【さよならお兄ちゃん】16話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 担当の医師が病室を訪れ、星が命に関わるほど深刻な喘息を患っていたという、衝撃的な事実を家族に初めて告げました。
  • 星の喘息は急激に悪化しており、本来受けるべきであった再検査の時期をすでに数週間も過ぎているという、極めて危機的な状況であることが判明します。
  • 家族は、これまで星が訴えていた喘息の症状を、全て「同情を引くための演技」だと一方的に決めつけていた過去を思い出し、自分たちが犯した過ちの取り返しのつかない深さに、ようやく気づき始めました。

【さよならお兄ちゃん】第16話をネタバレありでわかりやすく解説する

愛する妹、星が命に関わるほど深刻な喘息を患っていたという、あまりにも衝撃的な事実。その事実は、まるで消えない烙印のように、家族一人ひとりの心に深い罪悪感を刻み付けます。

そして、次兄・勛の新しい目に映る日常の風景が、これまで見過ごされてきた、星の深く、そして静かな愛情で満ち溢れていたことを、彼らに思い出させていくのです。

後悔と自己嫌悪

「なぜ、一言でも言ってくれなかったんだ…。どうして、本当のことを打ち明けてくれなかったんだ。俺たちが、どれだけお前のことを心配していたか、わかっているのか…。」

三兄の哲(チョル)が、まるで自分自身を責め苛むかのように、苦しげに言葉を呟きます。

しかし、その言葉は、あまりにも自己中心的で、独りよがりな響きを持っていました。星は、これまで何度も、何度も、必死に自分の苦しみを訴えていたのです。ただ、それを信じようとしなかったのは、他の誰でもない、彼ら家族の方でした。

「俺に…兄を名乗る資格なんて、これっぽっちもないんだ。」

哲はそう言うと、怒りと後悔に任せて、自らの頬を力任せに叩きました。ジーンと響くその鈍い痛みは、星がたった一人で耐え忍んできた、心と体の痛みに比べれば、あまりにも軽く、取るに足らないものでしょう。

母親は、まるで星の優しさに全ての責任を転嫁するかのように、涙ながらに言います。

「きっと、私たちに心配をかけさせたくなかったのよ。あの子の優しさが、かえって…。」

その隣で、月(タル)もまた、悲劇のヒロインを演じるように言います。

「…全部、私のせいなのよ。私が、この家に現れさえしなければ…。」

しかし、その茶番を遮るように、長兄の珉(ミン)は冷静な声で言い放ちました。

「もういい。タルのせいじゃない。全ての責任は、俺たちにあるんだ。俺たちが、悪かった。ビョルが戻ってきたら、今度こそ、ちゃんと償わなければならない。」

彼らが抱く後悔の念は、本物なのでしょう。しかし、彼らが口にする「償う」という言葉が、もう二度と星本人に届くことはないという事実を、彼らはまだ知りません。

星の愛情で満ちていた家

星の話が中心で面白くなったのか、月が唐突に勛に優しく尋ねます。

「お兄ちゃん、どこか行きたいところはない?私と一緒に、どこかへ寄ってから帰りましょう。」

勛は、その申し出を静かに断り、こう答えました。

「いや、家に帰りたい。ビョルと、一緒に過ごしたあの場所を、この新しい目でもう一度、ちゃんと見てみたいんだ。」

その言葉を聞いた月の表情が、一瞬、冷たく曇ります。勛の心が、今もなお自分ではなく、星の方に向いているという事実が、彼女のプライドを傷つけ、気に食わないのでしょう。

そうして家に帰った勛。見えるようになった目で、慣れ親しんだはずの家の中を改めて見渡すと、そこは、これまで気づかなかった、星のささやかな愛情で満ち溢れていることに気づきます。

階段の記憶

毎日何気なく上り下りしていた階段を、一歩一歩踏みしめる時、彼の脳裏に遠い日の記憶が蘇ります。

「お兄ちゃん、ゆっくりでいいからね。気をつけて、一歩ずつ歩いてね。」

目の見えない自分が、階段を踏み外して怪我をしないように、星はいつも、その小さな体でそばに寄り添い、手を引いて支えてくれていました。その小さな手の温もりが、当時の自分にとって、どれほど心強く、安心できるものであったか。

リビングの記憶

リビングに入ると、ふと、いつも使っていたテーブルの角が、滑らかに丸くなっていることに気づきます。

「これで、お兄ちゃんがぶつかっても、もう痛くないね。」

やすりを片手に、一生懸命テーブルの角を削っていた、幼い星の健気な後ろ姿が、目に浮かぶようです。勛が、家の中でうっかり怪我をしないようにという、ささやかな、しかし、どこまでも深い愛情が、そこには確かに存在していました。

