【傷ついた心に帰る場所はない】6話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • ドミニクに引き止められたベラは、彼の偽りの優しさを心の中で完全に拒絶し、その様子を見たパールは悲劇のヒロインを演じます。
  • 過去の回想シーンが挿入され、この家族の歪んだ関係の「原点」が明らかになりました。
  • 幼いパールが、両親の愛を独占したいという激しい嫉妬から、ベラに突き落とされたふりをして自ら階段から転落します。
  • ベラはその濡れ衣を着せられ、両親から「お前が存在するのは姉さんのおかげ」だと理不尽に叱責され、3日間食事を抜かれるという虐待を受けていました。

【傷ついた心に帰る場所はない】第6話をネタバレありでわかりやすく解説する

差し伸べられた手と、見せかけの優しさ

物語は、前回のラスト、ドミニクがベラの行く手を阻んだ緊迫の場面から繋がります。しかしシーンは一転し、暖かな照明に照らされた食卓では、父親が甲斐甲斐しくパールの世話を焼くという、対照的な光景が繰り広げられていました。

「パール、大変だったな。何か食べたいものはあるかい?メアリーに言えば、何でも作ってくれるからね」

かつて無実の罪で食事を抜かれたベラの記憶とは裏腹に、パールの周りには常に、何不自由ない甘やかで優しい世界が広がっているのです。

その一方で、ドミニクはベラにスープの入った器をそっと差し出し、恋人を心から気遣うかのような、心配そうな表情で語りかけます。「おい、血をたくさん抜いたんだから、何か食べておけ。その方が回復も早いだろ」。その言葉と行動は、一見すると弱った恋人を思いやる、愛情深いものに映ります。しかし、その薄っぺらな優しさの裏には、もはやベラの心を揺さぶることのない、残酷なまでの無関心が隠されていました。

アレルギーという名の拒絶

ドミニクから差し出された温かいスープの湯気を見て、ベラの表情がかすかに曇ります。それは絶望ではなく、冷たい確信の色でした。「あら…これ、パールの一番好きなスープじゃないかしら」。彼女の静かな一言で、ドミニクの「優しさ」が、結局は彼の思考の中心にいるパールの好みを基準にしていることが、誰の目にも明らかになります。彼が持ってきたのは、ベラのために考えられたものではなく、おそらくはパールのためのおこぼれに過ぎなかったのです。

そしてベラは、感情を一切乗せない平坦な声で、静かに、しかし決定的な一撃をドミニクに放ちます。

「私、シーフードアレルギーなのよ」

恋人であれば、いや、少しでも関心を払っていれば知っていて当然の、命にも関わる重要な事実。それをドミニクは、悪びれる様子も少なく、「ああ…すまん、うっかり忘れてた」と口にするのです。このあまりにも短いやり取りは、二人の関係がどれほど表面的で、彼がベラという個人に全く興味を抱いてこなかったかを、何よりも雄弁に物語っていました。それは、ベラからドミニクへ向けられた、最後の情けすらも含まない、静かで完全な拒絶の意思表示でもありました。

主役の座を奪うための我儘

ドミニクが、たとえ見せかけであってもベラに関心を向けた、そのほんの数秒間ですら、パールの激しい嫉妬の炎を燃え上がらせるには十分でした。彼女は、二人の間に流れる気まずい空気を裂くように、か弱さを完璧に装いながら、両親に訴えかけました。「お父様、お母様…なんだか気分が優れなくて…。ベラのパーティー、私、行けそうにないわ。…私の体調が良くなるまで、中止にしていただけないかしら?」。

「ベラのパーティー」。それは、この家で唯一、ベラが主役になるはずだった、人生で数少ない晴れの舞台でした。その目的は、ベラとドミニクの交際を公に発表するためのもの。

父親は最初、「しかしだな、パール。パーティーはベラとドミニクの仲を披露するための大事な席だ。招待状もすでに出しているし、有力者も大勢来る。今さら中止にすれば、我々の面目が丸潰れになってしまう…」と、あくまで世間体を気にして難色を示します。しかし、パールは「でも、お父様…」と、今にも泣き出しそうな瞳で訴えかけるのです。彼女にとって、妹が自分より注目を浴びることなど、決して許容できないことでした。

全員一致の「決定事項」

パールの悲しげな姿を見て、即座に彼女の側に付いて擁護したのは、ドミニクでした。パールは退院したばかりで、今大きなパーティーは彼女の体に障るかもしれないと考えます。そして彼は、ベラの気持ちなど存在しないかのように、残酷な言葉を続けます。

