【傷ついた心に帰る場所はない】16話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • メアリーの証言により、ドミニクがパールに恋をしたきっかけであるハープの演奏が、実はベラによるものだったことが確定しました。
  • 追い詰められたパールは、最後まで嘘を認めず、真実を語るメリーを罵倒します。
  • メリーは涙ながらに、ベラが長年抱えてきた絶望を告白。「誰も私を愛していないし、信じてもくれないから」真実を語っても無駄だと、ベラが諦めていたことを明らかにしました。
  • そして、ベラが「生まれてこなければよかった」とまで思い詰めていたことを伝え、その言葉についにヘンリーの心が折れ、「俺たちはなんてことをしてしまったんだ」と、初めて心からの後悔の念を口にしました。

【傷ついた心に帰る場所はない】第16話をネタバレありでわかりやすく解説する

地位と良心

物語は、全ての嘘が白日の下に晒され、窮地に立たされたパールが、最後の反撃として、真実を語る家政婦のメリーに、その矛先を向ける場面から始まります。彼女は、自らの圧倒的な特権的な地位を盾に、メアリーを黙らせようとします。

「ベラにいくら貰って、そんなデタラメを並べているの?あなたの仕事は、大人しく美しい召使いでいること。嘘を吹聴して回ることじゃないわ!」。そして、解雇をちらつかせ、立場の弱いメアリーを、力で脅迫するのです。

しかし、メアリーはもはや怯みませんでした。彼女は、長年虐げられ、そして静かに去っていったベラの姿を胸に、その背筋を伸ばし、震えながらも、毅然とした態度で言い返します。「確かに、私はしがないハウスキーパーでございます。ですが、私のような者でも、何が正しくて何が間違っているかくらいの区別はつきます。私にはお嬢様のような地位はございませんが、少なくとも、良心はございます」

その言葉は、地位や富に目が眩み、人としての最も大切な心を失ってしまったブラウン家への、痛烈で、あまりにも真っ当な批判でした。そしてメリーは、パールの「買収された」という下劣な疑いを、動かぬ事実をもって、完膚なきまでに、そして静かに論破します。

「お嬢様は毎月5万ドルもの大金を自由にお使いでしたね。ですが、ベラお嬢様は、月にたったの100ドル。あの子に、私を買収できるようなお金がどこにあると仰るのですか?」

「人間」とは何か

月に100ドル以下。その衝撃的なまでの経済的虐待の事実に、ドミニクは息を呑みます。母親は「あの子に…決まった額のお小遣いを渡したことはなかった」と、悪びれる様子もなく、その事実を認めました。

メリーの静かな告発は、さらに続きます。彼女が語るベラの日常は、私たちの想像を絶するほど、あまりにも悲惨なものでした。「ベラお嬢様が、輸血で衰弱しきっている時でさえ、皆様はあの子にまともな食事一つ与えませんでした。もし、我々使用人が、皆様の食べ残しをこっそりとっておかなければ、あの子はとうに飢え死にしていたことでしょう」。

姉の命を救うために、自らの血潮を捧げた心優しき少女が、その対価として、使用人が隠した食べ物の残りカスで、かろうじて命を繋いでいた。その異常極まりない現実に、家族は返す言葉もなく、ただ立ち尽くします。メリーは、涙ながらに、彼らの根本的な罪を、厳しく断じました。

「私はこのお屋敷で長年働いてまいりました。ほんの僅かでも、人としての心がある者ならば、ベラお嬢様が耐えてこられた日々に、見て見ぬふりなどできなかったはずです。それなのに皆様は…ご家族である皆様が、あの子の苦しみに目を閉じ、あの子が捧げた全ての善意を無視し続けた。…それで、ご自分たちを『人間』と呼べるのでしょうか?」

後悔の記憶

メリーの言葉は、特に、これまで誰よりもベラを嘲笑ってきたヘンリーの心を、鋭い刃のように深く、そして容赦なく抉りました。彼の脳裏に、これまでのベラの姿が、走馬灯のように蘇ります。高価なブランド服に身を包むパールとは対照的に、制服を着ていない時の彼女は、いつもみすぼらしい、古びた服を着ていました。

ヘンリーは、それを、裕福な暮らしへの当てつけや、自分たちの気を引くための、ひねくれたパフォーマンスだと思い込み、彼女を蔑み、嘲笑い続けてきたのです。しかし、今、その本当の理由を、痛いほどに悟りました。

