的だったのは、樹里の心の動きです。蓮との夜を「よくあること」と無理やり自分に言い聞かせようとしたり、彼の経験人数を勝手に推測して落ち込んだりする姿は、恋に不器用な少女のようで、非常に愛らしかったですね。
そして、蓮が朝ごはんを作るシーン。家事の一切を樹里に任せきりだった鉄平とは対照的に、当たり前のようにキッチンに立ち、彼女を「お客さん」としてベッドで休ませる蓮の姿に、新しい時代の男の理想像を見ました。彼が作るのがラーメンではなく、ちゃんとした朝食であることも、重要な対比だと感じます。
「私までおかしくなっちゃったみたい」という樹里の最後のモノローグは、この上なく幸せな悲鳴でしょう。これまでの自分を壊してくれる存在との出会い。それこそが、彼女が本当に求めていたものなのかもしれません。この穏やかな日常が、この先も続いていくことを心から願います。
◁前の記事はこちらから

▷次の記事はこちらから
