【ちいさいひと 青葉児童相談所物語】第2話をネタバレありでわかりやすく解説する

ずっちー
前話のおさらい
  • 新米児童福祉司の相川健太は、夢だった児童相談所での勤務をスタートさせました。
  • その裏で、莉子と愛莉という幼い姉妹が母親から育児放棄(ネグレクト)されている悲劇が進行していました。
  • 妹の愛莉の容体が急変し、莉子が母親に助けを求める電話をしますが、母親は冷たくあしらい電話を切ってしまいます。
  • 母親からの抗議の電話を受けた健太は、自身のつらい過去の記憶と、電話の向こうから聞こえる子供のSOSを重ね合わせ、事件のただならぬ気配を察知します。

【ちいさいひと】第2話をネタバレありでわかりやすく解説する

前話で、見えない子どものSOSを確信した相川健太 。彼の胸騒ぎから始まった事件は、ついに「立ち入り調査」という局面を迎えます。今回は、証拠のかけらを集め、子どもを救うために奔走する児童相談所の職員たちの姿が描かれる、緊迫の第2話「立ち入り調査」を徹底解説します。

「カン」VS「根拠」―立ちはだかる現実の壁

第1話のラスト、母親・涼子からの電話で異常を察知した健太は、まるで別人のように鬼気迫る表情を見せます

「電話での…涼子さんの口調が尋常じゃなかった… 早く、子どもの安全を確認するために、強制介入しないと!!!!!

熱く訴える健太ですが、先輩職員の塚地は冷静に彼を制止します。

「それが根拠なのか… 相川!! この仕事はなぁ、カンで務まんねぇーんだ!!!!

塚地は、まだ完全に虐待と決まったわけではない以上、強制介入はできないと諭します 。子どもの命を救いたいという健太の熱い思いと、法の下で動くには「根拠」や「証拠」が必要だという厳しい現実。児童福祉の現場が抱えるジレンマが、二人のやり取りから浮き彫りになります。

小さな綻びを追って―入学式にない名前

塚地に一喝され、一度は落ち着きを取り戻した健太 。しかし、彼の心の中の炎は消えていませんでした。佐藤家の家族構成をもう一度確認していると、健太はある事実に気づきます。

姉の莉子ちゃんは6歳 。この春、小学校に入学する年齢です

「そうだ!!! お姉ちゃんに妹の様子を聞いてみればいいんだ!!

健太は、今日が地域の小中学校の入学式であることを思い出します 。小学校へ行けば、莉子ちゃんに直接会って話が聞けるかもしれない 。わずかな可能性に懸け、健太と塚地は青葉小学校へと急ぎます。

しかし、そこで二人が耳にしたのは、事態の深刻さを物語る事実でした。 担任の教師によると、莉子ちゃんは3月の入学説明会を欠席し、今日の入学式にも来ていないというのです 。母親からは一度連絡があったきりで、その後は音信不通 。虐待の危険があるのは、健診を受けていない妹の愛莉ちゃんだけだと思われていましたが、姉の莉子ちゃんもまた、社会との接点を断たれた危険な状態にあることが明らかになったのです

嘘で塗り固められた証言と地道な聞き込み

健太と塚地は、最後の望みをかけて再び佐藤家(祖母の家)を訪れます 。莉子ちゃんが入学式に来ていないと知らされた祖母は、明らかに動揺していました

その時、タイミングよく荷物を取りに来た母親の涼子本人が、祖母にこう告げます。 「もうほっといて…莉子も愛莉も、新しいマンションで元気にやってるんだから…

涼子の嘘を信じた祖母からその言葉を聞かされ、一度は万策尽きたかのように思われました。

しかし、塚地は諦めません。立ち入り調査の許可を得るための「緊急受理会議」を開くには、もっと多くの情報が必要だと判断 。二人は、近隣への聞き込み調査を開始します

すると、これまで見えていなかった事実が次々と浮かび上がってきました。

  • 最近、涼子さんは駅前のバーで働く男とよく一緒にいる 。
  • 以前はよく見かけた親子三人の姿を、最近は全く見なくなった 。
  • 夜中に子どもの泣き声がするという通報が警察にあった 。

さらに、通報を受けて現場に駆け付けた警察官も、祖母から「孫が夜泣きしているだけ」と説明され、子ども本人を直接確認はしていませんでした

健太は、全ての証言に共通する、恐ろしい事実にたどり着きます。

「おばあさんも…周囲の人も、子ども達の事を話してはいるんですけど…誰も、実際に目で子ども達を見ていないんです。

点と線が繋がる瞬間―緊急受理会議の攻防

数々の状況証拠を手に、塚地は愛莉ちゃんの摂食障害を診ていた青葉病院の医療ソーシャルワーカーに連絡を取ります 。そこで、愛莉ちゃんが退院後も通院が必要だったにもかかわらず、ここ2か月は連絡もなく、通院もしていないという決定的な事実が判明します

午後5時、緊急受理会議が招集されます

塚地は、集めた情報を元に、姉妹が置かれている危険な状況を力強く訴えました。 「これらの状況から、莉子ちゃん、愛莉ちゃんへの…医療ネグレクトは濃厚です!!!

