【兄だったモノ】62話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

- 聖のモノローグで、彼がずっと死にたいと願いつつも、生きる理由を探していたことが明かされた。
- 宮島の水族館で、聖は井伏鱒二の『山椒魚』を引用し、自らと騎一郎の共依存的な関係をなぞらえた。
- その夜、旅館の一室で、聖はついに自らの過去を鹿ノ子に語ることを決意する。
- 彼は、過去を語る自分の「酷い顔」を鹿ノ子に見られたくないと、顔を隠した。
【兄だったモノ】第62話をネタバレありでわかりやすく解説する
「貴方の全てを知りたい」――。鹿ノ子の願いに応え、聖はついに、自らの人生を狂わせた「物語」を語り始めます。それは、神の島で語るにはあまりにも痛ましく、おぞらしい、一人の少年の悲劇でした。
聖母に対するパンテラの罪
蟷螂の男
聖の物語は、彼が5歳だった頃、早くに両親を事故で亡くし、母方の祖母に引き取られたところから始まります。 ある春の日、母の弟、つまり聖にとっての叔父が、彼らの家にやって来ました。草臥れた顔で笑うその男を、聖の記憶は、一匹の「蟷螂」として描きます。 叔父は、蝶を追いかける幼い聖を「聖くん」と呼び、お菓子をあげると言って、家の奥へと誘い込むのでした。
加害者にされた被害者
おぞましい「こと」をされたのは、わかった。しかし、幼い聖にとって、それは悪夢としか認識できない出来事でした。 彼にとって本当の地獄は、その後に訪れます。唯一の肉親であったはずの祖母は、孫が受けた虐待に気づいていながら、彼を助けようとはしませんでした。 「まさか聖が誘惑したとかじゃあないわよねえ…」。 祖母は、聖が男の子であったことで安堵し、「世間様に迷惑かけるよりマシよね…」と、見て見ぬふりを決め込みます。 いつの間にか、「私」は被害者から加害者にされていた。誰にも相談できず、カウンセリングも受けさせてもらえず、「私」はゆっくりと心を壊していったのです。
【兄だったモノ】62話を読んだ感想(ネタバレあり)
今回は、息をすることすら忘れるほど、重く、苦しい回でした。聖さんの過去が、これほどまでに凄惨なものだったとは…。 おとぎ話のような美しい文体で語られる、あまりにも醜い現実。その対比が、彼の受けた傷の深さを、より一層際立たせていました。叔父を「蟷螂」として描く比喩表現は、捕食者としての彼の本質を見事に捉えていて、天才的だと感じました。
しかし、何よりも恐ろしかったのは、お祖母さんの反応です。「聖が誘惑したのでは」と疑い、孫が男の子であったことに安堵する。あの場面は、人間の持つ身勝手さ、醜さの極致でした。唯一の味方であるはずの肉親に裏切られ、被害者であるにも関わらず「罪人」の烙印を押されてしまう。聖さんが、なぜあれほどまでに歪んでしまったのか、その理由が痛いほど伝わってきました。 彼がこれまで行ってきた「復讐」は、この時受けた仕打ちの、絶望的な反復だったのかもしれません。あまりにも悲しい物語の始まりに、ただただ言葉を失いました。
【兄だったモノ】62話のネタバレまとめ
- 聖は、鹿ノ子に自らの壮絶な過去を語り始めた。
- 彼は、5歳の時に両親を亡くし、母方の祖母に引き取られた。
- その後、家に来た叔父から、常習的に性的虐待を受けていた。
- 祖母は、その事実に気づきながらも見て見ぬふりをし、あろうことか聖が叔父を誘惑したのだと、彼を「加害者」として扱った。
- 誰にも助けを求められず、罪人の烙印を押された聖は、ゆっくりと心を壊していった。
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