【あなたが私を手に入れたいのなら】10話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー

【あなたが私を手に入れたいのなら】第10話をネタバレありでわかりやすく解説する

前回、父の目の前でセイオッドの求婚を受け入れるという大胆な行動に出たキーサ。彼女の人生を賭けた反逆は、ついに最終交渉の局面を迎えます。今回は、セイオッドの驚くべき計画の全貌と、父が下す運命の決断が描かれる、息をのむような展開です。

庭園の密談と「契約」の条項

父を釣るための「餌」

父との交渉を終えたセイオッドと二人きりで話すため、キーサは庭園へと向かいます。彼女は、王家やローウェンズ家との複雑な利害関係を考えると、父がこの申し出を簡単に受け入れるとは思えず、不安を募らせていました。

そんな彼女の心配をよそに、セイオッドは落ち着いていました。彼は、自身の馬車に家門の紋章がないことを指摘したキーサに、父との交渉内容を明かします。「お父様には餌を投げておきました。バンスフェルト家の事業を少し手助けする方向で」。彼は、キーサの父が最も重視する「実利」を提示することで、この婚姻を認めさせるという戦略を立てていたのです。

愛を含まない四つの約束

セイオッドは、図書館で身分を隠していたことを丁寧に謝罪しつつ、今回の求婚が計算されたものであることを明かします。「長い間修道院で過ごした若造の公爵が、美しい女性に一目ぼれしてプロポーズする」。それは、誰もが納得しやすい、完璧な筋書きでした。

そして彼は、この婚姻が純粋な契約であることを示す、具体的な条項をキーサに提示します。

  1. 合意した期間は婚姻関係を維持する
  2. 期間満了後は、どちらかが望めば関係を解消する
  3. 婚姻期間中は、互いに配偶者としての役割を忠実に果たす
  4. ただし、その役割に夫婦の関係は含まれない

それは、互いの自由と尊厳を守るための、肉体関係を持たないという約束でした。セイオッドは「心配せずに待っていてください。必ず全てうまくいきます」と力強く約束し、その場を去るのでした。

張り詰めた空気と父の決断

嘘と真実が交錯する食卓

セイオッドが帰ってから3日、父からは何の連絡もなく、キーサは不安な日々を過ごしていました。そんな中、父との気まずい夕食の席で、彼は探るように尋ねます。「ヒーラン公爵はお前をオペラの劇場で初めて見たんだと?」。

キーサは、セイオッドと事前に打ち合わせした筋書きを守るため、「多くの人が集まっていてそれどころではなかったので」と、彼とは会っていないと嘘をつきます。父は疑いの目を向けますが、キーサは平静を装い、その場をなんとか乗り切るのでした。父が即決しないことに、彼女はわずかな望みを見出します。

侍女の告げ口と予期せぬ援護

その均衡を破ったのは、ダニエルから贈られたドレスでした。キーサがそれを捨てるよう命じたことに反発した侍女は、「伯爵様に報告するしかありませんわ!」と、父に言いつけに走ってしまいます。

侍女は、父に「お嬢様ったら、ダニエルお坊ちゃまが下さったドレスを…!」と告げ口をし、裁決を求めます。キーサが息をのんで見守る中、父は静かに、しかしはっきりと、予想外の言葉を口にしました。

娘の好きにさせなさい

過去への決別と勝利の微笑み

父の言葉に、侍女は耳を疑います。しかし父は「いや、行くなと言うほうが正しいな」と、キーサがパーティーに行くことすら止めたのです。そして、驚くべきことに、「話が長くなるかもしれない。今その余裕がないならあとで来ても構わない」と、初めて娘の都合を気遣う言葉をかけました。

父の変わりように呆然とする侍女を尻目に、キーサは勝ち誇ったように微笑みます。そして、今まで抑圧されてきた鬱憤を晴らすかのように、晴れやかな笑顔で命じました。

ねえ、聞いたでしょ? ダニエルがくれたドレスはすぐに捨てて!

それは、彼女が過去の自分と完全に決別し、掴み取った輝かしい勝利の瞬間でした。

まとめ【あなたが私を手に入れたいのなら】第10話を読んだ感想(ネタバレあり)

第10話は、セイオッドの知略とキーサの成長、そして父親の驚くべき変化が描かれた、見事な構成の回でした。セイオッドの計画の全貌が明らかになり、彼がただ優しいだけでなく、非常に計算高く、頼りになる人物であることが証明されました。「契約結婚」の具体的な条項、特に肉体関係を含まないという第4条は、彼がキーサの尊厳を何よりも尊重している証であり、二人の信頼関係の礎となる重要な約束だと感じます。

しかし、今回最も胸を打たれたのは、キーサの父の変化です。あれほど冷徹で、娘を道具としか見ていなかった彼が、「娘の好きにさせなさい」と告げた瞬間は、鳥肌が立ちました。セイオッドが提示した事業提携という「餌」が効いたのは間違いないでしょうが、それだけではないはずです。自分の意に反してでも「婚約破棄」を訴え、嘘をついてまで自分の計画を守ろうとする娘の姿に、彼の中で何かが変わり始めたのかもしれない、と期待させてくれます。

最後の、キーサが勝ち誇った笑顔でダニエルのドレスを捨てるよう命じるシーンは、最高のカタルシスでした。それは、彼女が父の支配だけでなく、ダニエルからの精神的な束縛からも解放されたことを象徴する、見事なエンディングです。父との対話の先に、一体どのような未来が待っているのか。物語は大きな山を越え、新たなステージへと進み始めました。

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コマさん(koma)
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野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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