【傷ついた心に帰る場所はない】10話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 警察に通報したベラに対し、父親は暴力で応じ、家族全員で彼女を罵倒。さらに、父親は自らの権力で事件をもみ消したことを明かしました。
  • 反抗したベラは再び殴られ、両親から「化け物」と呼ばれ、その存在そのものを否定されます。
  • ついに限界に達したベラは、これまでの人生で受けた虐待の全てを告発し、両親との完全な決別を宣言しました。
  • 遅れて現れたドミニクの「愛してる」という言葉を、ベラは「それは愛ではない」ときっぱりと拒絶。パールの策略により、ドミニクはベラではなくパールの元へ駆け寄り、それを見たベラは彼との関係にも、今度こそ完全な終止符を打ちました。

【傷ついた心に帰る場所はない】第10話をネタバレありでわかりやすく解説する

明日への約束と、まとわりつく過去

物語は、全ての人間関係を断ち切ったベラが、留守番電話メッセージをトイレの個室で聞いているシーンから始まります。それは、外の世界からの唯一のライフライン、ジェミー軍曹からの声でした。「ベラ、大丈夫?」。その飾り気のない、しかし心からの心配が滲む声は、ベラにとって唯一無二の希望の光でした。

「家族がお前を見捨てても、この国はあなたを見捨てない。あなたは必要とされる人間なの。…明日、迎えに行く。もう、あの家とはお別れよ」。その言葉は、明日という日が、この地獄からの確実な脱出の日であることを、何よりも力強く約束するものでした。

しかし、その未来への希望にまとわりつくように、腐りきった過去の象徴であるドミニクが、救急箱を手に彼女の部屋に現れます。「…なあ、海兵隊がどうとか、少し聞こえた気がするんだが」。彼は、ベラの怪我を心配するふりをしながら、その実、自分の管理下から「資産」が逃げ出すのではないかと、探るような視線を向けます。しかし、もはやベラの心は微塵も揺らぎません。「聞き間違いよ」。彼女は、彼の偽りの優しさと、その裏にある卑しい詮索を、絶対零度の声で冷たく一蹴します。

「一体どうしたっていうんだ、最近のお前は…。まるで別人みたいじゃないか。俺は…俺は、本気で君を大切に思ってるんだぞ」。ドミニクはなおも、使い古された言葉で食い下がりますが、ベラは「もう、聞きたくない。いいから、疲れてるの。帰ってくれない?」と、彼を汚物でも見るかのような目で、完全に拒絶するのでした。

盗まれた栄光

ドミニクは、気まずそうに部屋を去り際に、まるで今思い出したかのように、一つの伝言を口にします。それは、ベラの人生を根底から変える可能性を秘めた、あまりにも輝かしい知らせでした。

「そうだ、ロボットアームのことだが…科学フェアで、見事一位だったそうだ。アイビーリーグの教授がお前の設計に目を付けて、是非プログラムに参加してほしいと…」

それは、虐げられ、搾取され続けてきた彼女の人生の中で、唯一誰にも汚されることのなかった聖域、彼女自身の才能と努力の結晶でした。しかし、ベラの反応は「分かったわ。もう帰ってちょうだい」と、あまりにも冷淡で、感情のないものでした。その理由は、次の瞬間、テレビの画面を通して、悪夢のような形で明らかになります。

場面は、きらびやかな照明が飛び交う、華やかな授賞式の会場へと移ります。

満場の拍手とスポットライトを浴び、栄誉ある賞のトロフィーを誇らしげに掲げているのは、姉のパールでした。「この賞で私のロボットアームの設計が評価され、大変光栄に思います」。彼女は、ベラの才能、血の滲むような努力、そして輝かしい未来への切符までも、悪びれる様子一つなく、全て盗み取っていたのです。

卑劣な言い訳と、家族という名の共犯者

場面は自宅へ。家族に囲まれて虚偽の栄光に讃えられているところにベラが現れます。

その信じがたい光景を目の当たりにしたベラは、怒りに身を震わせ、パールとその家族を激しく問い詰めます。「どうしてこんな真似ができるの!?なぜ彼女に、私のデザインを盗ませたのよ!」。怒りに任せて、彼女はパールがその手にしていた偽りの栄光の象徴、トロフィーを床に叩きつけ、粉々に砕きました。

しかし、家族は誰一人として、その罪悪感を表情に浮かべません。それどころか、ヘンリーが、まるで正義の鉄槌を下したかのように、自らの卑劣な行いを誇らしげに告白します。「俺だよ。俺がイベントの一時間前に主催者に電話して、受賞者をパールに変更させたんだ」。

