【泣いてみろ、乞うてもいい】19話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

漫画「泣いてみろ、乞うてもいい」第19話をネタバレありで解説する
ビルの愛情が詰まった帽子を取り戻すため、自ら川に飛び込み、公爵に命を救われたレイラ。第18話のラストで、彼女は彼への屈辱と怒りを胸に、大切な眼鏡を彼の離れに置き忘れてきてしまいました。第19話では、その眼鏡を巡って、公爵の執着、レイラの葛藤、そして親友カイルの優しさが描かれます。
離れに残された眼鏡と、公爵の追憶
物語は、公爵マティアスが一人、離れでレイラの眼鏡を手に取る場面から始まります。彼は、彼女の視力がかなり悪いこと、だからいつも顔をしかめていたのだと気づきます。彼の脳裏に浮かぶのは、かつて出会った、みすぼらしい身なりをしながらも、ひときわ輝く緑の瞳を持っていた少女の姿。その子どもが、いつの間にか自分の領地で、意識すらしないうちに美しい女へと成長していた。その事実と、彼女から香る夏の薔薇のような甘い匂いが、彼の心を静かに掻き乱します。
彼は、高ぶる感情を鎮めるかのようにシャワーを浴び、再び「完璧なヘルハルト公爵」の仮面をつけ、何事もなかったかのように夜の晩餐会へと向かうのでした。
消えた眼鏡と、浮上した二人の容疑者
一方、レイラはビルとの夕食の席で、過去に彼から贈られたヘアピンをカラスに盗まれた思い出を語り合っていました。ビルは、失くした眼鏡のことも、見つからなかったら一人で悩まずに必ず言うようにと、釘を刺します。レイラは、これ以上ビルに心配をかけまいと、公爵との一件を隠し、翌朝早く、一人で離れへ眼鏡を取りに行くことを決意しました。
しかし、次の日の早朝、彼女が船着き場を訪れると、そこに眼鏡の姿はありませんでした。風で飛ばされたのか、それとも…。レイラは、公爵が持っていく理由はないと考え、かつてヘアピンを盗んだカラスが犯人ではないかと疑います。こうして、レイラの頭の中には、カラスと公爵という、二人の容疑者が浮かび上がるのでした。
伝書鳩フィービーと、駆けつけた親友
眼鏡が見つからず、途方に暮れたレイラは、彼女が訓練した伝書鳩のフィービーに一通の手紙を託します。それは、図書館で会う約束をしていたカイルへの、約束を違えることを詫びる手紙でした。手紙を受け取ったカイルは、彼女が苦労して手に入れた眼鏡を失くしたと知り、いてもたってもいられず、母親の制止を振り切ってレイラの元へと駆けつけます。
優しい提案と、譲れない意地
カイルは、落ち込むレイラを見つけると、すぐに「俺が新しいのを買ってやるよ」と優しい提案をします。しかし、レイラの答えは「それはダメよ」という、きっぱりとした拒絶でした。この眼鏡は、彼女が自分の力で初めて手に入れた、自立の証です。だからこそ、誰かに買ってもらうのではなく、絶対に自分の手で見つけたい。その頑なで強い眼差しに、カイルは何も言えなくなってしまうのでした。
まとめ【泣いてみろ、乞うてもいい】19話を読んだ感想
第19話は、レイラを巡る二人の男性、マティアスとカイルの、彼女への想いの違いが鮮明に描かれた回でした。その対比が、物語の緊張感を一層高めています。
マティアス公爵のパートは、彼の内面が垣間見え、非常に興味深かったです。彼はレイラを「自分の世界で育った女」と認識しており、その視線には明らかな所有欲が感じられます。彼女の眼鏡を手に、彼女に思いを馳せる姿は、獲物をいたぶる前の捕食者のようで、彼の執着の深さに改めてゾッとさせられました。
一方で、カイルの行動はどこまでも純粋で、ひたむきです。レイラからの手紙一枚で、母親の反対も押し切って駆けつける。そして、彼女の悲しみを少しでも和らげようと、すぐに新しい眼鏡を買ってあげようと提案する。彼の愛情は、見返りを求めない、太陽のような温かさに満ちています。
そして、そんなカイルの申し出を断るレイラの姿も印象的でした。彼女はただ守られるだけのヒロインではなく、自分の力で困難に立ち向かおうとする、強い意志とプライドを持っています。この強さこそが、彼女の魅力なのでしょう。しかし、その眼鏡はすでに公爵の手に。彼女の決意が、皮肉にも再び彼との接点を生んでしまうという展開に、運命の残酷さを感じずにはいられませんでした。
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