【ザ・ロイヤルファミリー】原作ネタバレ!結末までのあらすじを解説

2025年秋にドラマ化されることで大きな注目を集めている小説『ザ・ロイヤルファミリー』。放送開始を心待ちにしている一方で、一足先に原作の壮大な物語の行方、特にその結末がどうなるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
手に汗握るレースの展開はもちろんのこと、競馬という世界の裏側で繰り広げられる濃厚な人間ドラマは、多くの読者の心を掴んで離しません。
この記事では、そんな『ザ・ロイヤルファミリー』の原作ネタバレとして、物語の始まりから多くの読者の胸を打ち、涙を誘った衝撃の結末まで、物語の魅力を余すところなく、そして深く掘り下げて解説していきます。
また、複雑に絡み合う登場人物たちの関係性を分かりやすく解き明かす相関図の情報や、物語全体を貫く重要なテーマである継承がどのように描かれているのか、そして登場人物たちが経験する様々な失敗や後悔についても詳しくご紹介します。原作を読んだ人が「面白い」と感じるポイントはどこなのか、あるいは一部で「つまらない」という感想に至る理由は何なのか、様々な視点からこの壮大な物語の核心に迫ります。
- 原作の第一部から第二部までの詳細なあらすじ
- 物語の鍵を握る主要な登場人物たちの関係性
- 読者を感動させるラストシーンと物語の結末
- 作品のテーマである「継承」がどのように描かれているか
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【ザ・ロイヤルファミリー】原作ネタバレ【第一部】
- 物語のあらすじとテーマ
- 物語を彩る主な登場人物
- ワンマン社長で馬主の山王耕造
- 主人公で秘書の栗須栄治
- チーム山王の希望ロイヤルホープ
物語のあらすじとテーマ
物語は、税理士である主人公、栗須栄治(通称クリス)が、拭い去れない深い後悔を胸に抱き、人生の羅針盤を見失っている状態から静かに始まります。彼は、男手一つで自身と兄を育て上げてくれた最愛の父から、亡くなる少し前に「そろそろ家に帰って来て、一緒に税理士事務所を手伝ってくれないか?」と頼まれていました。しかし、当時のクリスは都会での生活やキャリアを捨てきれず、「まだ地元に戻りたくない」という自己中心的な理由で、父の申し出を断ってしまいます。
今振り返れば、あれは多忙と心労で心身共に限界を感じていた父からの、最後のSOSでした。それに気づけなかった、気づこうとしなかった自分への罪悪感に苛まれ、クリスは父の夢であった税理士の仕事を続ける気力を失ってしまうのです。
そんな失意と無気力の日々を送っていたクリスに、大きな転機が訪れます。大学時代の友人の紹介で、人材派遣会社「ロイヤルヒューマン」の社長であり、競馬界では毀誉褒貶の激しい有名馬主でもある山王耕造と出会うことになります。強引で独善的、しかし圧倒的なカリスマ性と情熱を放つ山王の姿に、クリスは自分が支えることのできなかった亡き父の面影を無意識のうちに重ね合わせます。山王もまた、クリスの誠実さの中に何かを感じ取り、彼を自社に迎え入れます。クリスはこうして、全くの異業種である人材派遣会社で第二の人生をスタートさせ、やがてその能力を買われて社長秘書となり、山王の夢である競馬事業に深く関わっていくことになりました。
そして、この物語を貫く最も大きなテーマが「継承」です。クリスは、最愛の父を支えられなかったという過去の後悔を、今度は山王耕造という新たな父親的存在を全力で支えることで乗り越え、自らの人生を再建しようとします。一方で、家庭を犠牲にしてきた山王もまた、競馬という夢中になれるものを見つけた代償として失った家族、特に離縁の直接的な原因となった隠し子の面影をクリスに見ており、二人は互いに家族に対して果たせなかった役割を補い合い、疑似親子のような強い絆で結ばれていきます。物語は、この二人の関係性を縦糸に、そして競走馬の血統という横糸を絡ませながら、人間と馬、それぞれの世代を超えた夢と情熱の「継承」という壮大なドラマを描き出していくのです。
物語を彩る主な登場人物
