【問題な王子様】31話ネタバレ完全版

【問題な王子様】31話をネタバレありで解説する
ビョルン王子との予期せぬボート遊び。エルナの心は、不安と屈辱、そしてほんの少しの好奇心で揺れ動いていました。第31話では、このボートの上で交わされる二人のぎこちない会話と、エルナの純粋な一面に触れたビョルン王子の心にかすかな変化が訪れる様子が描かれます。
美しい夜景とエルナの戸惑い
「借金は力が強い」――エルナは、ビョルン王子と共にボートに乗り込んだ瞬間、その現実を改めて痛感していました。祖母が見たら卒倒してしまいそうな、この放蕩な状況。そして、自分をこのような状況に追い込んだビョルン王子への怒り。しかし、色とりどりの灯籠が川面を照らし、祭りの賑わいが遠くに聞こえる幻想的な夜景は、エルナの心を一時的に捉えます。生まれて初めて見るその華やかな光景に、彼女は思わず目を奪われるのでした。
ボートを巧みに操るビョルン王子。エルナは、そんな彼の横顔を盗み見ながらも、どう接していいか分からず戸惑うばかり。「怖いですか?」と尋ねるビョルンに、「全然」と強がって答えるエルナでしたが、その声は震えていました。そんなエルナの様子を、ビョルンは面白そうに眺めています。
ぎこちない会話とエルナの「話術」
息詰まるような沈黙に耐えかねたエルナは、かつて読んだ話術書の教えを思い出し、会話の糸口を探ろうとします。「王子はボートを漕ぐのがお上手ですね。王太子殿下のように、選手になってもいいと思うほどです」と、何とか褒め言葉を絞り出すエルナ。ビョルンは「そうですか?」と素っ気なくも、どこか会話を続ける意思があるかのような返事をします。
気を良くしたエルナは、さらに「王子もボートがお好きなのですね?」と尋ねますが、ビョルンの答えは「動物のような奴らに苛まれるのは汗のにおいがして気持ち悪い」という、エルナの予想をはるかに超えたものでした。続けて、エルナは彼の乗馬の腕前や競馬での活躍について触れますが、ビョルンは「馬は可愛いから」「人が乗る馬を見物するのは興味がない」などと、やはりエルナの期待とは異なる、彼らしい皮肉と本音が入り混じった答えを返すのでした。
ビョルンは、エルナが自分のことを事前に調べていたこと(彼曰く「裏調査」)に気づき、それをからかうように指摘します。エルナは顔を赤らめ、必死に弁解しようとしますが、その慌てふためく姿は、ビョルンにとって格好の遊び相手に見えたのかもしれません。
バフォードの思い出とエルナの輝く笑顔
ビョルンに「ハルディさんの話をしてください。バフォードでもこのような祭りが開かれるのですか?」と促されたエルナは、堰を切ったように故郷の思い出を語り始めます。「直接見たことはないので、はっきりとは言えませんが、こんなに大きくて派手な祭りではありません」と前置きしつつも、彼女の表情は生き生きと輝き出します。
家の庭の大きなトネリコの木の下で楽しんだ晩餐、祖母が毎年作ってくれたバラ酒、そして16歳の誕生日に初めてそのバラ酒を飲ませてもらった時の思い出…。美しい色に魅了されて飲んだものの、その味にがっかりしたこと、しかし、その香りのように甘かった時間のことなどを、エルナはまるで宝物のように語るのでした。その純粋で楽しげな表情は、これまでの社交界で見せていた怯えた姿とは全く異なり、ビョルンは「ハルディの名前を持つ淑女が自分をバーデンだと定める理由」が、ぼんやりと分かるような気がしました。
「美しい祭りのようですね」というビョルンの言葉に、エルナは心の底から嬉しそうな、花が咲くような笑顔を見せます。その時、遠くで花火が上がり始めました。エルナの美しい笑顔と、夜空を彩る華やかな花火。それは、まるで二人の未来を暗示するかのような、幻想的な光景でした。
第31話は、エルナの純粋な一面と、彼女が語る温かい思い出に触れたことで、ビョルン王子の心に微かな変化が芽生え始める様子を描き出しています。このボートの上のひとときと、美しい花火は、二人の関係にどのような影響を与えていくのでしょうか。そして、この後エルナの「夜逃げ計画」はどうなるのでしょうか。物語は、静かな感動と新たな展開への期待を込めて、次へと続いていきます。
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