999羽の鶴に込められた願い

そして、勛は、忘れていたある決定的な記憶を、鮮明に思い出します。

「ビョル、これは一体何なんだ?こんなにたくさん。」

「鶴をね、999羽折ると、どんな願いでも叶うんだって。だから、お兄ちゃんの目が良くなりますようにって、お願いしながら折っているの。」

「なんだ、そんなの、全部ただの迷信じゃないか。」

「それでも、私は折るよ。全部折り終わったら、私たちの秘密基地に、大切に保管しておくね。だから、お兄ちゃんの目が治ったら、必ず、絶対に開けてみてね。」

999羽の色とりどりの折り鶴。星は、兄に迷信だと笑われても、彼の目が再び光を取り戻すことを信じて、一羽、また一羽と、その小さな指で、切実な願いを込めて折り続けていたのです。そして、その大切な鶴を、「秘密基地」に保管していると。

秘密基地の場所

その記憶を思い出した瞬間、勛はハッと息を呑みました。

「兄さん、子供の頃、俺たちがよく一緒に遊んだ、あの屋根裏部屋のことを覚えている?今から、そこへ行ってみたいんだ。」

秘密基地。それは、幼い頃に兄妹三人で、よく隠れ家にして遊んでいた、あの薄暗い屋根裏部屋のことでした。もしかしたら、そこに、星が残した最後のメッセージが、今も眠っているかもしれない。

勛の切羽詰まった言葉に、兄たちも何かを察したように、緊張した面持ちで動き出します。星が残した、最後の希望の糸。そこに、一体何があるというのでしょうか。

物語は、家族が、それぞれの思いを胸に、屋根裏部屋へと続く、軋む階段を上っていくところで終わります。星が、その小さな指で折り続けた999羽の鶴と、そこに込められた純粋な願い。それが、これから家族に、さらなる残酷な真実を突きつけることになるのです。

【さよならお兄ちゃん】第16話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回の第16話は、星が抱いていた、あまりにも深く、そして健気な愛情が、これでもかというほど丁寧に描かれた回でした。そして同時に、その計り知れないほどの愛情に、全く気づくことすらできていなかった家族の愚かさが、改めて浮き彫りになったと感じます。

三兄・哲の「俺に兄になる資格なんてない」という自己嫌悪の言葉や、母親の「あの子の優しさが」という、どこか責任を転嫁するような発言は、正直に言って、聞いていて腹立たしい気持ちになりました。自分たちの犯した罪の重さを認めながらも、心のどこかで、まだ自分たちを正当化しようとしているように聞こえてしまうのです。

そして、月も相変わらずの完璧な演技で、見ているだけで不快感が募ります。「私が現れなければ」などと、どの口が言うのでしょうか。彼女の存在こそが、この悲劇の全ての元凶であるというのに。

しかし、その一方で、視力を取り戻した勛が、家の中を歩きながら、星が残した無数の愛情の痕跡を一つ一つ発見していくシーンは、本当に切なく、胸に迫るものがありました。階段の手すりに残る温もり、テーブルの丸められた角、そして、何よりも999羽の折り鶴。星は、常に、目の見えない兄のことを第一に考え、その日常の全てに、細やかな愛情を注いでいたのです。その一つ一つの事実が、まるで鋭い刃のように、勛の心に深く突き刺さったことでしょう。

特に、999羽の鶴にまつわるエピソードは、涙なしでは読むことができませんでした。兄に「迷信だ」と笑われても、それでもひたすらに、彼の目の回復を願って、小さな鶴を折り続ける星の姿。そのあまりにも健気で、純粋な愛情に、胸が締め付けられる思いです。

そして、その大切な鶴が保管されているという「秘密基地」。薄暗い屋根裏部屋に、星が残した最後の思いが眠っている。この展開には、悲劇の中にも、ほんの少しだけ、希望の光を感じることができました。

星が、その命と引き換えに残した999羽の鶴が、これから家族に何を伝えるのでしょうか。そして、彼らは、そのメッセージを、今度こそ正しく受け取ることができるのでしょうか。次回、屋根裏部屋で明かされるであろう真実が、この物語を、さらに大きく、そして決定的に動かすことになるのは間違いありません。

【さよならお兄ちゃん】16話のネタバレまとめ

  • 家族は、星が深刻な喘息を患っていたという事実を知り、それぞれが深い後悔と自己嫌悪に苛まれます。
  • 退院した次兄・勛は、自宅に戻り、家の中が、これまで気づかなかった星の細やかな愛情で満ち溢れていることに気づきます。
  • 階段の手すりや、テーブルの角など、星が目の見えない勛のために施した、数々の気遣いが次々と明らかになります。
  • 勛は、過去に星が、自分の目の回復を願って、999羽もの折り鶴を折ってくれていたという、大切な記憶を思い出します。
  • 星が、その大切な鶴を保管していると語っていた「秘密基地」が、子供の頃によく遊んだ屋根裏部屋であることが示唆されます。
  • 物語の最後、家族は、星が残した最後のメッセージを求めて、それぞれの思いを胸に、屋根裏部屋へと向かいます。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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