『ザ・ロイヤルファミリー』の深い感動は、それぞれが複雑な背景と強い想いを抱えた、魅力的な登場人物たちによって生み出されています。彼らが織りなす人間ドラマこそが、この物語の最大の魅力と言えるでしょう。ここでは、物語の運命を動かしていく中心人物たちを、より詳しく紹介します。
栗須栄治(クリス)
本作の主人公であり、物語の語り部を務める誠実な青年です。もともとは将来を嘱望された税理士でしたが、前述の通り、父の突然の死をきっかけに心に深い傷を負い、そのキャリアを捨て去ります。山王耕造との出会いによって人生の新たな目的を見出し、彼の専属秘書として、競馬という未知の世界に全身全霊で飛び込んでいきます。破天荒で予測不可能な山王に振り回されながらも、持ち前の真面目さと献身的な姿勢で彼を支え、チームに不可欠な存在となっていきます。
山王耕造
クリスが父の面影を重ねる、人材派遣会社のワンマン社長にして情熱的な馬主です。一代で会社を築き上げた経営手腕を持つ一方で、その独善的なやり方から社内外に敵も少なくありません。競馬の世界では「馬を見る目がない金持ちの道楽」と揶揄されながらも、血統や評判といった定説に惑わされず、馬を育てる人間の「心」を信じるという独自の哲学を貫きます。GⅠレース、特に有馬記念の制覇を人生最大の夢として追い求めています。豪快な言動の裏に、家族を失った深い孤独を隠し持っています。
中条耕一
山王耕造がかつての愛人との間にもうけた「隠し子」です。母を早くに亡くし、孤独な青年時代を送ってきました。父の死を前にして、その存在を明かされ、父が人生を懸けた夢と想いを「継承」するという重い宿命を背負うことになります。物語の第二部では、若き馬主として葛藤し、成長していく姿が描かれ、中心的な役割を担います。
野崎加奈子
クリスの大学時代の元恋人であり、彼の人生に大きな影響を与え続ける女性です。北海道で経営難に苦しむ競走馬の生産牧場「ノザキファーム」を営む実家を手伝っています。物語の鍵を握る名馬「ロイヤルホープ」を生産し、クリスを通じて山王に託したことで、全ての物語が動き始めます。
椎名善弘
大手人材派遣会社の若きCEOにして、山王の最大のライバルとなるカリスマ馬主です。数々のチャンピオンホースを所有し、競馬界で絶対的な成功を収めています。情熱をむき出しにする山王とは対照的に、常に冷静沈着で、その表情からは本心をうかがい知ることができません。しかし、その胸の内には山王と同じか、それ以上の熱い魂を秘めています。
佐木隆二郎
鮮やかな金髪がトレードマークの、若くしてトップに上り詰めた天才ジョッキーです。その奔放な言動とは裏腹に、騎乗技術は超一流。山王にその才能を見出され、チームの夢を託された愛馬「ロイヤルホープ」の主戦騎手を務めることになります。山王の娘である百合子と密かに愛を育んでいます。
これらの登場人物が、それぞれの過去、夢、そして葛藤を抱えながら、競馬という壮大で時に残酷なドラマの中で運命的に交錯し、物語を深く、感動的なものにしていきます。
ワンマン社長で馬主の山王耕造
山王耕造という男は、この物語のエンジンであり、その心臓部と言っても過言ではない、強烈な個性と魅力を放つキャラクターです。彼は、一代で人材派遣会社「ロイヤルヒューマン」を全国規模の企業へと成長させた、まさに立志伝中の人物です。しかし、その経営手法は、現代のコンプライアンス意識から見れば問題も多く、社員の意見には一切耳を貸さない典型的なワンマン経営者です。彼の鶴の一声で方針は百八十度変わり、その気まぐれと独善的な判断に多くの社員が振り回され、心労のあまり毎年大量の離職者を生み出しているという側面も持ち合わせています。
馬主としての彼は、そのワンマンぶりに輪をかけて情熱的で、常識外れな行動を繰り返します。競馬サークルやメディアからは「金持ちの道楽」「馬を見る目がない」と常に厳しい評価にさらされています。その理由は、彼が競走馬を選ぶ基準が、競馬界の常識である血統(血の繋がり)や馬体(馬の骨格や筋肉)といった客観的なデータではなく、その馬を育てている生産者や牧場スタッフの「人柄」や「馬への愛情」という、極めて主観的で情緒的な要素を最優先するからです。たとえ血統的に見劣りする売れない馬や、市場価格の安い馬であっても、それを育てる人間に嘘がないと信じれば、迷わず大金を投じ、その馬に自身の夢を託すのです。
