【兄だったモノ】9.5話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

- カンナの回想から、生前の騎一郎が妹思いの好青年だったこと、そして聖が「毒を持つ鈴蘭」と評されていたことが語られる。
- 聖は、兄の亡霊が自分を「監視する」ためにこの家にいるとカンナに明かす。
- 亡霊は聖の体を乗っ取り、カンナと直接会話をする。
- カンナは、聖自身が自分に取り憑いている亡霊の存在に全く気付いていない、という恐ろしい事実にたどり着く。
- 事態を重く見たカンナは、専門家と思われる第三者に電話をかけ、助けを求める。
【兄だったモノ】第9.5話をネタバレありでわかりやすく解説する
今回は、本編の時系列から少し遡り、兄・騎一郎が生きていた頃の、聖との記憶を描く特別編です。穏やかで切ない過去の風景が、現在の悲劇をより一層際立たせます。
生前の兄との記憶
真冬の海
物語は、騎一郎が亡くなったのが春の終わりだった、というモノローグから始まります 。 場面は生前の二人、騎一郎と聖の日常へと移ります。朝4時に叩き起こされ、騎一郎に真冬の海へと無理やり連れてこられた聖 。文句を言う聖に対し、騎一郎は「思い出がほしいんだ」と無邪気に笑います 。 「夏でも冬でもいいだろ?」 「むしろ冬のほうが印象に残るだろ?」 彼の強引さは、残り少ない時間の中で、一つでも多くの記憶を刻みつけようとする焦りのようにも見えました。
妹・鹿ノ子への愛情
騎一郎は、幼い頃に妹の鹿ノ子を二人きりで海へ連れて行った思い出を、愛おしそうに語り始めます 。キラキラと光る海面を指差し、「あそこに乙姫様がいるよ」と教えると、鹿ノ子は目を輝かせて喜んだといいます 。 「あいつは可愛い」と、妹への深い愛情を隠さない騎一郎 。彼は、もう一度、今度は聖も一緒に、三人で海を見たかったのでした 。
叶わなかった約束
三人で、海へ
冬の冷たい風に吹かれながら、騎一郎は聖を力強く抱きしめます。 「しっかり食べて寝て 元気になって また鹿ノ子ちゃんを海に連れて行ってあげたらええ」 それは、自分の死期を悟った男が、遺される恋人と妹の未来を託す、悲しい約束でした。彼は、**「俺と 鹿ノ子と 聖の 三人がいい」**と呟きます 。
人魚ではないもの
時は現在に戻り、一人仕事部屋で原稿に向かう聖 。 彼は、冬の海辺で交わした「ありえもしないおとぎ話」の約束を思い出していました 。 ふと、本で読んだ人魚の肉を食べた女の物語が頭をよぎります 。来年の夏、三人で海を見に行こうと約束したけれど、もうその約束が叶うことはありません 。 モノローグが静かに響きます。 「海にいるのは、あれは人魚ではないのです」「あれは、浪ばかり」 頭のどこかでは、奇跡など起こらないと知りながらも、彼は叶わぬ約束を信じていたのでした 。
【兄だったモノ】9.5話を読んだ感想(ネタバレあり)
今回は、涙なしには読めないエピソードでした。これまで描かれてきた、嫉妬深く恐ろしい亡霊としての兄ではなく、一人の人間としての、愛情深い騎一郎の姿がそこにはありました。 自分の死期を悟りながらも、遺される聖さんと鹿ノ子ちゃんの未来を案じ、「三人で」と願う彼の姿は、あまりにも切ないです。こんなにも深く二人を愛していた彼が、なぜあのような恐ろしい亡霊になってしまったのか。そのギャップに、胸が締め付けられます。
このエピソードがあることで、物語全体の悲劇性がより一層深まったように感じます。単なるホラーではなく、愛が歪んでしまった悲しい物語なのだと、改めて思い知らされました。 聖さんが思い出した「人魚」の物語も、非常に象徴的です。叶わぬ約束、失われた未来、そして残された者の癒えない悲しみ。美しい冬の海の情景と相まって、心に深く残る、詩のような回でした。
【兄だったモノ】9.5話のネタバレまとめ
- このエピソードは、騎一郎が生きていた頃の、聖との思い出を描いた過去の物語です 。
- 騎一郎は病気の身を押して聖を真冬の海へ連れて行き、そこで妹の鹿ノ子との思い出を語ります 。
- 彼は、自分と鹿ノ子、そして聖の「三人で」一緒にいたいと願っていました 。
- 騎一郎は、来年の夏に三人で海へ行こうと約束しますが、その約束が果たされることはありませんでした 。
- 一人遺された聖は、叶わなかった約束を思い出し、悲しい人魚の物語を想起するのでした 。
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