【さよならお兄ちゃん】2話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 主人公の南宮星が、義理の兄たちが主導する30年間の冷凍睡眠計画「星眠計画」に、自ら最初の被験者として志願するところから物語は始まります。
  • 星はもともと孤児でしたが、名家の南宮家に養子として引き取られ、三人の兄から深く愛されて育った幸せな過去がありました。
  • しかし、南宮家の実の娘である南宮月が海外から帰国したことをきっかけに、兄たちの態度は一変し、星は家族の中で次第に孤立していきます。
  • さらに月に巧妙な罠で濡れ衣を着せられ、信じていた家族からも信じてもらえなくなり、星は深い絶望の淵に立たされます。
  • 星は、志願者がおらず難航していた兄のプロジェクトを助けるという名目で、自らの存在を消すために被験者になるという悲しい決断を下し

【さよならお兄ちゃん】第2話をネタバレありでわかりやすく解説する

前回、自らを犠牲にし、家族への最後の「恩返し」をすることを決意した南宮星(ナンゴン・ビョル)。第2話は、彼女が「星眠計画」に関する最終的な説明を受け、まるで鉛を引きずるかのような重い足取りで家路につく、物悲しい場面から始まります。

その一方で、彼女を置き去りにした兄と、その愛情を独占する実の妹・南宮月(ナンゴン・タル)を乗せた豪華な車内では、星が体験している現実とはあまりにもかけ離れた、偽りの平穏に満ちた時間が流れていました。

車の中で繰り広げられる、月への過剰な愛情

おそらくはプロジェクトの記者会見を終えた帰りなのでしょう、静かで広々とした高級車の後部座席では、兄たちが実の妹である月に、蜜のように甘い言葉を絶え間なくかけています。

長男であり、計画の責任者でもある科学者の南宮珉(ナンゴン・ミン)と、次男で盲目の天才ピアニストである南宮勛(ナンゴン・フン)は、月の顔色を窺い、その体調をしきりに気遣うのです。

「心臓が悪いんだから、一人で出歩くなとあれほど言っただろう」 彼らの言葉の端々からは、月の「心臓病」という弱点が過剰に強調されています。それはまるで、触れれば壊れてしまいそうなガラス細工を扱うかのようです。

この過保護ともいえる態度は、彼女の言うことだけを絶対のものとして信じ、他のすべてが見えなくなってしまっている彼らの現状を物語っています。

月の巧みな演技と兄たちの盲目的な愛情

「お兄ちゃんたちに迷惑をかけるのが、本当に申し訳なくて…」と、眉を下げてしおらしく振る舞う月。彼女の計算され尽くしたその姿に対し、兄たちは「お前は俺たちのたった一人の、本当の妹なんだ。お前を心配しないで、一体誰を心配するんだ」と、これ以上ないほど優しく、そして甘美な言葉をささやきます。

その言葉、その眼差しは、ほんの少し前まで星に向けられていたものでした。しかし、血の繋がりという抗いがたい引力の前で、養子である星への愛情はあまりにも脆く、今ではそのすべてが実の妹である月へと注がれてしまっています。

彼らが月に愛情を注げば注ぐほど、それはかつて星を裏切ったことへの免罪符となり、自分たちの行動を正当化しているかのようにも見えます。

運命の交差――そして、残酷な選択

その頃、星は一人、夕暮れの街を頼りない足取りで歩いていました。自らの法的な死を証明する書類にサインし、30年ものあいだ意識のない眠りにつくという、あまりにも非現実的な現実が、ずしりと重く彼女の心にのしかかります。

孤独な帰り道と突然の発作

(あと4日…。私の18歳の誕生日。そして、多分これが人生で最後の誕生日…)

誕生日という本来ならば祝福されるべき日が、彼女にとっては人生の終焉を意味する日となっていました。耐えがたいほどの孤独と絶望感が引き金になったのか、星は持病である喘息の発作を起こし、その場に崩れ落ちてしまいます。

苦しそうに胸を押さえ、か細い喉から「ヒュー、ヒュー」という悲鳴のような呼吸音が漏れ、視界が徐々にかすんでいきます。 まさにその時、運命の悪戯か、兄たちと月を乗せた車が偶然にもその道を通りかかります。

車の窓から、道端で倒れている星の姿を最初に見つけたのは、皮肉にも裏社会にも通じ、物事の裏を読むことに長けているはずの三男、南宮哲(ナンゴン・チョル)でした。

月の策略と兄弟たちの反応

慌てて車を停めさせ、長兄の南宮珉がただならぬ様子で星に駆け寄ろうとした、まさにその瞬間でした。自分に向けられていた兄たちの注目が、憎き星に移ったことに気づいた月は、おもむろに自身の胸を押さえ、顔を歪めて苦しみ始めます。