しかし、その燃えるような情熱は、皮肉にも彼自身の家庭を焼き尽くしました。競馬にのめり込み、家庭を顧みない日々が続いた結果、妻や子供たちとの関係は完全に破綻し、見放されてしまいます。さらには、銀座のホステスであった愛人・中条美紀子との間に隠し子までもうけ、その事実が発覚したことで家庭は崩壊、離縁に至ります。彼は競馬の世界で大きな成功を夢見る一方で、人生で最も大切にすべきだった家族という温もりを失い、誰にも本心を明かせない深い孤独を抱えながら生きているのです。
彼の競馬人生において唯一の重賞タイトルをもたらしてくれたのが、その愛人であった美紀子が見立ててくれた馬であったという事実は、彼の孤独と哀愁をより一層際立たせます。主人公のクリスは、そんな豪快さの裏に不器用さと人間的な弱さを隠し持つ山王の姿に、自分が最期まで寄り添うことができなかった父を重ね合わせ、「今度こそ、この人を孤独にはさせない」と、彼の夢を支え抜くことを心に誓うのでした。
主人公で秘書の栗須栄治
栗須栄治、通称クリスは、この壮大な物語を読者と同じ目線で体験させてくれる、いわば水先案内人のような存在です。彼の誠実で、時に感傷的になる実直な語り口を通して、私たちは競馬という華やかな世界の裏側にある熱気、そしてそこに人生を懸ける人々の複雑なドラマを目の当たりにすることになります。
もともと彼は、尊敬する税理士の父の背中を追いかけ、将来は父の事務所を継ぎ、共に働くことを人生の目標としていました。そのために東京の大学へ進学し、卒業後は大手税理士法人で実務経験を積んでいました。しかし、父から「一緒に働かないか」という、彼にとって本来は夢の実現であるはずの誘いを受けた際、都会での成功や手に入れた地位を惜しむ気持ちから、一度はその申し出を先延ばしにしてしまいます。その直後に訪れた父の突然の死は、彼の心に「自分が父を見捨ててしまったのではないか」という、決して消えることのない深い後悔と罪悪感を刻みつけたのです。
人生の目標を完全に失い、空虚な抜け殻のような日々を送っていたクリスにとって、山王耕造との出会いは、まさに暗闇に差し込んだ一筋の光でした。ワンマンで破天荒、傍若無人な振る舞いも多い山王ですが、一つの夢に向かって脇目もふらず突き進むその純粋な情熱に、クリスは自分が理想としていた、そして支えきれなかった父親の姿を強く見出します。そして、「今度こそ、大切な人を自分の手で全力で支えよう。二度と後悔はしない」という固い決意を胸に、山王の秘書として彼の夢である有馬記念制覇を共に目指すことを誓うのです。
クリスは、山王の常識を超えた要求や無謀な挑戦に日々振り回されながらも、税理士として培った持ち前の真面目さと几帳面さ、そして何よりも献身的なサポートで、個性派揃いの「チーム山王」を陰で支え、まとめ上げていきます。物語が進むにつれて、彼は単なる秘書という立場を超え、山王にとっては失った家族の温もりを思い出させてくれる息子のような存在であり、孤独な夢を唯一分かち合える無二のパートナーへと変わっていくのです。この物語は、クリスが山王やその息子である耕一を支えるという役割を通して、自身の過去のトラウマと向き合い、人生の新たな意味と目的を見つけ出していく、一人の男の魂の再生の物語でもあると言えるでしょう。
チーム山王の希望ロイヤルホープ
ロイヤルホープは、物語の第一部において、登場人物たちの全ての想いを一身に背負う「希望」の象徴として輝く存在です。この美しい栗毛のサラブレッドは、主人公クリスの大学時代の元恋人である野崎加奈子の実家、北海道日高地方にある小さな生産牧場「ノザキファーム」で生を受けました。しかし、当時のノザキファームは深刻な経営難に陥っており、ロイヤルホープはまさに牧場の存続を懸けた最後の希望とも言える一頭でした。
山王耕造は、クリスからの懇願に近い依頼を受けて、多忙なスケジュールを割いてノザキファームを訪れます。そして、まだ若駒で実績も何もない、血統的にも決して一流とは言えないこの馬を購入することを、その場で即決します。周囲の専門家たちがその決断を疑問視する中、山王が見ていたのは馬そのものの資質よりも、加奈子をはじめとする牧場スタッフたちの、馬に対するひたむきな愛情と、この一頭に懸ける切実な情熱でした。彼の「馬ではなく、人を信じて馬を買う」という哲学が最も色濃く表れた瞬間です。
