【兄だったモノ】61話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

- 兄の思い出の地を巡る旅の二番目の目的地として、聖と鹿ノ子は宮島を訪れた。
- フェリーの上で、再び謎の少年「ゴンちゃん」が現れるが、すぐに不気味な言葉を残して消え去った。
- 宮島は島全体が「神域」であり、霊的な存在が入り込みにくい場所であることが語られた。
- 鹿ノ子は、聖の過去のすべてを受け入れる覚悟を決め、彼の半生を「物語」として聞かせてほしいと願った。
【兄だったモノ】第61話をネタバレありでわかりやすく解説する
「中眞聖という人間を それに至った物語を 教えてください」――。鹿ノ子の真摯な願いを受け、聖はついに、自らの重い過去と向き合うことを決意します。神の島・宮島で過ごす一夜。そこで語られるのは、彼の人生を決定づけた、悲劇の始まりでした。
死にたい理由、生きたい理由
突然現れた少女
物語は、聖のモノローグから始まります。ずっと死にたいと願っていた。しかし、それと同じくらい、死ななくてもいい理由を探していた。「死ぬな」と言ってくれた人がいて、それが嬉しかった。許されたのだと思った。しかし、その人はあっけなく死んでしまった…。
途方に暮れていた聖の前に、ある日突然、兄に「よく似た少女」が現れます。それは、彼にとって新たな希望となるのか、それとも無意味な八つ当たりに巻き込むだけの存在となるのか。 場面は、学校へと戻った鹿ノ子の日常へと移ります。彼女は、友人との何気ない会話を交わしながらも、心ここにあらずといった様子です。
井伏鱒二の『山椒魚』
宮島でのデートを続ける二人。水族館を訪れた聖は、ふと、井伏鱒二の小説『山椒魚』の話を思い出します。岩屋に閉じ込められた山椒魚が、同じく迷い込んできた蛙を閉じ込めてしまう物語。 「そんで喧嘩しながら二人で暮らして」「結局あの蛙 最後はどうなったんだったけ?」。 その問いは、まるで、兄・騎一郎に囚われ、共に過ごした自らの過去をなぞらえているかのようでした。
告白の夜
その夜、旅館の一室で、聖は鹿ノ子の部屋を訪れます。 「だって俺の話を聞いてくれるんじゃろ?」。 しかし、彼は「昔の話をすると 多分酷い顔になるけえ それを鹿ノ子ちゃんに見られとうない」と、顔を見られることを拒みました。 鹿ノ子は、そんな彼の前に静かに座ります。あなたは、あなたの全てを知りたいと言ったじゃないですか、と。その言葉に、聖は観念したかのように、静かに自らの過去を語り始めるのでした。 彼の瞳には、鹿ノ子ではない、もういないはずの男の姿が映っているかのようでした。
【兄だったモノ】61話を読んだ感想(ネタバレあり)
今回は、聖さんの告白が始まる直前の、静かな緊張感に満ちた回でした。 冒頭のモノローグは、これまでの聖さんの心情を端的に表していて、胸が締め付けられました。「死ななくてもいい理由を探していた」という言葉が、あまりにも切ないです。彼にとって、騎一郎の「死ぬな」という言葉は、唯一の救いだったのでしょう。
水族館での『山椒魚』の引用も、非常に文学的で、この作品らしい巧みな演出だと感じました。山椒魚と蛙の関係は、まさに聖さんと騎一郎の関係そのもの。外に出られない閉塞感と、憎み合いながらも離れられない共依存。聖さんが、自分の状況を客観的に、しかしどこか諦めたように語る姿が、痛々しかったです。 そして、最後の告白のシーン。自分の醜い顔を見られたくない、という彼の最後の抵抗が、これから語られる話の壮絶さを物語っています。彼の瞳に映る、もういない男の姿。鹿ノ子ちゃんは、彼の物語を、最後まで受け止めることができるのでしょうか。息を呑むようなラストでした。
【兄だったモノ】61話のネタバレまとめ
- 聖のモノローグで、彼がずっと死にたいと願いつつも、生きる理由を探していたことが明かされた。
- 宮島の水族館で、聖は井伏鱒二の『山椒魚』を引用し、自らと騎一郎の共依存的な関係をなぞらえた。
- その夜、旅館の一室で、聖はついに自らの過去を鹿ノ子に語ることを決意する。
- 彼は、過去を語る自分の「酷い顔」を鹿ノ子に見られたくないと、顔を隠した。
- 彼の瞳には、鹿ノ子ではない、別の誰かの姿が映っているかのように見えた。
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