【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】5話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • トラックの前に飛び出した千夏を救うため、予定日より1ヶ月半も早く帝王切開での出産が決まりました 。
  • 無事に男の子「翼」が誕生し、千夏は一時的に平穏を取り戻しました 。
  • しかし、出産後のある夜、原因不明の足の震えが再発してしまいました 。
  • 「もう妊娠していないのに」と、症状が治らないことに千夏は再び絶望しました 。

【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】第5話をネタバレありでわかりやすく解説する

出産すれば、この悪夢は終わるはずでした。しかし、その希望も虚しく、主人公・千夏は再び原因不明の症状に襲われます。第5話では、専門医が登場し、千夏は母親として、一人の人間として、あまりにも過酷な選択を迫られることになります。そして物語は、最も絶望的な場所へと続いていきます。

この記事では、「妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~」第5話のあらすじを、ネタバレありで徹底的に解説していきます。

母乳育児か、薬物治療か。究極の選択

出産したにもかかわらず、症状は治まりませんでした。「なんで!!産んだら治るはずじゃ」とパニックに陥る千夏の前に、一人の男性が現れます

精神科医・宇田川との対面

「失礼しますね」「精神科医の宇田川です」

冷静な口調で現れたのは、精神科医の宇田川でした。彼は、産後2日目の千夏を見て、「出産を終えて疲れが一気にきちゃったかな?」と穏やかに語りかけます 。しかし、千夏の足は意志とは無関係に震え続けていました。

薬と母乳の天秤

宇田川は、脚の震えを抑える薬を出すことができると提案します 。その言葉に、千夏は希望の光を見たかのように「おねが…」と懇願します

しかし、医師は厳しい現実を突きつけました。

「薬を飲んだらもう 赤ちゃんを母乳で育てられなくなるのよ」

「女の人にとっては大切なことよね?」と問う宇田川医師 。千夏の脳裏には、愛しい我が子・翼を抱きしめ、「大切に育てていこう」と誓った記憶が蘇ります 。母として、我が子に与えられる最初の贈り物である母乳。それを自らの手で断ち切ってしまっていいのでしょうか。

「薬をください」―母としての約束を破る決断

「ママとしてちゃんとがんばるから」

お腹の翼にそう約束したばかりでした 。しかし、あの得体の知れない現象がまた起こったという恐怖は、彼女の決意をいとも簡単に打ち砕いてしまいます

千夏は、涙を流しながら、か細い声でこう告げるのでした。

「薬を…ください」

それは、母親としてのプライドよりも、自分自身の平穏を選んだ瞬間でした。「母親なのにわが子よりも自分を優先した」という重い十字架が、彼女の心に深く刻み込まれたのです 。

実家での療養と、日常に潜む恐怖

薬を服用し、翼くんより一足先に退院した千夏は、実家で療養生活に入ります 。「産後の肥立ちは大切なんだから」と、家族は彼女を温かく迎え入れました 。しかし、悪夢はまだ終わっていませんでした。

逃れられない恐怖の再燃

「翼の退院時の服 これとかどうかしら」

母が笑顔で見せてくれたベビー服。その瞬間、千夏の世界は再び歪み始めます。何の変哲もないベビー服が、彼女をパニックの渦へと引きずり込んでいくのです。

駆けつけた夫の涼太の前で、千夏はただ怯えることしかできません

「これじゃ出産前と同じじゃないか」

薬を飲んでいるにもかかわらず、症状は改善しませんでした。それどころか、見慣れたはずの日常の風景、決して自分に害を及ぼさないとわかっている物たちが、なぜか恐ろしくてたまらなくなっていました

「なぜだ?これじゃ出産前と同じじゃないか」

涼太もまた、終わりの見えない状況に絶望の色を濃くしていきます。

「希死念慮」そして閉鎖病棟へ

追い詰められていたのは、千夏本人だけではありませんでした。支える家族もまた、心身ともに限界を迎えようとしていました。

家族の苦悩と限界

薬剤師である涼太は、連日仕事を早退して妻の看病にあたり、長期休暇の取得すら考えていました 。千夏の母親は、娘の常軌を逸した様子に「なんかおかしなものにとりつかれたのかしら」「一度お祓いでも受けさせたほうがいいんじゃ」と口にするほど、混乱しきっていました

「明らかな希死念慮です」

涼太は、最後の望みを託して、S総合病院の宇田川医師に電話をかけます 。千夏の状況を冷静に聞いていた宇田川でしたが、ある一点を聞いて口調を変えました。

「『死にたい』とかクチにしたり 家族の目を盗んで家から飛び出そうとするのは 明らかな希死念慮です」

これは、命の危険が差し迫っているサインに他なりません。

「そこが閉鎖病棟になるんで」

宇田川医師は、すぐに入院を手配すると言います。 「わかりました 千夏さんの入院を受け入れますので G病棟というところまできていただけますか?」

そして、電話越しに、冷徹な事実が告げられました。

「そこが閉鎖病棟になるんで」

2014年の夏は、まだ始まったばかり 。千夏の長く、そして過酷な戦いは、鉄格子の嵌められた固く閉ざされた扉の向こう側で幕を開けることになったのです。

【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】5話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回は、読んでいて本当に胸が締め付けられる回でした。母親なら誰もが一度は夢見る「母乳育児」を、自らの意思で諦めなければならない千夏の苦渋の決断。母親としてのアイデンティティと、一人の人間としての尊厳の間で引き裂かれる彼女の姿に、涙が止まりませんでした。

そして、薬を飲んでも症状が改善せず、日常のすべてが恐怖の対象となってしまう描写は、この病の底知れぬ恐ろしさを物語っています。支える家族が「お祓いでも」と考えてしまうほど、追い詰められていく様子も非常にリアルで、当事者だけでなく周りも一緒に壊れていってしまうのだと痛感しました。

宇田川医師から「希死念慮」「閉鎖病棟」という言葉が出た時、これはもう家族の努力でどうにかなるレベルではない、専門的な治療が不可欠な「病気」なのだと改めて突きつけられました。ラスト、重々しい閉鎖病棟の扉が描かれたシーンは、絶望の象徴のようにも、あるいはここからが本当の治療の始まりなのだという希望の入り口のようにも見え、複雑な気持ちになりました。千夏の戦いは、まだ始まったばかり。彼女が光を取り戻す日は来るのか、固唾を飲んで見守りたいと思います。

【妊娠したら死-たくなった~産褥期精神病~】5話のネタバレまとめ

  • 出産後も症状が再発した千夏のもとに、精神科医の宇田川が現れました 。
  • 千夏は、母乳育児を諦め、症状を抑えるための服薬治療を選択するという苦渋の決断をしました 。
  • 退院して実家で療養するも症状は悪化し、日常のあらゆるものに恐怖を感じるようになってしまいました 。
  • 夫の涼太が精神科医に相談した結果、千夏の言動は「明らかな希死念慮」であると診断されました 。
  • 千夏は、命の安全を確保するため、S総合病院の「閉鎖病棟」へ入院することが決まりました 。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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