【傷ついた心に帰る場所はない】2話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 姉パールのための「血液提供者」として生きるベラは、人生を変えるため海兵隊への入隊を決意します。
  • 覚悟の証として自ら髪を切りますが、入隊手続きの直後、恋人であるドミニクによって捕らえられてしまいました。
  • ベラは姉への輸血のため、強制的に病院へと連行されてしまいます。
  • 病室に現れた母親から、逃げ出そうとしたことを激しく詰問され、平手打ちされるという絶望的な状況で第1話は幕を閉じました。

【傷ついた心に帰る場所はない】第2話をネタバレありでわかりやすく解説する

家族という名の檻

物語は、第1話のラストで母親からの暴力が振るわれた、冷たく無機質な病室から静かに再開します。消毒液の匂いがツンと鼻をつき、規則的な電子音が響く空間で、ベラの行動を許しがたい裏切りと見なす家族からの、心ない言葉の刃が次々と彼女の心を深く抉っていきました。

母親は、すがるような、それでいて責め立てるような目でベラを睨みつけ、「姉を死なせるつもり?」と吐き捨てます。その言葉には、ベラ自身の安否への気遣いは微塵もなく、ただただパールの命が失われることへの恐怖だけが込められていました。

続いて父親は、絶対的な支配者として君臨するかのように、脅迫めいた言葉を低い声で言い放ちます。「お前は姉と同じRH血液型を持っている唯一の存在だ。気ままに勝手に出かけることは許されない。もし彼女に何かあれば、お前は終わりだ」。これはもはや家族の会話ではありません。ベラの命がパールのスペアであることを公然と宣告する、冷酷な通告そのものです。

さらに、ヘンリーという人物に至っては「彼女を鎖で縛るべきだった」と、まるで家畜を扱うかのような、恐ろしい言葉を平然と口にします。

彼らの常軌を逸した言動に、ドミニクが「どうか声を抑えてください。私たちは病院にいます」と制止を試みますが、怒りと憎悪に燃える彼らの声は止むことがありません。この白い壁に囲まれた病室は、ベラにとって逃げ場のない、家族という名の檻そのものでした。

最後の希望、その名はドミニク

罵詈雑言の嵐が吹き荒れる地獄のような空間で、腕に繋がれた点滴から冷たい液体が流れ込むのを感じながら、ベラはベッドに横たわっていました。肉体的な痛みと、心を削られるような精神的な苦痛。その中で彼女は、唯一の鎮痛剤であるかのように、ある人物の存在にすがりつこうとしていました。それは、皮肉にも自分をこの場所に連れてきた張本人でありながら、これまで唯一優しさを与えてくれた恋人、ドミニクの存在です。

「少なくとも彼氏は私のことを大切に思ってくれている」

この心の声は、もはや希望的観測というよりも、そう信じなければ心が壊れてしまうという悲痛な祈りに近いものでした。家族という名の支配者たちとは違い、ドミニクだけは自分の味方でいてくれるはず。彼が自分をここに連れてきたのは、何かやむを得ない事情があったからに違いない。そんな儚くもろい願いが、この短い一言には凝縮されていたのです。しかし、その最後の希望の光は、あまりにも残酷な真実の記憶によって、無慈悲にかき消されることになります。

希望から絶望へ:残酷な真実の回想

ベラの心によぎった一瞬の淡い期待は、すぐに彼女自身の冷徹な内なる声によって、容赦なく打ち砕かれます。

「パールと、彼女が血を受け取れるかどうか。それだけが彼の関心事なんだ。」

ドミニクの行動原理もまた、あの家族と何ら変わりはない。彼の関心の対象はベラという人間そのものではなく、ベラを通して得られるパールのための「血」でしかないことに、彼女はとっくの昔に気づいてしまっていたのです。

「ああ、私は本当にバカみたい。誰も私のことなんて本当には気にかけてない」

この痛切な独白は、裏切られたことへの悲しみだけではなく、そんな分かりきった現実に気づかぬふりをして、微かな希望にすがり続けてきた自分自身への、深い自己嫌悪と絶望の叫びでした。そして、彼女は改めて自分の存在意義を、その胸に刻みつけられるのです。「私はこの世界にただ一つの目的でやってきた。パールを生きさせるために。私は彼女の姉妹じゃない。彼女の血液バンクだ」。

