【兄だったモノ】72話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

- 聖は、自らが兄・騎一郎を家に縛り付け、最期は彼の願いを聞き入れて命を絶ったという、壮絶な過去を告白した。
- 鹿ノ子に対しては、自分と同じ「愛に飢えた子ども」だと気づき、彼女を自分のような人間から遠ざけるために、わざと「嫌われよう」としていたことを明かした。
- 全ての告白を聞き、あまりにも重い真実を突きつけられた鹿ノ子は、衝動的にガラスの破片で聖に襲い掛かった。
【兄だったモノ】第72話をネタバレありでわかりやすく解説する
「健全な恋じゃない」――。鬼頭虎次郎から投げかけられた、正論という名の刃。しかし、鹿ノ子の決意は、もはや誰にも止められません。彼女は、自らの恋を「横恋慕」だと認めた上で、愛する人を救うため、最後の戦いへと身を投じます。
お姫様の魔法は解けるはずよ!
横恋慕上等!
物語は、鹿ノ子を止めようとする虎次郎との対峙から始まります。「健全な恋じゃない」「間違っている」。彼の言葉に、鹿ノ子もまた、自らの恋が「恋に恋してる」「横恋慕」であることを認めます。 「上等よ!」。 しかし、彼女は怯みません。なんのためにこの旅についてきたのか。王子様じゃなくたって、お姫様の魔法は解けるはず。彼女は、自らが聖を救うのだと、力強く宣言し、彼の元へと走り出すのでした。
「生きててほしいんです!」
「聖さん!」。鹿ノ子の悲痛な叫びが、宮島の旅館に響き渡ります。「大馬鹿!」「死ぬなんて絶対に許さない!」。 彼女は、泣きながら聖の胸ぐらを掴み、自らの本心をぶつけます。 「聖さんが私のこと嫌いでもいい」「お兄ちゃんのこど好きなままでいい」。 たとえ、その想いが自分の側になくても、ただ、「生きててほしいんです!」。 そのあまりにもまっすぐな愛の告白に、聖はただ呆然とするしかありませんでした。
『山椒魚』の結末
鹿ノ子の告白に、兄の呪いが「驚いたぁ」と姿を現します。そして、聖に「殺されてもいいって思うくらいに嬉しかった」と、鹿ノ子の愛を受け入れるよう囁きました。 しかし、聖は静かに首を振ります。彼は、呪いとなった兄に、そして鹿ノ子に、ずっと伝えたかった物語の結末を語り始めるのでした。
井伏鱒二の小説『山椒魚』。その初稿の最後を、知っているか? 岩屋に閉じ込められた蛙は、最後にこう言うのです。 「お前のことを、今でもべつにおこってはいないんだ」。 つまりは、そういうことだよ――。 その言葉と共に、聖の背後から、巨大な山椒魚の姿をした呪いが現れ、中から騎一郎の魂を喰らおうとするのでした。
【兄だったモノ】72話を読んだ感想(ネタバレあり)
今回は、鹿ノ子ちゃんの覚悟と、聖さんの最後の告白が胸を打つ、感動的な回でした。 虎次郎に対して「上等よ!」と啖呵を切る鹿ノ子ちゃん、本当にかっこよかったです。自分の恋が、決して綺麗事だけではないと理解した上で、それでも聖を救うことを諦めない。彼女の強さに、心の底からエールを送りたくなりました。「生きててほしい」という叫びは、彼女の魂からの祈りそのものでしたね。
そして、聖さんが語った『山椒魚』の結末。「別に怒ってはいないんだ」。それは、騎一郎に対する、聖さんなりの最大限の赦しであり、そして別れの言葉だったのでしょう。自分を縛り付けてしまった罪を、彼はこの物語を引用することで、ようやく乗り越えようとしていたのかもしれません。
最後の、山椒魚が騎一郎を喰らうシーンは、圧巻の一言でした。これは、聖さんが自らの呪いを完全に受け入れ、過去を喰らい尽くし、新たな一歩を踏み出そうとしている象徴的なシーンなのではないでしょうか。あまりにも美しく、そして残酷なカタルシスに、ただただ打ちのめされました。
【兄だったモノ】72話のネタバレまとめ
- 鬼頭虎次郎に「健全な恋ではない」と指摘された鹿ノ子は、それを認めた上で、自らの手で聖を救うことを改めて決意する。
- 鹿ノ子は聖の元へ駆けつけ、「私のこと嫌いでもいい」「生きててほしい」と、涙ながらに本心をぶつけた。
- その告白を受け、聖は井伏鱒二の『山椒魚』の初稿の結末を語る。それは、閉じ込められた蛙が、山椒魚を「怒ってはいない」と赦す、というものだった。
- 聖が物語の結末を語り終えると同時に、彼の背後から巨大な山椒魚の姿をした呪いが現れ、騎一郎の魂を喰らおうとした。
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