【泣いてみろ、乞うてもいい】10話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

【泣いてみろ、乞うてもいい】第10話をネタバレありで解説する
第9話で、ついにレイラの前に姿を現したマティアス公爵。第10話では、これまで謎に包まれていた彼の内面が初めて語られ、レイラという存在が彼の「完璧な人生」に投げ込まれた小石のように、静かな波紋を広げていく様子が描かれます。
完璧な人生と、予定された婚約
物語は、公爵の執事が彼の不可解な行動に戸惑う場面から始まります。予定より1週間も早く帰還したかと思えば、今度は屋敷を目前にして「少し歩きます」と一人車を降りてしまうのです 。
その理由は、彼のモノローグによって明らかになります。彼、マティアス・フォン・ヘルハルトの人生は、完璧でした。完璧な子ども、完璧な学生、そして完璧な将校 。そしてこれからも、完璧な女性と結婚し、完璧な父となり、家門をさらに強くしていく。それは、彼にとって「当然の義務」であり、全てが予定された退屈な道筋でした 。
母親から、ブラント家の令嬢クロディーヌとの婚約を勧められても、彼は「はい、そのつもりです」と淡々と受け入れます 。彼の人生には、渇望も葛藤も存在しないかのように見えました。
偶然の再会と、意地の悪い親切
そんな彼の退屈な日常に、突如として彩りがもたらされます。自転車に乗ったレイラが、彼の目の前で派手に転倒したのです 。散らばった本、転がるペン、そして土に汚れた金色の髪 。マティアスはすぐに、彼女が4年前に森で出会った「あの時の子どもか?」と気づきます 。そして同時に、彼女が「もう幼い少女ではない」ことにも 。
彼は、レイラが落としたペンを拾い上げると、おもむろに彼女の靴の先をペンで突きます 。そして、屈辱に耐える彼女を見下ろし、「呼んでいるだろう」と冷たく言い放ちました 。それは、彼のサディスティックな一面と、レイラという存在への歪んだ興味が垣間見える、あまりにも意地の悪い「親切」でした。
奇妙な道行きと、変化の兆し
何も言わずに立ち去ろうとする公爵の後ろを、レイラは追い越すこともできず、ただ黙ってついていくしかありません 。その姿は、まるで絶対的な捕食者の後をついていく、無力な小動物のようでした。
屋敷へ続く道をゆっくりと歩くマティアス。その道中、彼はふと足を止め、隣を歩くレイラに視線を向けます 。これまで彼女を「子ども」としか見ていなかった彼の心に、明らかな変化が訪れた瞬間でした。
そして、物語は彼の印象的なモノローグで締めくくられます。「時が流れ子どもが成長した」「もう幼い少女ではない」「あの女、レイラ・ルウェリンが」。彼の完璧で退屈な世界に、レイラという名の異物が入り込んだ。二人の運命が、今まさに本格的に交錯し始めようとしていました。
まとめ【泣いてみろ、乞うてもいい】10話を読んだ感想
第10話は、これまで冷酷な「虐殺者」としてしか描かれてこなかったマティアス公爵の内面が初めて明かされ、彼のキャラクターに一気に深みが出た、非常に重要な回でした。「完璧な人生への退屈」という彼の抱える孤独や虚無感は、意外にも人間味を感じさせ、彼が決して一枚岩の悪役ではないことを示唆しています。
しかし、その一方でレイラに対する態度は、やはりサディスティックで容赦がありません。ペンで靴をツンツンと突くシーンは、彼の歪んだ独占欲や支配欲の表れのようで、見ていてゾクゾクしてしまいました。彼のSっ気あふれる振る舞いに、新たな魅力を感じた読者も多いのではないでしょうか。
特に印象的だったのは、ラストの「あの女、レイラ・ルウェリンが」というモノローグです。これは、彼が初めてレイラを、対等な「個」として、そして抗いがたい魅力を持つ「女」として認識した瞬間だと感じました。
カイルとの甘酸っぱい青春物語とは対極にある、抗えない運命と危険な恋の始まりを予感させる、鳥肌もののエンディングでした。彼の退屈な世界は、レイラによってどう変えられていくのか。次回の展開から一瞬たりとも目が離せません。
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