【さよならお兄ちゃん】9話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 庭で倒れていた星が自室で目を覚まし、兄たちから心のない形だけの心配を受ける。
  • その日は星の18歳の誕生日だが、兄たちはそれを忘れ、自分たちのための「星眠計画」の成功を祝うパーティーの日としか認識していない。
  • パーティーのスピーチで長兄・珉は「名前も明かさない志願者」への感謝を述べ、さらにプロジェクト名を「月星睡眠計画」に変更すると発表し、星の存在を公の場から抹消する。
  • 月は盲目の次兄・勛を燃え盛るバーベキューグリルへと意図的に誘導し、その命を危険に晒す。
  • 星は勛を助けようと駆け出すが、月に足を引っ掛けられて転倒し、結果的に次兄・勛も巻き込んでパーティーを台無しにした加害者のように見せかけられてしまう。

【さよならお兄ちゃん】第9話をネタバレありでわかりやすく解説する

華やかであるはずのパーティー会場で起きてしまった、あまりにも痛ましい騒動。南宮星(ナンゴン・ビョル)が必死に兄を守ろうとした純粋な行動は、悪意に満ちた演出によって歪められ、周囲の目には全く違う残虐な光景として映ってしまいます。

祝福されるべき彼女の18歳の誕生日は、最も残酷で、そして最も孤独な形で、その幕を静かに閉じようとしていました。

救おうとした行動が生んだ最悪の誤解

「お兄ちゃん、危ない!」 燃え盛るバーベキューグリルに向かって、無防備に歩いていく盲目の次兄・勛(フン)の姿を認め、星は反射的に叫びます。彼を危険から遠ざけようと必死で手を伸ばしましたが、その行動を予測していたかのように、すぐそばにいた月(タル)に巧妙に足を引っ掛けられ、星は為す術もなくバランスを崩してしまいました。

その結果、星はすぐ目の前にいた勛を巻き込む形で、派手な音を立てて床に転倒してしまうのです。 「お兄ちゃん、大丈夫!?」 自らの痛みも顧みず、心配そうに勛に駆け寄ろうとする星。しかし、その姿を見た月は、すかさず白々しく、そして完璧な悲劇のヒロインとしての演技を始めます。

心から兄を案じているかのような悲痛な表情を浮かべながら勛に近づく月の姿は、事情を知らない周囲の人間から見れば、まるで本当に心優しい妹そのものでした。

周囲からの非難の嵐

月が、まるで正義の代弁者であるかのように、怒りに満ちた鋭い声を上げます。

「南宮星!どうしてフン兄ちゃんをわざと突き飛ばしたりするの?!」

その言葉を合図にしたかのように、状況を正しく認識できていない次兄・勛も、冷たく突き放すような声で「南宮星…お前」と、もはや親しみを込めた愛称ではなく、他人行儀なフルネームで呼びます。

目の見えない勛もまた、何が起きたのかを正確に理解できず、信頼していたはずの星の行動に大きな衝撃を受けている様子でした。

「違うの、お兄ちゃん。そうじゃないの。お兄ちゃんが燃えているグリルに転んで、大怪我をするかと思って、それで…」

星は必死に事実を伝えようと弁解しますが、月がすぐさまその言葉を遮ります。

「嘘つき!みんな、今この目で、はっきりと見たわよ!」 その言葉に呼応するように、月の友人たちも次々と援護射撃を始めます。「そうよ、私たちがこの目で見たんだから」「あんたが押したに決まってるじゃない」という声が、四方八方から星に突き刺さります。

そして、これまで冷静だったはずの長兄・珉(ミン)までもが、「星、心からがっかりだよ」と、失望に満ちた言葉を口にするのでした。

信じてもらえない絶望

次兄・勛が、これ以上の騒ぎは望まないとばかりに、場を収めようとします。

「もういい、せっかくのお祝いの場だ…これ以上、騒ぎを起こさないようにしよう」

しかし、星は諦めきれず、最後の望みをかけて兄に問いかけます。 「お兄ちゃんは、私のこと信じてくれないの…?」 そのか細い問いかけに対する勛の返答は、星の心に残っていた最後の希望の欠片さえも、粉々に打ち砕くものでした。

「俺の前には確かに危険があった…それを、月が声を出して止めてくれたんだろう。それにお前が、この俺を本気で救おうとするなんて、そんなこと、今更信じろっていうのか?」