「ロイヤルホープ」と名付けられたこの馬は、その名に込められた期待に応えるかのように、デビュー戦で衝撃的な走りを見せます。最大のライバルである椎名家が送り込んできた良血馬を相手に、直線で見事な差し切り勝ちを収めるという、誰もが予想しなかった鮮烈なデビューを飾るのです。この劇的な一勝は、これまで長年にわたり「馬を見る目がない」と競馬界で揶揄され続けてきた山王にとって、自らの信念が正しかったことを証明する、何物にも代えがたい大きな喜びとなりました。そして、「チーム山王」のメンバーは、この奇跡的な勝利をきっかけに、「打倒・椎名家」、そして全てのホースマンが夢見る「GⅠ初優勝」という、遥かで壮大な目標に向かって心を一つにし、一丸となって突き進んでいくことになります。
しかし、その後の彼らの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。ロイヤルホープは出走するレースで常に上位争いを演じ、ファンを魅了するものの、勝利の女神はなかなか微笑んでくれません。あと一歩のところで、いつも目の前に立ちはだかるのは、王者・椎名家の強力な馬たちでした。そうして時間だけが過ぎていくうちに、山王の身体には病魔という暗い影が忍び寄り、チーム全体に焦りの色が濃くなっていきます。山王がまだ元気なうちに、何とかGⅠタイトルの栄光を届けたい。その切なる願いを一身に背負い、ロイヤルホープは多くの人々の夢と希望を乗せて、運命のラストランとなる有馬記念のゲートへと向かうことになるのです。
【ザ・ロイヤルファミリー】原作ネタバレ【第二部】
- 物語の核となるテーマ「継承」
- 夢を継ぐ山王の息子・中条耕一
- 世代交代の象徴ロイヤルファミリー
- 因縁の対決が描かれる有馬記念
- 感動のラスト!物語の結末とは
物語の核となるテーマ「継承」
物語の第二部は、第一部で丁寧に紡がれてきた「継承」という中心的なテーマを、より深く、そして世代を超えた壮大なスケールで描き出していきます。もし第一部が、山王耕造という情熱的な父親世代の、夢と、そして避けられなかった挫折の物語であったとするならば、第二部はその果たせなかった夢が、固い決意と共に息子世代へと力強く引き継がれていく、希望に満ちた再生の物語と言えるでしょう。
前述の通り、この物語における「継承」という概念は、単一的なものではなく、主に二つの重要な側面から重層的に描かれています。
その一つは、私たちにとって最も普遍的で共感を呼びやすい、人間社会における「親から子への夢の継承」です。病によって自身の夢の終焉を悟った山王耕造の、競馬に懸けた熱い想いと果たせなかった悲願は、これまでその存在を世間から隠されてきた実の息子、中条耕一へと託されることになります。耕一は、父が心の底から渇望し、しかし遂にその手にすることができなかった有馬記念制覇という大きな夢を受け継ぎ、若き馬主として競馬という厳しくも魅力的な世界に、運命的に足を踏み入れることを決意します。そして、父の代から仕えてきた秘書のクリスは、今度は耕一のマネージャーとして、新たな世代の困難な挑戦をすぐそばで支えていく役割を担うのです。
そしてもう一つ、競馬という題材ならではの、もう一つの「継承」が描かれます。それは、競走馬の世界における「血の継承」です。第一部で多くのファンの心を掴み、チーム山王の象徴として走り続けたロイヤルホープは、現役を引退した後、種牡馬(しゅぼば)として第二の馬生を歩み始めます。彼の優秀な遺伝子、そしてその魂は、自身の子供たちへと受け継がれていきます。その中でも特別な一頭、父の果たせなかった雪辱を果たすという宿命を背負って生まれた「ロイヤルファミリー」が、父と同じ勝負服をまとって、栄光のターフを駆け抜けることになるのです。
