【傷ついた心に帰る場所はない】8話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 18歳の誕生日当日、ベラは完全に無視され、家族はパールのためだけの盛大な誕生パーティーを開きました。
  • ドミニクがベラにもプレゼントを渡しますが、ヘンリーに「ブランドのおまけ」だと嘲笑され、ベラの最後の希望は打ち砕かれます。
  • 嫉妬に駆られたパールは、ベラをドライブに誘い出すという罠を仕掛けました。
  • パールは「あなたは生まれてくるべきじゃなかった」という強烈な憎悪と共に、車でベラをはね、殺害しようと試みます。
  • 物語は、ベラが頭から血を流して倒れ、ドミニクが助けを呼ぶ絶望的な場面で終わりました。

【傷ついた心に帰る場所はない】第8話をネタバレありでわかりやすく解説する

生きるか死ぬかの選択

物語は、前話の衝撃的なラストから直結し、生死の境をさまようベラが運び込まれた、緊迫した病院の救急処置室から始まります。アラーム音が鳴り響き、医療スタッフが慌ただしく行き交う中、「彼女は大量に出血しています。このままではもたない。一刻も早く輸血をしなければ助かりません」。

医師の切羽詰まった声が、冷たい廊下に木霊します。しかし、事態は絶望的でした。ベラの血液型は、ストックが極端に少ない希少なRHマイナス。この危機的状況で、彼女の命を救える可能性のある血液は、ただ一つしかありませんでした。

それは、同じ血液型を持つ姉、パールからの輸血でした。良心ある一人の女性医師が、娘の命に無関心な家族の前に立ちはだかり、必死に訴えかけます。「今までベラさんが、どれだけパールさんのために血を流してきたと思ってるんです!たった一度くらい、あなたが彼女を救うことはできないんですか!」。それは、人として、そして家族として、あまりにも当然の問いかけでした。

見捨てられた命

しかし、その当然の問いかけに対する家族の答えは、人間の心を失った者たちによる、常軌を逸したものでした。母親は、まるで汚いものでも見るかのような目で医師を睨みつけ、ヒステリックに叫びます。「黙りなさい!うちのパールは、献血に耐えられるような体じゃないのよ!」。父親もまた、「万が一、パールに何かあったらどう責任を取るんだ!」と、人の命を救おうとする医師を、権力で威嚇します。医師が最後の望みをかけて「ベラさんだって、あなたの娘さんでしょう!」と食い下がっても、彼らの厚い心の壁には、その声は全く響きません。

そして、この家族の狂気と邪悪さを象徴する、最も恐ろしい言葉が、ヘンリーの口から、まるで世界の真理であるかのように、静かに放たれます。

「死ぬなら死なせておけ。どうせあいつは、パールを助けるためだけに生まれてきたんだ」

それは、ベラの命を、道端の虫けらのように扱う、悪魔の宣告でした。薄れゆく意識の狭間で、ベラはその声を聞いていました。「私の家族も、恋人も、誰一人残らず、私の命よりもパールを選んだ」。その冷たく、あまりにも残酷な事実が、彼女の魂に、決して消えない傷跡として深く刻み込まれるのでした。

目覚めの後の「偽りの優しさ」

家族に完全に見捨てられたベラ。しかし、正義感の強い一人の医師の迅速な判断と、見えざる運命の助けにより、彼女は奇跡的に一命を取り留めます。そして、消毒液の匂いがツンと鼻をつく病室で、ベラがゆっくりと重い瞼を開けると、そこには安堵と心配が入り混じったような顔で彼女を覗き込む、ドミニクの姿がありました。「ベラ、気がついたか…。医者の話だと、かなり出血したらしい。今はとにかく休め。何かあったら、僕がずっとそばにいるからな」。

その言葉は、あまりにも甘く、そしてあまりにも白々しく空虚でした。彼の言葉が終わらないうちに、電話がけたたましく鳴り、ヘンリーから「パールがまた意識を失くされた!早く3号室に来てくれ!」と伝えられると、ドミニクの関心は即座にパールへと移ります。その焦燥に駆られた姿を見て、ベラは、自分の中に残っていた最後の幻想からも、完全に解き放たれました。

「行って」

あなたは私のためにここにいたんじゃない、いつだって彼女のためだったでしょう。だから、もう優しいふりをするのはやめて、とベラは心の中でドミニクに対して失望を露わにする。

