【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】16話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 再入院した千夏は、家族の目の前で身体拘束を受け、カテーテルを挿入されるなど尊厳を奪われました 。
  • 10ヶ月ぶりに始まった生理が、皮肉にも彼女に一晩の精神的な平穏をもたらしました 。
  • 拘束下での生活は過酷を極め、ナースコールも押せず、時間感覚さえ失っていきました 。
  • 拘束具に開いた無数の「穴」に気づき、千夏はパニックに陥ってしまいました 。

【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】第16話をネタバレありでわかりやすく解説する

前回、拘束具の「穴」という予期せぬ恐怖に襲われ、パニックに陥った主人公・千夏。第16話では、身体拘束がもたらす肉体的・精神的苦痛のリアルと、それに対する医療従事者のあまりにも冷淡な現実が描かれます。助けを求める彼女の声は、無慈悲な沈黙の中に吸い込まれていきます。

この記事では、「妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~」第16話のあらすじを、ネタバレありで徹底的に解説していきます。

身体拘束―それは命を守るための「拷問」

身体拘束は、本来ベッドからの転落防止や、患者本人や他の人間への危害を防ぐなど、命と安全を守るための処置です 。しかし、その現実は、千夏にとって耐え難い苦痛以外の何物でもありませんでした。

24時間に及ぶ拘束

千夏が施された手足と胴体を固定する「三点拘束」は、24時間にも及びました 。その結果、彼女の体はきしみ、血流が滞って全身がむくんでいきます 。寝返りすら打てない体勢は、背中に激しい痛みをもたらしました

届かない声、無視される苦痛

「背中いたぁ…」、「看護師さぁぁん!」、「おむつ替えてよおーっ」。 千夏は「たぶん私うるさいくらいに叫んで…」 いたにもかかわらず、看護師はなかなか現れません。「みんな忙しくて手が空いてる人がいなかったのかなぁ」 と自分を納得させようとしますが、その放置は、社会にも医療にも見放された人間を縛り上げておくだけの、まるで**「拷問」のようにも思えた**のでした

尊厳を奪われ、心まで蝕まれる

肉体的な苦痛以上に彼女を蝕んだのは、人としての尊厳を奪われることでした。

「殺しておばさん」の叫び

隣の個室からは、あの老婆の叫び声が聞こえ続けます。「おむつ替えてよおぉ!!」「なんで無視するんだよぉー!」 。それは、今まさに千夏が体験している苦しみと全く同じでした。このままでは、自分も彼女のようになってしまう。そんな恐怖が千夏の心を支配します。

1週間ぶりのまともな睡眠

地獄のような一夜が明けた時、千夏は自分が眠っていたことに気づきます 。それは、実に1週間ぶりの、まともな睡眠でした 。

一時的に解かれる拘束と、ささやかな願い

朝、若い看護師が拘束を一時的に解きに来てくれました 。その優しさに触れた千夏は、勇気を振り絞って「この形状が怖くて…」「タオルとかなんでも構わないので見えないようにしてほしいんです」と、拘束具に目隠しをしてほしいとお願いしました

孤独という名の監獄

しかし、そのささやかな願いすら、この場所では届きませんでした。

閉ざされた空間での孤独

食事を終えると、千夏は再び拘束されます 。病室は、耳が痛くなるほどの静けさに包まれました 。人の気配が全くしない閉鎖病棟の、さらに閉ざされた空間での孤独は、彼女に耐え難い「みじめさ」を募らせていきます

届かないナースコール

千夏は、以前優しく接してくれた看護師の延岡さんに会いたいと願います 。しかし、その願いは届きません。昼食が運ばれてきても、夕方になっても、彼女は現れないのです 。千夏は「見捨てないでよっ!!」と心の中で叫び続けました

「オオカミ少年」という烙印

「忙しいのも、患者の要求すべてに応えられないのもわかる」 。それでも、この助けを求める声が「命に関わる叫びである可能性も大いにあるはず」なのに、なぜ誰も来てくれないのか 。その夜、ようやく現れたのは、待ち望んだ延岡さんでした。しかし、彼女の口から語られたのは、あまりにも冷酷な言葉でした。

拘束具の目隠しは「ダメですって」と一蹴されます 。そして、なぜもっと早く来てくれなかったのかと問う千夏に、延岡は冷たい笑みを浮かべてこう言い放ったのです。

「でたらめなことばかりいってたら 誰も相手にしてくれなくなるんですよ?」

「オオカミ少年じゃないですか」

【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】16話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回は、身体拘束の恐ろしさと、精神科医療の現場が抱える闇を、これでもかというほど見せつけられた回でした。患者の尊厳を平然と踏みにじり、苦痛の訴えを「わがまま」や「嘘」として切り捨てる医療従事者の姿に、強い憤りを感じずにはいられません。

「拷問のようにも思えた」という千夏のモノローグは、決して大げさな表現ではないでしょう。肉体的な苦痛はもちろんのこと、誰にも助けを求める声が届かないという精神的な苦痛は、人の心をいとも簡単に壊してしまいます。

そんな中で、唯一の希望のように思えた、優しかったはずの看護師・延岡さん。彼女でさえも、最後には千夏を「オオカミ少年」と断じてしまうシーンは、あまりにも残酷で救いがありません。組織の中では、個人の良心さえも麻痺させてしまうのでしょうか。

「でたらめなことばかり言っていたら、誰も相手にしてくれなくなる」。この言葉は、精神疾患を持つ人々が社会で直面する偏見や無理解そのものです。病気の症状を「嘘つき」や「わがまま」と見なされ、孤立していく。この物語は、千夏という一人の女性を通して、社会全体の課題を鋭く、そして痛烈に問いかけているように感じました。

【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】16話のネタバレまとめ

  • 千夏は24時間以上にも及ぶ身体拘束によって、肉体的にも精神的にも限界を迎えていました 。
  • 助けを求める彼女の声は看護師にほとんど届かず、放置される時間は「拷問」のようでした 。
  • 唯一優しく接してくれた看護師に「拘束具に目隠しをしてほしい」と頼みましたが、それも叶いませんでした 。
  • なぜ助けに来てくれないのかと訴える千夏に対し、看護師は「でたらめなことばかり言っていたら誰も相手にしてくれなくなる」「オオカミ少年じゃないですか」と冷たく言い放ちました 。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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