このように、人間の親子の世代交代の物語と、サラブレッドという馬の親子の物語が、時に寄り添い、時に反発しながら並行して描かれることで、「継承」というテーマはより立体的で深い感動を伴って読者の胸に迫ります。偉大な親を超えたいと願い、葛藤しながら成長していく息子たちの姿、そして血統という抗えない宿命を背負いながら、ただひたむきにゴールを目指す競走馬の美しい姿が感動的に描き出され、物語はクライマックスの有馬記念に向けて、一気にその熱量を高めていくのです。
夢を継ぐ山王の息子・中条耕一
中条耕一は、物語の第二部を力強く牽引する、もう一人の主人公です。彼は、山王耕造がかつて深く愛した女性、銀座のホステスであった中条美紀子との間にもうけた実の息子であり、その存在は彼のプライベートにおける最大の秘密として、長年にわたって固く隠されてきました。
彼は、まだ高校生という多感な時期に最愛の母を病で亡くし、その後は母方の祖母と二人で慎ましく暮らしていましたが、その祖母も彼が大学生の時に他界してしまいます。天涯孤独の身となり、未来への希望を見出せずにいた彼の前に、突然、父・山王耕造の代理人としてクリスが現れ、自身の出自と、父が不治の病に侵されているという衝撃の事実を告げられるのです。こうして彼は、会ったこともない父親の、莫大な夢と、そしてそれに関わる人々の想いという遺産を「継承」するという、あまりにも巨大な運命を背負うことになります。
当初、彼は自分たち母子を顧みなかった父に対して、愛憎の入り混じった複雑な感情を抱いていました。しかし、クリスを通じて父が亡き母を心の底から愛し続けていたこと、そして競馬という一つの夢に人生の全てを懸けてきた、その不器用で純粋な生き様を知るにつれて、次第にその夢を自分の手で引き継ぎたいという想いを強くするようになります。クリスの懸命なサポートもあり、彼は「相続馬限定馬主」という特別な制度を利用して、父の忘れ形見であるロイヤルホープの産駒、「ロイヤルファミリー」たちの馬主となることを固く決意するのです。
若き馬主となった耕一は、時にその経験の浅さや、父譲りの頑固さから、クリスや百戦錬磨のベテラン調教師と激しく意見を衝突させることもあります。しかし、亡き母から受け継いだと言われる、馬の本質を見抜く確かな眼(相馬眼)と、父から受け継いだ競馬への燃えるような情熱で、徐々にチームをまとめ、率いていきます。彼は、父・山王耕造とは全く異なる現代的なアプローチで、しかし同じ熱量で、父の悲願であった有馬記念制覇という夢に向かって、真っすぐに突き進んでいきます。そして、彼の最大のライバルとなるのは、山王の宿敵であった椎名善弘の息子・展之。偉大な父を持つという同じ境遇を分かち合う、二人の若き二世馬主の対決の行方も、第二部の物語を熱くする大きな見どころの一つとなっています。
世代交代の象徴ロイヤルファミリー
ロイヤルファミリーは、この壮大な物語のタイトルそのものであり、第二部のテーマである「継承」と「世代交代」をその一身で体現する、まさに象徴的な競走馬です。この一頭のサラブレッドは、その血統背景自体が、一つの物語と言えるほどにドラマチックな「継承」の結晶です。
父は、第一部においてチーム山王の全ての夢をその背に負い、最後まで諦めずに走り続けた不屈の闘士、ロイヤルホープ。そして、彼の母方の血筋をたどっていくと、そこにはかつて山王耕造に、彼の馬主人生で唯一となる重賞タイトルをもたらした、今は亡き愛人・中条美紀子が見出した名牝の血が、色濃く流れているのです。つまり、ロイヤルファミリーは、山王耕造が追い求めた夢と、中条美紀子が持っていた類まれな才能、その両方の遺伝子を奇跡的に受け継いでこの世に生を受けてきた、運命のサラブレッドなのです。
山王耕造がこの世を去る直前、クリスたちの必死の尽力により、この特別な仔馬は、バラバラになってしまった家族の再生への願いを込めて「ロイヤルファミリー」と名付けられ、息子の耕一へと法的に、そして精神的に無事に相続されます。
その血統に秘められたポテンシャルを証明するかのように、デビュー戦では他の馬を全く寄せ付けない圧巻の走りで勝利し、競馬界に衝撃を与えます。しかし、その輝かしいキャリアのスタート直後に、競走馬としては致命的ともなりかねない重度の脚部骨折に見舞われるなど、その競走生活は決して順風満帆なものではありませんでした。度重なる怪我や、思うように結果が出ないスランプの時期を乗り越え、若き馬主である耕一や、彼を支えるクリス、そしてチームの仲間たちの愛情と忍耐強いサポートの中で、ロイヤルファミリーは心身ともにたくましく成長していきます。