その動機は、正義が倒錯した、身勝手な復讐心でした。

「お前が警察沙汰にしたせいで、お姉様がどれだけ怖い思いをなさったと思ってる。トロフィーくらい譲ってやるのが、お前にできる最低限の償いだろうが」

ベラが「償いですって!?私はあの子に車で轢かれて、死にかけてたのよ!」と血を吐くように訴えても、父親は「ヘンリーの言う通りだ。たかがトロフィー一つじゃないか」と、娘の痛みと才能の結晶を、道端の石ころのように、いとも簡単に踏みにじります。そして、母親は「パールは注目を浴びるのが大好きなの。だから、これからはあなたのデザインは、全てパールの名前で発表しなさい」とベラの未来に、絶望的な死刑宣告を下しました。

最後の搾取と、魂の破壊

父親は、なおもベラの心を支配し、罪悪感を植え付けようとします。「いいかいベラ、これをパールの経歴に加えれば、あの子はアイビーリーグだって夢じゃないんだ。あの子が立ち直る、大きなきっかけになる。お前だって、それを望んでるだろう?」。そして、当のパールは、純真無垢な被害者を完璧に演じきり、「ベラ、どうして…?また私が、何か気に障るようなことをしてしまったの…?」と、とどめを刺す一言を、その唇に乗せます。

その瞬間、ベラの心の中で、張り詰めていた最後の何かが、大きな音を立てて砕け散りました。

「私のデザインが欲しいですって!?ええ、そう!なら全部あげるわ!何もかも持っていきなさいよ!私にはもう、何もいらない!!」

彼女の悲痛な絶叫が、虚飾に満ちた邸宅に響き渡ります。

それは諦めや降伏ではありませんでした。自らの魂の欠片である、愛しい発明品の数々を、これ以上この汚れた家族に利用させないための、唯一にして最後の、あまりにも悲しい抵抗でした。

彼女は、階段を駆け上がると、自室にある発明品を、夜を徹して書き上げた研究資料を、その全てを、狂ったように泣き叫びながら階下へと投げ捨て、破壊し始めたのです。「いやあああああ!」。その叫びは、彼女の類稀なる才能と、そして虐げられ続けた過去の自分自身を、その手で葬り去るための、あまりにも悲痛な産声でした。

【傷ついた心に帰る場所はない】10話を読んだ感想(ネタレあり)

今回の第10話は、これまで読んできた中でも、最も読んでいて心が抉られる、苦しい回でした。家族からの仕打ちが、肉体的、精神的な虐待の域を完全に超え、ベラの才能、未来、そして魂そのものを根こそぎ奪い去ろうとする、最も卑劣で醜悪な領域にまで達したからです。ヘンリーの歪んだ正義感と、両親の狂気的な肯定には、怒りを通り越して、もはや恐怖と嫌悪しか感じませんでした。

特に、ベラの最後の行動には、涙が止まりませんでした。彼女が、自分の全てを懸けて、おそらくは唯一の心の拠り所として生み出してきた大切な発明品を、自らの手で破壊していく。その姿は、あまりにも悲痛で、痛々しいものでした。しかし、同時に、それは彼女に残された、唯一の自己防衛であり、人間としての尊厳を守るための、崇高な戦いだったのだと感じます。彼らに奪われ、汚されるくらいなら、自分の手でこの世から消し去った方がましだ。その悲壮な決意に、彼女の壮絶な生き様と、決して誰にも支配されない、不屈の魂の強さを見ました。

ジェミー軍曹からの「明日、迎えに行く」というメッセージが、暗闇の中の唯一の救いです。しかし、これほどまでに心を、そして自分の全てを破壊し尽くしてしまったベラが、果たして明日、無事にその手を取ることができるのか。この絶望の底の、さらにその底から、彼女がどのようにして立ち上がり、新しい人生を始めていくのか。今はただ、祈るような気持ちで、次の展開を待つしかありません。

【傷ついた心に帰る場所はない】10話のネタバレまとめ

  • ジェミー軍曹から「明日迎えに行く」という脱出を約束する留守電が入るが、ベラはドミニクの最後の干渉を冷たく拒絶する。
  • ベラが科学フェアで最優秀賞を受賞し、アイビーリーグからの誘いを受けていたことが判明する。
  • しかし、警察に通報されたことへの復讐として、ヘンリーが裏で手を回し、パールがベラの手柄を全て横取りしてしまう。
  • 家族は、ベラの才能を永久にパールに捧げるよう命令し、彼女を徹底的に追い詰める。
  • 限界を超えたベラは、自らの発明品を全て破壊するという、悲痛で壮絶な行動に出てしまう。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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