【兄だったモノ】81話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

- 広島へ向かう新幹線の中で、鹿ノ子たちは兄・騎一郎が遺した日記を読み進めます。
- 日記には、妹の鹿ノ子への純粋な愛情と、恋人である聖への歪んだ支配欲、そして自身の暴力性に対する苦悩が赤裸々に綴られていました。
- 彼は聖に自分自身を重ね合わせ、彼を支配することで自らの孤独を埋めようとしていたことが明らかになります。
- そして、死を目前にした騎一郎は、聖に自分を殺させることで、永遠に彼の心に残り続けようと画策していたことが判明しました。彼の死は、聖を共犯者にするために仕組まれた「自殺」だったのです。
【兄だったモノ】第81話をネタバレありでわかりやすく解説する
物語の全ての謎を解き明かすため、始まりの地・広島へと向かう新幹線の中、鹿ノ子と西迫は静かに言葉を交わしていました。前話で明らかになった兄・騎一郎の日記の衝撃的な内容を受け、一行はそれぞれの想いを胸に、最終決戦の地を目指します。
西迫が語る聖との再会
鹿ノ子が兄の真実について新たな情報を求めても、西迫は「話せることって言ったってな…」「もう新しい情報はねえよ」と静かに首を振ります。編集者の犬上に刺される前に鹿ノ子たちに話したことが、彼の知る全てでした。
彼は、上京した際に偶然聖を見つけた時のことを思い出します。楽しそうに、屈託のない笑顔で歩いている聖の姿を見て、説明のできない激情に駆られ、「カッとなった」と西迫は語ります。そして、思わず聖に詰め寄ってしまったのでした。 それが、あの悲劇的な事件の始まりだったのです。
兄の愛に矛盾を感じる鹿ノ子
西迫の話を聞きながら、鹿ノ子の心には新たな疑問が生まれていました。以前、鬼頭虎次郎が聖の名前を出した際に兄が激昂したという話を聞いています。また、聖自身からも「お兄ちゃんは私のことを愛してた」と聞かされていました。
しかし、もし兄が鹿ノ子のことを恋愛的な意味で本当に愛していたのであれば、恋人である聖のことで嫉妬したり、怒ったりするのは「変じゃない?」と、鹿ノ子は論理的な矛盾を指摘します。 日記に書かれていた兄の言葉と、生前の彼の行動との間に、埋めがたい齟齬が存在していたのです。
西迫の聖への未練と告白
鹿ノ子の鋭い指摘に対し、西迫は「知らん」とぶっきらぼうに答えるしかありません。ただ、彼もまた、日記に書かれていた騎一郎の言葉が「本心じゃない気がする」と感じていました。だからこそ、その偽りを「暴いてやりたい」という衝動に駆られているのです。
そんな中、鹿ノ子は西迫の心に深く踏み込む質問をします。「まだ愛してる?」「聖さんのこと」と。 その問いに、西迫は観念したように、自らの本心を吐露しました。
「聖に見捨てられて腹が立ったのは」「結局俺があいつをどうしようもなく好きだったからだ」
彼の暴力的な行動の根源にあったのは、あまりにも人間的で、そして報われることのなかった聖への愛情だったのでした。
救いと裏切り、西迫の揺れる想い
西迫の脳裏には、過去の聖の姿が鮮明に蘇ります。後光の差す天使のように美しい聖。たとえ聖が自分のことを少しも愛していなかったとしても 、彼に救われたことは紛れもない事実でした。それが聖にとって、幼少期のトラウマに対する「復讐だったとしても」です。
西迫の告白を聞いた鹿ノ子は、「難儀ね」と静かにつぶやきます。それは、西迫へ向けた言葉であると同時に、複雑な感情を抱える自分自身に向けた言葉でもありました。「あんたも」「私も」と、二人は歪な形で互いの痛みを共有するのでした。
広島到着とカンナの異変
感傷的な空気を破るように、車内に広島への到着を告げるアナウンスが響き渡ります。その時、鹿ノ子は、一行と合流していたカンナが少し前からトイレに行ったきり、まだ戻ってきていないことに気がつきました。
トイレのランプは消えており、使用中ではないことを示しています。鹿ノ子の胸に、「まさか…」という不吉な予感が広がっていきました。
不穏な再会、カンナの笑顔の裏に潜むもの
電車が広島駅のホームに滑り込むと、そこには何事もなかったかのようにカンナが待っていました。「ごめんごめん」「遅くなっちゃった」と明るく謝る彼女は、ただ化粧を直していただけだと言います。
一行は急いで電車を降りますが、その瞬間、鹿ノ子の目に映ったカンナの姿は、いつもの頼れる彼女ではありませんでした。その顔は、まるで悪意の塊のように歪み、巨大な口を裂かんばかりに広げて笑う、異形の化け物そのものだったのです。物語の始まりの地・広島で、一行を待ち受けていたのは、最も信頼していたはずの仲間の、不気味な変貌でした。
【兄だったモノ】81話を読んだ感想(ネタバレあり)
今回は、これまで絶対的な悪役として描かれてきた西迫の、人間的な弱さが描かれた回でした。彼の聖への仕打ちが、全て歪んだ愛情の裏返しだったという告白には、胸が締め付けられる思いです。許されることではありませんが、彼もまた愛し方が分からなかっただけの、一人の哀れな人間だったのかもしれません。
そして、鹿ノ子が抱く兄への愛の矛盾。兄の日記を読んでもなお、その言葉を鵜呑みにせず、自らの目で見た事実と照らし合わせて真実を見極めようとする彼女の強さに、大きな成長を感じました。
しかし、何と言っても衝撃的だったのは、ラストのカンナの変貌です。これまでの物語で、鹿ノ子にとって唯一の理解者であり、頼れる協力者だった彼女が、なぜあのような恐ろしい姿になってしまったのでしょうか。広島という土地が、彼女に何か影響を与えたのか。それとも、彼女自身が元々何かを隠していたのか。全ての謎が解き明かされるはずの広島で、新たな、そして最も根源的な恐怖が幕を開けたように感じます。次回の展開が恐ろしくも、待ち遠しくて仕方がありません。
【兄だったモノ】81話のネタバレまとめ
- 広島へ向かう新幹線の中で、西迫は聖への未だ消えない愛情を鹿ノ子に告白します。
- 鹿ノ子は、兄・騎一郎が生前見せた行動と、日記に書かれた心情との間に矛盾を感じ、彼の本心に疑問を抱き始めます。
- 広島駅到着間際、カンナがトイレからなかなか戻ってこないという不穏な出来事が起こりました。
- 駅のホームで一行と合流したカンナでしたが、鹿ノ子の目には、その顔が不気味な化け物のように歪んで見えていました。
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