完全に突き放された星は、せめてもの強がりを見せて「ええ…私はそうするわ、お兄ちゃんだもの」と答えますが、その声には拭いきれない深い絶望が滲んでいました。

喘息の発作と家族の冷酷さ

信じていた兄からの完全な拒絶。その極度の精神的ストレスから、星は再び持病である喘息の発作を起こしてしまいます。

「息が…また…苦しい…」 苦しそうに胸を押さえ、か細い呼吸を繰り返す星。しかし、月はその姿を見てもなお、容赦なく言葉の刃で攻撃を続けます。

「南宮星、そんな見苦しい演技はもうやめなさい!フン兄ちゃんの目は、もうすぐ手術をすれば全部見えるようになるのよ!あんたのそんな小細工も、もう通用しなくなるわ!」

そして、心の中で月は冷たく、そして確信を持って呟くのでした。

(南宮星、今日こそ、あんたをこの家から完全に追い出してやる)

月の完璧な演技と星への挑発

まさにその時、月が突然、自らの心臓を押さえてその場に崩れ落ちます。それは、兄たちの同情を引くための、完璧なタイミングで披露された心臓病の発作の演技でした。

兄たちは、先ほどまで苦しんでいた星のことなど忘れ、慌てて月に駆け寄ります。三兄・哲は、本当に呼吸困難に陥っている星を憎悪の目で睨みつけて言い放ちます。

「おい、南宮星!人が倒れて苦しんでいるのに、お前はまだ何をするつもりだ!」

星は「息が…本当に、苦しいの…」と訴えますが、哲は聞く耳を持ちません。 「10年以上もそんな演技を続ける根気があるなら、他のことでもやればいいものを。一体いつまで、そんなふうに周りを巻き込んで暴走するつもりなんだ」

長兄・珉もまた、氷のように冷たい声で言い放ちます。「もうやめてくれ。今、治療を受けるべきなのは月の方だ。お前は見ての通り、無事じゃないか」

チャプサリの死の告白

なんとか自力で吸入器を使い、荒い呼吸を整えた星。そこへ、月の容態が落ち着いたのか、心配そうな素振りを装って近づいてきます。

「私はもう大丈夫だから…ビョル…あなたこそ、大丈夫?」 しかし、月の手に、テーブルから取ったであろうフォークが巧妙に隠し持たれていることには誰も気づきません。

「また何をしようとしているの?」 その問いに、月は勝利を確信したかのように、冷たく微笑みます。「言ったでしょう。今日、あなたをこの家から完全に追い出すって」 そして、誰にも聞こえないように、星の耳元で恐ろしく、そして残酷な告白をします。

「そういえば、あの犬野郎、見た目より結構重かったわね。だから、ゴミ箱に投げ捨てた時、すごく手応えが良くて気持ちよかったわ」

愛犬チャプサリを、自分が殺したことを、月はまるで武勇伝のように、そして得意げに語ったのです。

爆発する怒りと家族の決別

「あんたっ!」 その言葉を聞いた瞬間、星の中でかろうじて繋ぎ止められていた理性の糸が、大きな音を立てて切れました。抑えきれない怒りで月に襲いかかろうとした、まさにその瞬間、月は待っていましたとばかりに、星の手に自分が持っていたフォークを巧妙に握らせます。

周囲からは、星が凶器を手に、無防備な月を襲ったかのようにしか見えませんでした。

「一体全体、何してるの!こんなことしなくても、あなたは十分に愛されてるじゃない!私が持っていたはずのものを、全部、全部持っていったじゃない!」

星の心の底からの悲痛な叫びに、父親が雷のような怒声を上げます。 「お前、本当に頭がおかしくなったのか?月は、お前にとってたった一人の姉だぞ!その姉に対して、一体何をしようとしているんだ!」

三兄・哲が、さらに追い打ちをかけます。「だから言ったんだ!こいつを家に引き取るべきじゃなかったんだ!」

最後の決別

星は、もはや弁解することも諦め、静かに言います。「私が何を言っても、もう誰も信じてくれないでしょう」 長兄・珉が、心からの失望を込めた言葉を投げかけます。

「俺たちはこれまで、お前を本当の妹のように大事にしてきたつもりだ!その12年間を、全部こんな笑い話にしてしまうなんて!本当に、心から失望したよ、南宮星!」

星が「お兄ちゃん!」と最後の望みをかけて呼びかけても、父親は容赦なく、そして吐き捨てるように言い放ちます。

「この恩知らずのクソ女!お前と我が家とは、今日限り、もう何の関係もないんだ!」

そして、父親は振り上げた手を、星の頬に思い切り叩きつけました。会場が騒然とする中、次兄・勛が「お父さん、やめてください!星も僕たちの家族だ。月に謝れば、それでいいじゃないか」と、今更ながらに取りなそうとします。 月もまた、偽善に満ちた表情で「そうですよ、お父様。私のせいで、ビョルをこの家から追い出したりしないでください」と言いますが、それは火に油を注ぐだけであり、更に星を追い詰めるための材料でしかありませんでした。