父・ロイヤルホープが、あと一歩のところで掴むことのできなかったGⅠレースの栄光、そして祖父の代からの悲願である有馬記念の勝利へ。ロイヤルファミリーは、父と息子の二代にわたる壮大な夢、そして競馬という情熱を通じて、再び家族の絆を取り戻したいという全ての関係者の切なる願いを一身に背負い、運命のグランプリレースへと挑むのです。
因縁の対決が描かれる有馬記念
物語のクライマックスは、全てのホースマンが憧れる年末のグランプリレース、中山競馬場で開催される有馬記念です。冬の澄み切った空気の中、繰り広げられるこの一戦には、山王家と椎名家、二つの家族の二代にわたる因縁と、それぞれの譲れない夢が凝縮されています。
まず、私たちの視線の中心にいるのは、山王耕造の息子・中条耕一が馬主を務める我らがロイヤルファミリー。そして、その鞍上に跨るのは、第一部のヒーロー・ロイヤルホープの生産者である野崎加奈子の一人息子・野崎翔平です。彼は、亡き山王の夢を追いかけてジョッキーとなり、この大舞台にまで上り詰めてきました。かつて父の愛馬を育てた牧場の息子が、時を経て、今度はその子供に騎乗してグランプリに挑むという、まさに物語のテーマである「継承」を象徴する夢のコンビです。
しかし、彼らの前に立ちはだかる壁はあまりにも高く、厚いものでした。最大のライバルは、やはり宿命の相手である椎名家です。山王の終生のライバルであった椎名善弘の息子・展之がオーナーを務めるソーパーフェクト。この馬もまたロイヤルホープの血を引く一頭であり、その実力は既に証明済み。日本の馬の悲願である海外の最高峰GⅠレース「凱旋門賞」で2着に好走するなど、世界レベルの能力を持っています。
さらに、百戦錬磨の父・椎名善弘も、息子にやすやすと栄光を譲るつもりはありません。彼もまたロイヤルホープ産駒である秘密兵器のビッグホープと、かつて父ロイヤルホープを幾度となく苦しめた怪物イマジンドラゴンの産駒であるレインボーキャンプという強力な2頭を送り込み、盤石の体制で山王家の親子二代の夢を打ち砕きにかかります。
レースは、観客の絶叫が地鳴りのように響く中、壮絶な激闘となりました。最後の直線では、多くの人々の予想通り、ロイヤルファミリーとソーパーフェクトが馬体を併せて激しく競り合い、一瞬たりとも目が離せない壮絶な叩き合いを演じます。誰もが二頭の一騎打ちになるかと固唾を呑む中、粘るソーパーフェクトをロイヤルファミリーが最後の力を振り絞って根性で差し切り、ゴール板が目前に迫ります。ついに悲願達成かと思われた、まさにその瞬間でした。
全く予想していなかった大外から、一頭の馬がまるで弾丸のような、信じられない末脚で追い込んできます。それは、ほとんどの観客がノーマークであった椎名善弘の馬、ビッグホープでした。そして、その鞍上には、かつて父ロイヤルホープの主戦騎手を務め、その苦楽を共にした天才ジョッキー、佐木隆二郎の姿がありました。2頭はほとんど同時にゴールに飛び込み、長い写真判定の末、僅かなハナ差でビッグホープに軍配が上がります。ロイヤルファミリーは、父と同じく、またしてもグランプリの栄光を目の前で逃し、2着に敗れてしまうのです。
感動のラスト!物語の結末とは
有馬記念での、あまりにも劇的で、そして残酷な敗戦。多くの読者はここで物語が終わるのかと息を呑みますが、物語はここで終わりません。ライバルである椎名家の、それも父ロイヤルホープの血を引くビッグホープに敗れたという、あまりにも出来過ぎた結果を前にして、若き馬主である中条耕一は、悔しさを超えた不思議な感覚に包まれます。それは、まるで天国にいる父・山王耕造が、「まだここで満足するな。お前の挑戦は始まったばかりだ。ここで終わるような器ではないだろう」と、力強く背中を押しているかのような、温かいメッセージに感じられたのです。