幼い頃から、唯一人間らしい優しさを見せてくれたのが、幼なじみであり恋人でもあるドミニクでした。彼だけは、自分をパールの一部としてではなく、「ベラ」という一人の人間として見てくれている。そう信じることだけが、彼女の生きる支えでした。

しかし、その信頼は脆く崩れ去る砂上の楼閣に過ぎなかったのです。「私を選んだと思っていたドミニクは、実は私を通してパールを選んでいただけだった」。自分が愛されているのではなく、愛する人のための「手段」でしかなかった。これほど残酷な真実が他にあるでしょうか。

「ご機嫌とり」という名の裏切り

ベラの脳裏に、彼女の心を完全に破壊した、決定的な裏切りの場面が鮮明に蘇ります。それは、ドミニクと姉のパールが、まるで恋人同士のように親密な雰囲気で二人きりで話している過去の光景でした。

パールは、ドミニクに対して甘えるような声を出しながら、ベラへの隠すことのない嫉妬と軽蔑をその言葉に乗せます。「ドミニク、どうしてベラと一緒なの?あなたが彼女といる姿を見るのが嫌なの」。

この独占欲に満ちた問いに対するドミニクの返答こそ、ベラの存在そのものを否定する、悪魔の囁きでした。彼は悪びれる様子も、罪悪感のかけらも見せることなく、愛おしいパールにこう囁き返したのです。

「ばか言わないでくれよ。彼女がキミのために献血を続けてくれるように、ご機嫌をとっているだけだよ」

全ての優しい言葉も、温かい眼差しも、二人で過ごした時間も、全てがパールを生かすための計算された「ご機嫌とり」だった。ベラとの恋人関係は、この世で最も貴重な血液バンクを繋ぎとめておくための、ただの狡猾な手段に過ぎなかったのです。ドミニクが本当に愛しているのはパールであり、その愛する人を守るためなら、彼は自分の幸せすら犠牲にし、ベラという一人の人間の心を弄び、踏みにじることも厭わない。この揺るぎない残酷な真実が、ベラから最後の希望の欠片すらも奪い去るのでした。

【傷ついた心に帰る場所はない】2話を読んだ感想(ネタバレあり)

第1話の衝撃的なラストから続く第2話は、まさに傷口に塩を塗り込むような、追い打ちをかける絶望の連続で、読んでいて胸が張り裂けそうでした。家族からの非人間的な扱いは、もはや悲劇を通り越して恐怖すら感じましたが、それ以上に心を深く抉られたのは、唯一の希望であったはずの恋人・ドミニクの裏切りが、これ以上ないほど明確に描かれたことです。

彼がパールに言った「ご機嫌をとっているだけだよ」というセリフは、あまりにも残酷です。人の心を、愛情を、ここまで計算高く利用し、踏みにじることができるのかと、読んでいるこちらまで怒りに震えました。ベラがドミニクに寄せていた信頼や愛情が、彼女にとって唯一の世界との繋がりであったことを思うと、この裏切りの痛みは計り知れないものだったでしょう。彼女が自分自身を「血液バンク」と自嘲するシーンは、彼女がどれほどの時間をかけて心を殺してきたのかが伝わってきて、本当に涙が出そうになりました。

家族からも、そして心から愛した人からも、ただの「道具」としてしか見られていない。この第2話で、ベラの周りには、彼女を一人の人間として見てくれる人が誰一人としていないという事実が確定してしまいました。まさに八方塞がりの状況です。海兵隊への入隊という、命がけで手に入れようとした一筋の光も断たれてしまった今、彼女はこれからどうなってしまうのでしょうか。この完全な孤立と絶望の底から、彼女は破壊者へと変貌するのか、それとも全く別の形の強さを見出すことになるのか…。物語の行く末を思うと、痛々しくて目を背けたくなりますが、同時に彼女の運命から目が離せません。

【傷ついた心に帰る場所はない】2話のネタバレまとめ

  • 病院のベッドで、ベラは父や母、ヘンリーから「パールのための道具」として激しく詰問される。
  • 絶望の中、唯一の希望として恋人ドミニクを思うが、彼もまた自分を利用しているだけだと悟っていた。
  • 過去の回想で、ドミニクが姉のパールに対し「(ベラの)ご機嫌をとっているだけ」と話していたことが明かされる。
  • ドミニクが本当に愛しているのはパールであり、ベラは完全に孤立無援であることが確定する。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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