【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】6話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 出産後も症状が再発した千夏のもとに、精神科医の宇田川が現れました 。
  • 千夏は、母乳育児を諦めて症状を抑えるための服薬治療を選択するという、苦渋の決断をしました 。
  • しかし薬を飲んでも症状は改善せず、日常の風景にさえ恐怖を感じるようになってしまいました 。
  • 宇田川医師から「明らかな希死念慮」と診断され、千夏は「閉鎖病棟」へ入院することが決まりました 。

【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】第6話をネタバレありでわかりやすく解説する

自らの意思で閉鎖病棟の扉をくぐったわけではない。しかし、千夏は今、その中にいます。「まさかこういう場所と自分は一生縁のないものだと…あたりまえのように信じて…」いたにもかかわらずです 。第6話では、閉鎖病棟での壮絶な入院生活と、救いを求めたはずの医師から投げかけられる、心をえぐるような言葉が描かれます。

この記事では、「妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~」第6話のあらすじを、ネタバレありで詳しく解説していきます。

閉鎖病棟という名の「非日常」

2014年7月末、千夏はS総合病院の精神科閉鎖病棟に入院しました 。そこは、彼女が想像していた以上に過酷な場所でした。

悪化の一途をたどる症状

入院して1週間が経過しても、千夏の症状は良くなるどころか、悪化の一途をたどっていました

  • 体の奥底から湧き上がる、抑えの利かない興奮感
  • 精神を焼き切られるほどの、耐え難い焦燥感
  • 1分1秒、片時も休むことなく動き続ける両脚

精神も肉体も疲弊しきった彼女は、面会に来た夫・涼太にすがりつき、「疲れたよ苦しいよ」「お願い殺してよぉ…」と懇願するほど、追い詰められていました

日の光が差し込まない病棟

彼女が入院したG3病棟は、S総合病院の一番奥にあり、誰の目にも触れないように設計されていました 。建物自体が古く、昼間でも日の光が差し込まないその空間は、よどんだ空気に満ちています

重厚な2枚の扉で日常の世界と完全に遮断された場所 。面会時間が終わり、涼太が帰ろうとすると、千夏は「私も帰るよ ねえ連れて帰って」「なんで私こんなところに いなくちゃいけないの?」と泣き叫び、扉を叩き続けます 。その姿は、痛々しく、見るに忍びないものでした。

主治医・宇田川からの残酷な言葉

唯一の頼りであるはずの主治医・宇田川。しかし、彼の口から発せられる言葉は、千夏の心をさらに深く傷つけていきました。

「脚自体に問題があるわけじゃありません」

止まらない脚の動きに苦しむ千夏は、「一度脚の検査をしてもらえませんか…」と看護師に訴えます 。しかし、返ってきたのは、「あなたの場合は脚自体に問題があるわけじゃありませんし」「脚の運動になると思えばいいじゃないですか」という、あまりにも無神経な言葉でした

「あなたの“捉え方”に問題がある」

主治医である宇田川も、彼女の苦しみを病気の症状として捉えてはいませんでした。 彼は、涼太に頼まれた診断書の上では、病名を**「急性一過性精神病性障害」**と記載しています 。しかし、千夏本人を前にして、こう言い放つのです。

「僕はね あなたの場合は病気うんぬんではないと思ってるんですよね」

「いうなればあなた自身の ものの捉え方に問題があるのではないかと」

病気の苦しみを、個人の「性格」や「考え方」の問題にすり替える。それは、助けを求める患者に対する、最も残酷な仕打ちの一つでした。

崩壊する自己肯定感と、かすかな願い

宇田川医師の言葉は、千夏の人格そのものを否定し、彼女の自己肯定感を粉々に打ち砕いていきます。

「気の持ちよう」「考え方を改めない限り…」

さらに宇田川は、追い打ちをかけるように言葉を続けます。「精神的に幼いところがあるでしょう?」「ダンナさんに依存気味だし」。そして、精神科医が口にするのはタブーとさえ言われる言葉を口にするのです。

「『気の持ちよう』ってのも大きく関係していると思うんですよ」

挙句の果てに、「考え方を改めない限りここから出ることはなかなか難しいでしょうね」と、千夏を突き放しました

「私そんなに人格破綻者なの?」

31年間、自分は常識の範囲内で生きる「普通の人間」だと思っていました 。そのささやかなプライドは、専門家であるはずの医師によって、無残にも否定されてしまいます。「私そんなに人格破綻者なの?」

「精神的に幼いことや気の持ちようが原因で ここまで人ってグチャグチャになるの?」。彼女は、出口のない自問自答の迷宮へと迷い込んでしまいました。

「ただただ眠りたいな」

もし、自分が「しっかりしたものの捉え方」を身につけられたなら 。この恐怖も、「死にたい」という気持ちもなくなり、あの子の母親として家に帰れるのだろうか 。様々な考えが頭を巡る中、彼女の心に残ったのは、あまりにも切実で、シンプルな一つの願いでした。

「ああ…でも今はただただ眠りたいな

心身ともに疲弊しきった彼女は、ただ安らかな眠りだけを求めて、暗く長い夜の廊下を歩き続けるのでした

【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】6話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回は、閉鎖病棟という特殊な環境の息苦しさと、主治医・宇田川の言動に、読んでいて強い憤りと無力感を覚えました。助けを求めて入院したはずの場所で、病気の苦しみを「気の持ちよう」「性格の問題」と断じられ、人格まで否定される。これほどの絶望はありません。

特に、宇田川医師が千夏に投げかける言葉の数々は、精神疾患に苦しむ人々が現実で直面しうる、無理解や偏見そのものを象徴しているように感じました。専門家であるはずの人間が、患者の尊厳を傷つけ、回復への希望を奪ってしまう。その現実に、この問題の根深さと社会が抱える課題を改めて考えさせられました。

「脚の運動になると思えばいい」と言い放った看護師の存在も、医療現場における信頼関係がいかに重要であるかを浮き彫りにしています。信頼できない人々に囲まれた中で、どうやって自分を取り戻せというのでしょうか。

ただひたすらに「眠りたい」と願う千夏の姿が、脳裏に焼き付いて離れません。彼女の苦しみに、一刻も早く安らぎの時が訪れることを願わずにはいられない、あまりにも重い回でした。

【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】6話のネタバレまとめ

  • 閉鎖病棟に入院した千夏の症状は悪化の一途をたどり、「殺して」と夫に懇願するほど苦しんでいました 。
  • 彼女が入院した病棟は昼でも薄暗く、日常から完全に遮断された陰鬱な空間でした 。
  • 主治医の宇田川は、千夏の症状を病気ではなく「ものの捉え方の問題」「気の持ちよう」だと断じ、彼女の人格を否定するような言葉を投げかけました 。
  • 医師の言葉によって自己肯定感を完全に打ち砕かれた千夏は、それでも「考え方を改めれば解放されるのか」と考え、最後にはただ「眠りたい」と願うほど心身ともに疲弊していました 。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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