匿名の善意と軍曹の疑念

ドミニクが病室を飛び出していった後、ベラは入ってきた医師に、自分を救った血液の提供者が誰なのかを尋ねます。医師は、気まずそうに、しかし真実を語り始めました。「本当は言うべきことではないのですが…。手術の前に、ご家族には何度もお願いしたんです。でも、誰もパールさんの献血を許可なさらなくて…。ですが幸運なことに、我々の…」。

家族は、やはり自分を本気で見殺しにしようとしていた。その事実を再確認すると同時に、医師の中に一人適合する人がおり、自分の命を繋ぎとめてくれたことを知ります。ベラは、その見知らぬ善意に、心からの感謝を伝えました。

決意の通報

ベラは電話をかけます。相手は、ジェミー軍曹でした。

「事故のことは聞いた。だが君はまだ我々の一員だ」

その力強い言葉は、天涯孤独となったベラの心に、一条の光のように温かく染み渡ります。しかし、百戦錬磨の軍人である彼女は、鋭い問いを投げかけることを忘れませんでした。「だがベラ、正直に答えてほしい。あれは…本当にただの“事故”だったのか?」。

ジェミー軍曹の、全てを見透かすような言葉は、ベラの心に最後の覚悟を決めさせました。もはや、彼女は虐げられるだけの無力な被害者ではありません。死の淵から生還した彼女は、全てを奪い去ろうとした者たちに、真正面から立ち向かう強さを手に入れていたのです。

「ううん、誰かが私を意図的に傷つけようとした。でも、もう黙ってはいない」

彼女は静かに電話を手に取り、まだ包帯の巻かれた、しかし震えのない指で「911」をダイヤルします。そして、はっきりと、微塵も揺るぎない声で、オペレーターに告げました。

「はい、事件の通報です。姉に…車ではねられました。これは、殺人未遂です」

それは、偽りに満ちた家族との完全な決別を告げる、高らかな反撃の狼煙でした。

【傷ついた心に帰る場所はない】8話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回の第8話は、読んでいるこちらの感情が、怒りと絶望、そして最後には希望と興奮へと、ジェットコースターのように目まぐるしく揺さぶられる、とてつもない傑作回でした。特に、病院での家族のやり取りには、怒りで体が震えるほどでした。ヘンリーが放った「死ぬなら死なせておけ」という一言は、創作物の中でも類を見ないほど、邪悪で胸糞の悪いセリフだと思います。彼らにとって、ベラは本当に、命ある人間ですらなかったのだと、改めて突きつけられました。

しかし、そんな深い絶望の中にも、確かな希望の光がいくつも見えたのが、今回の物語の素晴らしいところです。人としての正義を貫こうとする医師、顔も知らない匿名の血液提供者、そして全てを察し、味方でいてくれるジェミー軍曹。ベラは、血の繋がった「家族」という名の敵を失い、血の繋がらない、しかし本当の意味での「仲間」や「善意」を得つつあるのだと感じました。その対比が、今後の物語の大きな鍵となりそうです。

そして、ラストの911への通報シーン。これほどのカタルシスがあるでしょうか。散々虐げられ、声すら上げることのできなかった少女が、自らの意志で、最も重い罪を、最も公的な機関に告発する。これは、彼女が「被害者」であることをやめ、「戦う者」へと劇的に生まれ変わった、魂の覚醒の瞬間です。パールによる殺人未遂は、ベラを肉体的に殺そうとしましたが、皮肉にも、彼女の内に眠っていた本当の強さと尊厳を呼び覚ましたのです。今後の展開が、本当の意味で楽しみになりました。

【傷ついた心に帰る場所はない】8話のネタバレまとめ

  • 車にはねられ瀕死のベラは、姉パールからの輸血が必要となるが、家族は「パールが危険だ」という理由でそれを拒否し、ベラを見殺しにしようとする。
  • しかし、匿名のドナーからの輸ed血により、ベラは奇跡的に一命を取り留める。
  • 目覚めたベラは、ドミニクの偽りの優しさを完全に拒絶し、家族の裏切りを確信する。
  • ジェミー軍曹からの電話に勇気づけられたベラは、ついに覚悟を決める。
  • 物語は、ベラが自ら911に通報し、姉のパールを殺人未遂で告発する場面で終わる。

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ABOUT ME
コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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