18歳の誕生日の終焉

叩かれた頬の痛みよりも、心の痛みに耐えながら、星はゆっくりと立ち上がり、心の中で静かに呟きます。

(そうか…。最初から、全てが間違っていたんだ。今こそ、全てを元の正しい場所に戻す時なんだ)

「縁を切りましょう、今日限りで」

次兄・勛が「南宮ビョル、子供みたいに振る舞うのはやめろ」と諭し、長兄・珉も「本気で言っているのか?本当に、俺たちと縁を切りたいのか?」と問いかけます。 三兄・哲は、待ってましたとばかりに冷たく言い放ちます。「ちょうどいい。俺たちと家族でいたくないと言うのなら、さっさとこの家から出ていけ!」 星は、静かに、そしてはっきりと答えます。

「そう、哲兄ちゃんの言う通りにするわ」

そして、かつて家族だった人々に深々と頭を下げ、星は最後の挨拶をします。

「12年間、今まで本当にお世話になりました」 誰にも見送られることなく、たった一人で豪邸の門を出た星は、夜空を見上げて、静かに心の中で呟きます。

「私の18歳の誕生日が、家族との永遠の別れの日になるなんてね…」 祝福されるはずだった彼女の誕生日は、家族との完全な決別という、最も残酷で悲しい形で、その終わりを告げたのでした。

【さよならお兄ちゃん】9話を読んだ感想(ネタバレあり)

この第9話は、物語全体を通しても、見ていて本当に胸が張り裂けそうになる、あまりにも辛い回でした。星の18歳の誕生日が、彼女が最も愛した家族との永遠の決別の記念日になってしまうという展開は、残酷という言葉では言い表せないほどの衝撃です。

最も心を痛めたのは、星が純粋に兄を助けようとした、その善意の行動が、月の巧妙な罠によって完全に逆の意味で解釈され、彼女を奈落の底へ突き落とす最後の引き金になってしまったことです。救おうとした者が、最も憎むべき加害者として扱われる。このどうしようもない理不尽さには、怒りを通り越して、深い悲しみすら感じました。

そして、父親の「引き取るべきじゃなかった」「お前と我が家とは何の関係もない」という言葉、さらには実の娘同然に育てたはずの星の頬を、大勢の前で叩くという行為。12年間という長い歳月をかけて育んだ愛情が、血の繋がりがないという、ただそれだけの事実の前で、まるで最初から存在しなかったかのように消え去ってしまう。養子として迎えられた子供にとって、これ以上の地獄はないでしょう。

月の悪意は、もはや常軌を逸しています。愛犬チャプサリを殺したことを、まるで戦利品のように得意げに語り、さらには星の手にフォークを持たせて、彼女を凶暴な加害者に仕立て上げる。この計算され尽くした悪意の前では、純粋で不器用な星は、あまりにも無力でした。

それでも、すべてを失った最後の最後に、「今までお世話になりました」と深々と頭を下げて家を出ていく星の姿に、彼女の気高い品格と、それでもなお消えなかった家族への愛の残滓を感じて、涙が止まりませんでした。裏切られ、誤解され、暴力で追い出されても、最後まで礼儀を尽くす。その凛とした姿が、かえって残された家族の醜さと愚かさを、痛烈に浮き彫りにしていました。

【さよならお兄ちゃん】9話のネタバレまとめ

  • 星が次兄・勛を危険から助けようとした行動が、周囲には「突き飛ばした」と誤解され、パーティー会場で激しく非難される。
  • 極度のストレスから喘息の発作で苦しむ星を、家族全員が「気を引くための演技」だと決めつけ、誰一人として助けようとしない。
  • 月は星に、愛犬チャプサリを自分が殺したことを嘲笑うように告白し、さらに星の手にフォークを持たせて、彼女を凶暴な加害者に仕立て上げる。
  • 父親から「引き取るべきじゃなかった」と12年間の全てを否定され、頬を叩かれるという決定的な仕打ちを受ける。
  • 星は自らの18歳の誕生日に、家族との縁を完全に切り、たった一人で家を出ていくことを決意する。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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