【さよならお兄ちゃん】3話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 星は「星眠計画」の契約を終えた帰り道、精神的なショックから持病の喘息で倒れてしまうが、そこへ偶然兄たちの車が通りかかります。
  • 長兄・珉は倒れた星を一度は助けようとしますが、それを見た実の妹・月が、兄の関心を引くために自分も苦しいフリをして妨害します。
  • 次男と三男は月の演技を完全に信じ込み、珉に「星は演技している、月を早く病院へ」と促し、結果的に星を見捨てるよう唆します。
  • 珉は弟たちの言葉と月の演技に流されてしまい、本当に助けを必要としている星を道端に置き去りにしてその場を走り去ってしまいます。
  • 意識を失う直前、星は自分を見捨てた家族に対して恨み言一つ言わず、ただ彼らの「永遠の幸せ」を心から願うのでした。

【さよならお兄ちゃん】第3話をネタバレありでわかりやすく解説する

第2話のラストで、冷たい路上に意識を失ったまま置き去りにされた南宮星(ナンゴン・ビョル)。彼女の意識が再び浮上した時、目の前に広がっていたのは、絶望の淵にいた彼女がずっと夢見ていた、信じられないほど優しく温かい光景でした。

この一瞬の夢は、しかし、彼女をさらに深い現実の闇へと突き落とすための、残酷な序章に過ぎませんでした。

淡く儚い夢と、冷たい現実

「星!大丈夫か!」「しっかりしろ!」

ぼんやりと開いた瞳に映ったのは、ベッドの周りを取り囲み、今にも泣き出しそうなほど心配そうな顔で彼女を覗き込む三人の兄たちの姿でした。

長兄・珉(ミン)、次兄・勛(フン)、三兄・哲(チョル)。彼らの焦燥に満ちた声、心からの安堵が滲む優しい眼差し…。それは、星が家族に裏切られる前の、ずっと焦がれていた幸せな日々の記憶そのものでした。

(お兄ちゃんたち…来てくれたんだ…)

その温もりに安堵し、震える手を伸ばそうとした瞬間、世界はまるで陽炎のように白く霞んでいきます。

「お嬢様、お目覚めですか?」

兄たちの声とは違う、穏やかで優しい声と共に星の目にはっきりと映ったのは、兄たちではなく、心配そうにこちらを見つめる年配の家政婦の顔でした。

そう、先ほどの光景はすべて、星の深層心理が見せた、あまりにも淡く儚い夢。現実の無機質な病室には、彼女のそばに寄り添う家族の姿はどこにもなく、ただ静寂だけが広がっていました。

唯一の優しさと、両親からの拒絶

「お好きなワカメスープですよ」

夢から覚めた星の虚ろな表情を見て、家政婦は心から彼女を気遣い、温かいスープを差し出します。この広大で冷たい屋敷の中で、彼女だけが、損得勘定なく星の身を案じる唯一の味方なのかもしれません。

「なぜお兄様たちに、喘息の持病があることをお話しにならなかったのですか?」という家政婦の純粋な問いに、星は力なく微笑むしかありませんでした。

「前の私なら、心配かけたくないって格好つけて言ったかも。でも、今の私は何の価値もないから…言っても意味がないんです」

その言葉には、家族から存在価値を完全に否定されたことへの、深い絶望と諦観が滲んでいました。

心無い両親の言葉

その時、病室のドアが何の前触れもなく勢いよく開き、星の養父と養母が慌てた様子で飛び込んできます。しかし、彼らの心配そうな表情は、ベッドで体を起こしている星の姿を認めた途端、まるで汚物でも見るかのような、氷のように冷たい侮蔑の表情へと豹変しました。

「なぜお前がここにいるんだ?」「また私たちの気を引こうと演技しているのか?」

ようやく現れた両親が浴びせたのは、娘の体を思いやる言葉ではなく、彼女の人格そのものを否定する心無い言葉でした。

彼らは、星の見舞いに来たのではありません。隣の特別病室に入院している「本当の娘」である南宮月(ナンゴン・タル)のためにやって来ただけであり、星の存在は彼らにとって迷惑でしかありませんでした。