レース後、自身の敗戦を理解できずに悔しさから馬房で荒れるロイヤルファミリーの姿を見た耕一は、このレース限りでの引退という当初の予定を撤回し、チームの前で現役続行を宣言します。その力強い決断を、マネージャーであるクリスをはじめ、チームの仲間たちも涙ながらに、そして温かく支持しました。物語の本編は、「彼らの夢を乗せた挑戦は、まだ始まったばかりなのだ」という、未来への大きな希望に満ちた、美しい余韻を残してここで一度、幕を閉じることになります。
しかし、この小説が多くの読者の心に深く刻まれる本当の理由は、そのさらに先に用意された、粋な結末にあります。物語の最終ページをめくると、そこには文章ではなく、たった一枚の表がひっそりと、しかし確かな存在感を持って記されているのです。その表題は、「ロイヤルファミリー 競走成績」。
| 開催日 | 競馬場 | レース名 | 着順 |
| (中略) | |||
| 2017/12/24 | 中山 | 有馬記念(GⅠ) | 2着 |
| 2018/04/01 | 阪神 | 大阪杯(GⅠ) | 1着 |
| 2018/04/29 | 京都 | 天皇賞(春)(GⅠ) | 1着 |
| 2018/10/07 | パリロンシャン | 凱旋門賞(GⅠ) | 1着 |
| 2018/11/25 | 東京 | ジャパンC(GⅠ) | 1着 |
| 2018/12/23 | 中山 | 有馬記念(GⅠ) | 1着 |
この無機質な記録の羅列が、どんな言葉よりも雄弁にその後の物語を語っています。この成績表が示す通り、有馬記念での敗戦を乗り越えたロイヤルファミリーは翌年、本格的な覚醒を果たし、誰もが認める最強馬への道を駆け上がっていくのです。春の大阪杯で念願のGⅠ初制覇を飾ると、返す刀で天皇賞(春)、そして秋にはジャパンカップと、国内の最高峰GⅠレースを次々と制覇。さらには、多くの日本のホースマンが夢見ては破れてきた、世界最高峰のレースであるフランスの凱旋門賞までも勝利するという、歴史的な快挙を成し遂げます。そして、物語の始まりであり、全ての因縁が集約される場所、ついに因縁の有馬記念でリベンジを果たし、優勝カップを天に掲げるのです。それは、父と息子の二代にわたる壮大な夢が、最高の形で結実した瞬間でした。
その成績表の馬主の欄には、もちろん、誇らしげに「中条耕一」の名前が記されています。感動的なクライマックスをあえて文章で語るのではなく、読者一人ひとりの想像力に委ねることで、より深く、静かで、そして永遠に心に残る感動を生み出す、非常に秀逸で美しい結末と言えるでしょう。
【ザ・ロイヤルファミリー】原作ネタバレまとめ
- 物語は心に傷を負った主人公・栗須栄治が、カリスマ馬主の山王耕造と運命的に出会うところから始まる
- 作品全体を貫く壮大なテーマは、人間と馬、それぞれの世界で描かれる二つの「継承」である
- 物語の第一部は、ワンマン社長である山王耕造と、彼の夢を乗せた愛馬ロイヤルホープの挑戦の物語
- 山王は競馬という情熱に人生を捧げる一方で、その代償として大切な家族を失ってしまう
- 秘書の栗須は、支えきれなかった亡き父への深い後悔から、今度こそ山王を支え抜くことを心に誓う
- 多くの期待を背負ったロイヤルホープは、あと一歩のところでGⅠ制覇の夢を果たせないままターフを去る
- 物語の第二部では、山王が愛人との間にもうけた隠し子・中条耕一が新たな主人公として登場する
- 耕一は会ったことのない父の夢を継ぎ、ロイヤルホープの産駒(子供)の馬主となることを決意する
- その運命の馬こそが、物語のタイトルにもなっている世代交代の象徴、ロイヤルファミリーである
- 耕一の最大のライバルとして、山王の宿敵であった椎名家の息子・展之が立ちはだかる
- 物語のクライマックスは、二代にわたる因縁が交錯するグランプリレース、有馬記念
- レースは誰もが予想しなかった劇的な結末を迎え、ロイヤルファミリーは惜しくも2着に敗れる
- 敗戦の中に父からのメッセージを感じ取った耕一は、その場でロイヤルファミリーの引退を撤回する
- 小説の最終ページには、引退を撤回したロイヤルファミリーのその後の輝かしい競走成績が記されている
- 念願の有馬記念制覇や、日本競馬界の悲願である凱旋門賞勝利など、全ての夢が叶えられた輝かしい未来を暗示して、この壮大な物語は静かに幕を閉じる


