【枯れた花に涙を】9話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

【枯れた花に涙を】第9話をネタバレありで解説する
第8話のラスト、蓮(れん)が放った「叱られたい」という謎めいた言葉 。その真意が明かされないまま、第9話では二人の関係がさらに深まる重要な会話が描かれます。しかし、その裏では元夫・鉄平の身勝手な情事が進行し、樹里の束の間の安らぎに不吉な影が忍び寄ります。
蓮の言葉が溶かす、樹里の「貧乏性」
蓮からのデートの誘いを「仕事があるから」と断った樹里 。そんな彼女に、蓮は次の職場まで送ると申し出ます 。夕暮れの街を並んで歩く二人の間で交わされる言葉が、樹里の心を大きく動かしました。
嫉妬と気づき
歩きながら、樹里は蓮の履き古した靴に気がつきます 。毎日花を買うほどの余裕があるのに、なぜ靴を新調しないのか。彼女はつい、貧乏性の観点から「そのお金で他のものを買ったほうがいいんじゃない?」と口にしてしまうのです 。
「花ぐらい買ったっていいでしょう?」
しかし、蓮の返答は樹里の想像を超えたものでした。彼は穏やかに、しかし芯のある声でこう言います。
「いくら不遇な環境に身を置いてるからって花ぐらい買ったっていいでしょう?」
この一言は、貧しさの中で自分自身を豊かにすること、自分を大切にすることを忘れてしまっていた樹里の胸に深く突き刺さります 。彼女は、自分のさもしい考えを恥じると同時に、彼が自分に大切な何かを気づかせてくれたことを悟るのでした 。
「これからも会ってくださいね」
蓮の言葉に心を動かされた樹里が素直に感謝を伝えると、彼は優しく微笑み、こう続けます。「そう思うなら、これからも会ってくださいね」と 。この瞬間、二人の関係は単なる「知り合い」から、より深く、特別なものへと変わったのです。
西野が見る夢と、鉄平の現実
樹里と蓮の間に新たな絆が芽生えようとしている頃、元夫の鉄平は会社の飲み会の後、同僚の西野さんと二人きりになっていました。
「この男は永遠にあたしのものよ」
西野さんは鉄平に完全に心を奪われていました 。彼女の視点からは、鉄平は他の男とは違う「特別」な存在。彼との情事の後、彼女はその愛情を確信し、「この男は永遠にあたしのものよ」とまで思い詰めています 。しかし、読者は鉄平の本性を知っているため、彼女の純粋な想いが痛々しく感じられます。
同僚への侮蔑
一方で鉄平は、飲み会で自分をからかった同僚を「風俗でしか女を抱いたことがないくせに」と内心で見下すなど、その歪んだプライドは健在です 。彼にとって西野さんもまた、自分の価値を確かめるための道具に過ぎないのかもしれません。
全室予約―ホテルに現れた救世主
蓮と別れた樹里は、3つ目の職場であるホテルの受付に立っていました。そこに、泥酔した客が「部屋に女もよこせ」と絡んでくるトラブルが発生します 。
黒いカードを持つ男
樹里が窮地に立たされた、まさにその時。一人の男が静かにカウンターへ進み出て、こう言いました。
「空いている部屋全部お願いします」
彼が差し出した黒いカードを見て、樹里は息をのみます。彼女を救うために颯爽と現れたその男もまた、蓮が裏で手引きしていました。彼は樹里を助けるためだけに、ホテルの全室を予約するという常識外れの方法で酔客を追い払ったのでした 。
束の間の幸せと、不幸の足音
「追い出しました」というメッセージを受け取る蓮。オーナーからも早く帰るよう促された樹里 。思いがけない幸運に恵まれ、彼女は久しぶりに穏やかで満たされた気持ちで家路につきます 。しかし、物語の最後は、こんな不穏なナレーションで締めくくられます。
「だから…気づけなかった。すべてのこのことが、これから起こる不幸の前兆だったことに」
束の間の幸せの後に、彼女を待ち受けている「不幸」とは一体何なのか。読者に強烈な不安の種を植え付け、物語は次話へと続きます。
まとめ【枯れた花に涙を】9話を読んだ感想
第9話は、樹里と蓮の心の距離がぐっと縮まる、切なくも美しいエピソードに胸が温かくなりました。蓮の「花ぐらい買ったっていいでしょう?」というセリフは、この物語のテーマの一つを象徴しているように感じます 。どんなに過酷な状況でも、自分の心を豊かにすることを忘れてはいけない。そんな大切なメッセージが込められているようで、深く心に残りました。
そして、酔客から樹里を守るためにホテルの全室を予約するという蓮の行動には、もはや痺れるしかありません。彼の行動は常に予測不能で、そのスマートさと財力には謎が深まるばかりですが、樹里を大切に想う気持ちだけは本物だと伝わってきました。
しかし、この作品は決して甘いだけの物語ではないことを、西野さんのエピソードと最後の不穏なナレーションが思い出させてくれます。鉄平に夢中な西野さんの姿は、かつての樹里を見ているようで胸が痛みます。そして、ようやく幸せを感じた樹里を待ち受ける「不幸の前兆」とは何なのか。この一言で、天国から地獄へと突き落とされたような気分です。この巧みな緩急こそが、本作から目が離せなくなる最大の理由だと改めて感じました。
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