兄たちだけでなく、親権者であるはずの親からも拒絶されたことで、星の逃げ場は完全に断たれてしまいます。

残酷なライブ配信と、運命の着信音

両親にも冷たく突き放され、再び病室に一人きりになった星。

そのあまりにも痛々しい姿を見て、家政婦はたまらず問いかけます。

「お嬢様…まさか本当に『星眠計画』に応募なさるおつもりじゃないでしょうね?」

星が下そうとしている悲しい決意を、彼女は何とかして止めたい一心でした。

その時、星がベッドサイドに置いていたスマートフォンの画面が光り、通知音が鳴ります。それは、月がSNSのライブ配信を開始したことを知らせるものでした。

画面の向こうの「幸せな家族」

恐る恐る、震える指で画面をタップすると、そこには、まさに今、隣の病室で繰り広げられているであろう「幸せな家族」の姿がリアルタイムで映し出されていました。

長兄、次兄、三兄、そして父と母。家族全員が、満面の笑みで月を囲み、代わる代わる彼女の世話を焼いています。そして、母が月の前に優しく差し出したのは、温かい湯気の立つワカメスープでした。

「やっぱり母さんが作ってくれたワカメスープが一番おいしい」

その光景を見た瞬間、星の脳裏に過去の記憶が鮮やかに蘇ります。まだ家族が温かかった頃、自分が熱を出した時に母に同じことを言って甘えた思い出が。かつて自分だけに向けられていた母の愛情、食卓の温もり。そのすべてが今、月のものとなり、自分はそれをスマートフォンの冷たい画面越しに、部外者として眺めることしかできません。

そのあまりにも残酷な現実に、星の瞳からはこらえきれない大粒の涙がとめどなく溢れ出すのでした。

鳴り響く運命の知らせ

涙で滲んでよく見えなくなった画面の中で、幸せな家族のライブ配信は続いています。すると突然、月の隣にいた長兄・珉の携帯電話が、場の空気を切り裂くように鳴り響きました。

電話の相手は、第1話で星と契約の話をしていた「星眠計画」の研究員でした。そして、彼の口から告げられたのは、プロジェクトの責任者である珉にとって、待ち望んでいた報告です。

「代表!ついに…ついに志願者が現れました!」

その吉報に、珉の表情が驚きと、そして隠しきれない喜びに変わります。しかし、彼はまだ知る由もありません。彼の社運をかけたプロジェクトを破綻の危機から救うその「志願者」が、今まさに隣の病室で、自分たちが作り出した幸せな光景を見て涙を流している、たった一人の義理の妹・星であるという、あまりにも皮肉な事実を…。

【さよならお兄ちゃん】3話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回の第3話は、物理的な暴力以上に人の心を深く抉る、精神的に非常に辛い展開が続きました。冒頭で星が見た、兄たちが心から心配してくれる夢のシーン。これが幸せであればあるほど、目覚めた時の孤独な現実が、まるで鋭いナイフのように胸に突き刺さります。

そして、今回新たに登場した両親の存在が、この南宮家の歪みを決定的なものにしました。これまで兄たちの心変わりに焦点が当てられてきましたが、実の親からさえも「演技だ」と罵られ、その存在自体を疎まれる星の絶望は、察するに余りあります。血の繋がりというものは、これほどまでに人の心を冷たく、そして非情に変えてしまうものなのでしょうか。

特に、SNSのライブ配信という現代的なツールを使った演出が、星の孤独と疎外感をより一層際立たせていて、読んでいて本当に苦しかったです。ガラス一枚を隔てたすぐ向こう側にある、決して手の届かない幸せ。

かつて自分のものだったはずの母親が作った温かいワカメスープが、今は別の誰かのために存在している。この対比はあまりにも残酷で、作者の巧みな構成力に感嘆すると同時に、星の心情を思うと涙が止まりませんでした。

最後の電話のシーンは、物語の皮肉を凝縮した見事なクリフハンガーです。星の悲痛な自己犠牲が、何も知らない兄の成功へと繋がっていく。この恐ろしい事実を家族が知った時、一体どんな反応をするのでしょうか。今はただ、星の唯一の味方である家政婦の存在だけが、この救いのない物語の中に灯る、わずかな光だと感じています。

【さよならお兄ちゃん】3話のネタバレまとめ

  • 道で倒れた星は病室で目覚め、兄たちが心から心配してくれる優しい夢を見るが、現実にそばにいたのは家政婦だけだった。
  • 唯一、家政婦だけが星を親身に心配し、彼女の好物であるワカメスープを差し入れる。
  • 見舞いに来た両親は、隣室の月が目的であり、星の姿を見るなり「また演技しているのか」と冷たく突き放す。
  • 星は、家族全員が隣の病室で月を囲み、楽しそうにしている様子を、月のSNSライブ配信で見せつけられ、絶望の涙を流す。
  • そのライブ配信の最中、プロジェクトの難航に悩んでいた長兄・珉のもとに、「星眠計画の志願者が現れた」という吉報の電話が入る。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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