星の命に関わる本当の発作を見て、自分も苦しいフリをするという、悪魔的としか言いようのない、あまりにも計算高く残酷な行動でした。 「兄さん、何してるんだよ!あいつは今、注目されたくて演技してるんだよ!」 次男と三男は、月のその迫真の演技にまんまと騙されてしまいます。

本当に助けを必要としている星を完全に無視して、「月を早く病院に連れて行かないと大変なことになる」と、迷いを見せる長男を強く唆すのです。

揺らぐ長兄と、置き去りにされる星

弟たちの言葉と、苦しむ月の姿を前に、珉の心は激しく揺らぎます。科学者としての冷静な観察眼が、星の苦しみが本物であると告げていたのかもしれません。しかし、その数秒の逡巡の果てに、彼が下した決断はあまりにも非情でした。

珉は倒れている星に一言もかけることなく車に戻るとアクセルを踏み込み、彼女を冷たいアスファルトの上に置き去りにしてしまったのです。

遠ざかっていく車のテールランプをぼんやりと見つめながら、星の口からは、すべてを諦めきったかのような乾いた言葉がこぼれ落ちます。

「この世から完全に消えても…きっと誰も気にしてくれないでしょ…」

それは、彼女が「星眠計画」へと向かう心を決定づける、最後の一押しとなる絶望でした。しかし、意識が薄れゆく中で彼女が最後に心に思い浮かべたのは、自分を裏切った兄たちへの憎しみや恨みではありません。

「でも、もういいの…。みんな、永遠に幸せでいて…」

自分を見捨て、死の淵へと追いやった家族の幸福を祈るという、あまりにも健気で、美しく、そして痛々しい願い。その言葉を最後に、星の意識はぷつりと途切れ、深い闇の中へと沈んでいくのでした。

【さよならお兄ちゃん】2話を読んだ感想(ネタバレあり)

第2話を読み終え、月と兄弟たちの行動がもたらす残酷さが、より一層鮮明に、そして立体的に描かれたと感じました。これはもう、単なる家族のすれ違いや誤解といった生易しいものではありません。明確な悪意と、あまりにも脆く自己中心的な愛情が引き起こした、必然の悲劇です。

まず、月の計算高さと精神的な成熟度には、もはや恐怖すら覚えます。長兄・珉が星に対して見せたほんの一瞬の良心、その小さな芽を的確に摘み取るかのように、完璧なタイミングで苦しむ演技を始める姿は悪魔的ですらあります。

彼女は兄たちの愛情という名の鎖を完全に手中に収め、それを自在に操る武器として、星を社会的に、そして物理的にも排除しようとしているのです。 そして何より胸が締め付けられるのは、長兄・珉の決断です。彼は一度、確かに星を助けようとしました。その人間らしい心がまだ残っていたのに、弟たちという同調圧力に唆された結果、最も残酷で許されない選択をしてしまう。

もし彼が最初から冷酷非道な人物だったら、まだ読者としても諦めがつきます。しかし、彼の中にあったはずの優しさや罪悪感が、いとも簡単に多数派の意見に流されて消えてしまう様に、人間の精神的な弱さと、「家族」という閉鎖的な関係が孕む危うさを見せつけられた気がして、本当にやるせない気持ちになりました。

次男と三男に至っては、もはや月の意のままに動く操り人形です。彼らの目は完全に曇らされており、目の前で起きている真実を見抜く力を完全に失っています。 そんな絶望的な状況のなかで、星が最後に願うのが「みんなの永遠の幸せ」だなんて…。

どれだけ裏切られ、命の危険に晒されても、彼女の中にある「家族」への愛情は消えることがないのです。そのあまりにも美しく、そして痛々しいほどの自己犠牲の精神に、ただただ涙が止まりませんでした。この物語は、どこまで彼女に過酷な試練を与え続けるのでしょうか。

【さよならお兄ちゃん】2話のネタバレまとめ

  • 星は「星眠計画」の契約を終えた帰り道、精神的なショックから持病の喘息で倒れてしまうが、そこへ偶然兄たちの車が通りかかります。
  • 長兄・珉は倒れた星を一度は助けようとしますが、それを見た実の妹・月が、兄の関心を引くために自分も苦しいフリをして妨害します。
  • 次男と三男は月の演技を完全に信じ込み、珉に「星は演技している、月を早く病院へ」と促し、結果的に星を見捨てるよう唆します。
  • 珉は弟たちの言葉と月の演技に流されてしまい、本当に助けを必要としている星を道端に置き去りにしてその場を走り去ってしまいます。
  • 意識を失う直前、星は自分を見捨てた家族に対して恨み言一つ言わず、ただ彼らの「永遠の幸せ」を心から願うのでした。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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