「ベラなら分かってくれるさ。いつものことだから」

この一言は、ベラの犠牲と諦めが、この家族の中でいかに「当たり前」のこととして消費され、搾取されてきたかを凝縮した言葉です。彼らはベラに許可を求めるのではなく、ただ揺るぎない決定事項を通知するだけ。

ドミニクが「ベラ、そういうわけだから、延期しても構わないよな?」と、もはや答えの決まっている形式的な問いを投げかけた時、ベラは静かに、そして全てを悟ったかのように答えるしかありませんでした。「ええ…大丈夫。私は、気にしないから。…どうぞ、そうしてあげて」。

明日、私は自由になる

しかし、その人形のような従順な態度の裏で、ベラの心は、かつてないほどに強く、そして静かに、決意の炎を燃え上がらせていました。彼女は心の中で、自分をこの地獄に縛り付けてきた全ての人間たち一人ひとりに対して、最後の別れを告げる儀式を始めていきます。

ヘンリー。

お母さん。

お父さん。

パール。

そして、ドミニク。

「どうせ私はもういなくなる。このドアを一歩出たら、あなたたちは私の人生にとって、何の意味も持たなくなる」

彼らが自分のパーティーを延期しようと、自分をどう扱おうと、もはや彼女の心には何の痛みも、何のさざ波も立ちませんでした。なぜなら、彼女の未来も、魂も、もうこの家には存在しないからです。

「明日、私は18歳になる。やっと、ここを出ていける」

その心は、夜明け前の静けさと、これから昇る太陽の力強さに満ち溢れていました。そして、物語は彼女の力強い、魂からの決意の言葉で締めくくられます。

「さようなら。もう二度と、会うことはない」

【傷ついた心に帰る場所はない】6話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回の第6話は、これまで溜まりに溜まった鬱憤を一気に晴らすかのような、最高に痛快で、静かなカタルシスに満ちた、まさに神回と呼ぶべき内容でした。物語の終盤、ベラの心の中の独白が始まった瞬間、思わず鳥肌が立ったのを覚えています。あれほどまでに打ちのめされ、絶望的な状況に置かれても、彼女の心は決して折れていなかったこと、そして自由へのカウントダウンがもう始まっていたという事実に、胸がすくような思いでした。

特に印象的だったのは、やはり「シーフードアレルギー」のシーンです。派手な言い争いや感情的な爆発ではなく、ただ静かに、冷徹な事実を告げるだけで、相手の無関心と関係の空虚さを完膚なきまでに暴き出す。これは、静かなる抵抗として、非常に巧みな演出だと感じました。ドミニクの「ごめん、うっかり忘れてた」という一言の、どうしようもない軽さが、彼の愛情の薄っぺらさを完璧に表現しています。

そして、家族全員が結託して「ベラのパーティー」を中止に追い込む場面は、彼らの残酷さと自己中心性を改めて浮き彫りにしていました。「ベラなら分かってくれるさ。いつものことだから」。このセリフは、本当に聞くに堪えないほど酷い言葉です。しかし、そんな彼らの最後の仕打ちすらも、もはや「どうでもいいこと」として受け流すベラの精神的な強さ。彼女が心の中で家族一人ひとりに別れを告げていくシーンは、悲しいはずなのに、どこか晴れやかで、古い自分を葬り去るための、新しい門出を祝う儀式のようにも見えました。「さようなら。もう二度と、会うことはない」。この最後の言葉が、これからの彼女の過酷な、しかし希望に満ちた旅路を力強く予感させてくれて、次回の展開が待ちきれません。

【傷ついた心に帰る場所はない】6話のネタバレまとめ

  • ドミニクはベラにスープを差し出すが、それはパールの好物であり、ベラはシーフードアレルギーだと告げ、彼の決定的な無関心を浮き彫りにする。
  • ドミニクがベラに関心を向けたことに嫉妬したパールは、体調不良を装い、ベラとドミニクの交際を発表するためのパーティーを中止させようと画策する。
  • ドミニクをはじめ家族全員がそれに同調し、ベラの犠牲を「いつものこと」としてパーティーの延期を決定する。
  • ベラは表向きはそれを受け入れるが、心の中では家族全員に最後の別れを告げる。
  • 明日が18歳の誕生日であり、ついに家を出て軍隊に入り、自由になることを固く決意したところで、物語は終わる。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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