「あいつは…ただ、新しい服を買う金が、なかっただけなのか…」

許されざる平手打ち

そして、彼の記憶は、ある日の、最も醜悪で、最も許されざる、自らが犯した罪の光景を、鮮明に映し出します。それは、一族にとって最も重要な、年に一度の晩餐会が開かれた夜のことでした。その誰もが着飾る晴れやかな場に、ベラは、着古した、みすぼらしい格好で現れました。その姿に、家の名誉が汚されたと感じたヘンリーは、激昂し、何の躊躇もなく、大勢の前で、ベラの頬を激しく殴りつけたのです。

「ブラウン家の恥さらしめ!」

その時の、パールの冷たい視線も、鮮明に思い出されます。彼女は、ベラを庇うどころか、「もういいじゃない、ヘンリー。どうせこの子は今夜、外出しないのだから」と、冷たく言い放ち、ベラをその場に、たった一人で置き去りにしたのです。そしてヘンリーは、彼女に「お前はもう二度と外に出るな」と、理不尽な外出禁止まで言い渡したのでした。

過去の自分の、あまりにも傲慢で、あまりにも残酷な行い。そのおぞましい記憶に、ヘンリーは「なんてことだ…俺は、何を考えていたんだ…?ただ、恥をかかされたと思って…あんな風に、あいつを殴るなんて…」と、今さらながらの、しかしあまりにも深い後悔の念に、身も心も苛まれるのでした。

遅れて届いた魂の叫び

そして、家族全員の脳裏に、数日前に、この家を去る直前にベラが吐き出した、あの魂の叫びが、今になって、全く違う、そしてあまりにも重い意味を持って、鮮明に響き渡ります。「私はパールのお下がりを着て、彼女の食べ残しを食べてきた!友達もいない、人生もなかった!」。

あの時、彼らがただの子供の癇癪だと、恩知らずの戯言だと、一方的に切り捨てた言葉の数々。その一言一句が、メリーの涙の証言によって、紛れもない、あまりにも悲痛な真実であったことを、彼らはようやく、今、この瞬間になって、理解したのです

。彼女の叫びは、遅すぎるほどに、遅れてようやく、彼らの厚く、冷たい心の壁を突き破り、その奥底へと、深く、深く突き刺さるのでした。

【傷ついた心に帰る場所はない】16話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回の第16話は、家政婦メアリーの独壇場でした。彼女の、地位や権力に一切屈しない、人間としての尊厳に満ちた、静かで、しかし力強い言葉の数々は、読んでいて本当に胸が熱くなりました。彼女こそが、この物語における真のヒーローであり、正義の象徴だと思います。「私には地位はございませんが、少なくとも、良心はございます」。このセリフは、この作品を代表する、魂を揺さぶる名言の一つになるのではないでしょうか。

そして、次々と明かされる、息もできないほどの虐待の数々。特に、輸血後に食事を与えず、使用人の残り物で飢えを凌いでいたという事実は、あまりにも衝撃的で、吐き気を催すほどでした。彼らの行為は、もはや育児放棄という甘いレベルではなく、明確な、そして継続的な殺意すら感じさせます。

ヘンリーの後悔のシーンは、非常に印象的で、そして重いものでした。彼が、ベラを殴った過去の自分の行為に、心からの羞恥と後悔を感じる。もちろん、それで彼の数々の罪が許されるわけでは、決してありません。しかし、この怪物のような家族の中に、ようやく、ほんの僅かな、しかし確かな人間の心が戻ってきた、その最初の瞬間だったのかもしれません。メアリーの勇気ある告発が、彼らの、そしてこの物語を、これからどこへ導いていくのか。新たなフェーズに入ったことを、強く感じさせる回でした。

【傷ついた心に帰る場所はない】16話のネタバレまとめ

  • パールはメアリーを買収されたと罵倒するが、メアリーは「パールは月5万ドル、ベラは月100ドル」という、あまりにも衝撃的なお小遣いの格差を暴露し、その嘘を完膚なきまでに論破する。
  • さらにメアリーは、ベラが輸血後にまともな食事も与えられず、使用人たちの残り物で命を繋いでいたという、壮絶な虐待の事実を告発し、家族の人間性を問う。
  • その言葉に、ヘンリーは、これまでベラのみすぼらしい服装を嘲笑してきた自分の愚かさを悟り、深い後悔の念に苛まれる。
  • 過去に、晩餐会でベラの服装を理由に、大勢の前で彼女を激しく殴りつけたという、最も許されざる罪の記憶が蘇り、彼は自らの行いに愕然とする。
  • メアリーの涙の証言によって、ベラが叫んだ虐待の告白が、全て紛れもない真実であったことを、家族は今さらながらに理解する。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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