「子どもの安全確認のため 至急、佐藤さん宅への、立ち入り調査をすべきではないでしょうか!!!!!

最初は健太の「カン」を否定していた塚地が、誰よりも熱く立ち入り調査の必要性を訴える姿は、彼の職務への誇りと責任感を感じさせます。

会議が紛糾する中、涼子が一緒にいると噂の男に会うため別行動を取っていた健太が飛び込んできます 。そして、彼は会議の空気を一変させる、決定的な証言を突きつけました。

涼子は、その男には「親子三人で暮らしている」と嘘をついていましたが 、男の同僚にはこう話していたのです。

涼子さんと二人で暮らし始めた…と

つまり、子どもたちは、涼子と一緒にはいない 。この嘘が、子どもたちが家に置き去りにされていることの、何よりの証明となりました。

立ち入り調査―明かされる惨状

健太がもたらした決定的な証言により、所長はついに立ち入り調査を承認します

「よしっ 佐藤さん宅へ突撃だ!!!

警察官も同行し、万全の態勢で一行は佐藤家へと向かいます

インターフォン越しに、健太は職員証を提示し、毅然とした態度で宣言します。

「“児童虐待防止法第9条”に基づき、これより立ち入り調査を行います!!!! 」

その言葉の重みに、祖母はドアを開けるしかありませんでした

家の中へ入った一行の前に、タイミング悪く涼子本人が現れます 。激高する涼子を振り切り、健太は異臭が漂う「離れ」へと走りました

そこで彼が見たものは、ゴミに埋もれた部屋のベビーベッドでぐったりと横たわる愛莉ちゃんと、その傍らで生きる気力すら失ったかのように座り込む莉子ちゃんの姿でした。 健太の悲痛な叫びが、静まり返った部屋に響き渡ります。

「お願いだ、生きててくれ!!! 今、助けるから!!!!」

二人の幼い命は、果たして助かるのでしょうか。息をのむような衝撃的なラストで、物語は次話へと続きます。

【ちいさいひと】2話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回は、とにかく手に汗握る展開でした。健太の熱い思いだけでは動けないという現実から始まり、地道な情報収集がいかに重要であるかがリアルに描かれていて、一気に引き込まれました。

特に印象的だったのは、先輩職員である塚地さんの変化です。最初は規則を重んじ、健太をたしなめる現実的な大人として描かれていましたが、一つ一つ証拠を積み重ねていくうちに、誰よりも子どもの命を救うために熱くなる姿には感動しました。健太のまっすぐな情熱が、周りの大人たちを動かしていく。これぞチームワークだと感じ、胸が熱くなりました。

「誰も実際に目で見ていない」という健太の気づきには、本当にゾッとしました。噂や又聞き、思い込みがいかに危険かということを、改めて突き付けられた気がします。自分の目で見て、事実を確認することの重要性を痛感しました。

そして最後のシーンは、あまりの衝撃に言葉を失いました。最悪の事態が現実のものとなり、ただただ姉妹の無事を祈るばかりです。健太の「生きててくれ」という叫びは、読者である私の心の叫びそのものでした。この重い現実から、決して目をそらしてはいけない。そう強く感じさせられる、非常に濃密な一話でした。

【ちいさいひと】2話のネタバレまとめ

  • 健太は強制介入を訴えますが、塚地から「根拠がない」と制止されます 。
  • 健太は姉の莉子が小学校の入学式を欠席していることを突き止め、これを糸口に調査を進めます 。
  • 地道な聞き込みの結果、母親・涼子の嘘や、子どもが実際に目撃されていないという事実が判明します 。
  • 決定打となったのは、涼子が新しい恋人と二人で暮らし始め、子どもたちを連れていないという証言でした 。
  • 緊急受理会議を経て立ち入り調査が許可され、ついに家の中で置き去りにされた莉子と愛莉が、危険な状態で発見されます 。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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