【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】8話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

- 閉鎖病棟での千夏の日課は、比較的自我を保てる朝に自殺を図ることでした 。
- 薬は効かず症状は改善せず、千夏は「医療保護入院」のため、自らの意思で退院することもできず、絶望を深めていました 。
- 主治医の宇田川は「人間として扱ってほしいならおとなしくしろ」と冷たく言い放ち、千夏は心を閉ざしていきました 。
- そんな中、面会に来た夫で薬剤師の涼太が、千夏の処方箋にあり得ない薬が使われていることに気づき、物語が大きく動くことを予感させました 。
【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】第8話をネタバレありでわかりやすく解説する
夫・涼太が気づいた、妻の処方箋への強い違和感。第8話では、その薬の恐るべき正体と、薬によって感情を奪われ、我が子さえ認識できなくなってしまう千夏の痛ましい姿が描かれます。そして、物語はついに、彼女の心が完全に壊れてしまう、最も悲しい瞬間へとたどり着きます。
この記事では、「妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~」第8話のあらすじを、ネタバレありで徹底的に解説していきます。
恐るべき薬の正体と夫の葛藤
涼太が問題視した薬。それは、患者の尊厳を無視した、あまりにも危険なものでした。
「廃人状態にした」薬
涼太が「目を疑いました」と語るほど、その処方は異常なものでした。彼が宇田川医師に指摘した薬は、錯乱して暴れ、周りが手を付けられなくなった患者を強制的に落ち着かせるために用いられる、非常に強い鎮静作用を持つものだったのです 。
しかし、宇田川医師は「興奮して暴れて制御不能になっているよりかは 本人にとっても今のほうが楽だと思いますけどね」と、悪びれる様子もなく言い放ちます 。その言葉は、治療という名のもとに、千夏を**「悪くいえば 廃人状態にした」**も同然でした 。
介護休暇を取得し、向き合う覚悟
妻を救うため、そして生まれてきた息子・翼を守るため、涼太は大きな決断をします。
3ヶ月の介護休暇を取得し、育児に専念することを決めたのです 。
「3時間おきの授乳も お風呂入れも 勉強したから きっと大丈夫!」。そう自分に言い聞かせ、彼はたった一人で父親、そして母親の役割を担う覚悟を固めました 。
母性の完全なる喪失
薬によって興奮は抑えられ、一見すると落ち着いたように見える千夏。しかし、その内面では、もっと恐ろしい異変が進行していました。
我が子への無関心と拒絶
涼太は、千夏を連れてNICUにいる翼のもとを訪れます 。看護師から「明日いよいよNICU退院だもんね」と声をかけられ、翼もぶくぶくと健康的に太り、より一層赤ちゃんらしくなっていました 。
看護師が「お母さんもミルクあげてみますか?」と哺乳瓶を差し出しますが、千夏の心は凍りついたまま。彼女の頭に浮かんだのは、喜びや愛情ではなく、**「知らない こんな子」「かわいくもない」**という、あまりにも冷たい言葉でした 。
「私はママなんかじゃない」
看護師が屈託なく「ほら目とかママにそっくりで」と話しかけても、その言葉は千夏に届きません 。
「私はママなんかじゃない」
「気持ち悪い…近づけないで」
彼女の中で、かつてあれほどまでに豊かだった母性は、薬によって根こそぎ奪われ、完全に失われてしまっていたのです。
「私」を返して―魂の叫び
薬は、千夏の感情だけでなく、現実の認識さえも歪めていきます。
薬による幻覚と現実逃避
千夏は、うつらうつらと、かつて涼太と「いいお母さんになると思うよ」と語り合った幸せな記憶と、現在の悪夢の間をさまよいます 。
就寝前、看護師が薬を持ってくると、彼女は差し出された空っぽの手のひらを見て「あるの?」と確認し、そのまま薬を飲むふりをします 。薬への依存と、現実認識の欠如が、彼女をさらに蝕んでいました。
視力の喪失、そして絶望の底へ
薬を飲んだ(と思い込んだ)直後、千夏の体に最後の追い打ちがかかります。突然、視界が奪われ、目が見えなくなってしまったのです 。
普通の生活、普通の心、そして幸せ。あの子を妊娠してから、全てを奪われ続けた。千夏の心は、ついにプツリと糸が切れるように壊れてしまいます。
「産むんじゃなかった」「あんな子いらない」
絶望の底で、彼女は心の中で、母親として決して口にしてはならない言葉を叫びました。
「産むんじゃなかった」
「あんな子いらない」
そして、失われた自分自身を取り戻したいと、魂の底から慟哭するのでした。
「…もう返して 『私』を返して」
【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】8話を読んだ感想(ネタバレあり)
今回は、物語全体を通しても、最も読んでいて胸が抉られるような回でした。薬によって感情を奪われ、廃人のようになっていく千夏。そして、あれほど愛おしかったはずの我が子を「知らない子」「かわいくもない」と認識してしまうシーンは、母性が根こそぎ破壊されていく様を見せつけられているようで、あまりの痛ましさに涙が止まりませんでした。
宇田川医師の「楽だと思いますけどね」という言葉には、怒りを通り越して、人としての底知れぬ恐怖を感じます。患者を治療の対象ではなく、ただの「管理」の対象としか見なさないその姿勢は、医療倫理の根幹を揺るがすものであり、強い憤りを覚えました。
しかし、そんな絶望の中でも、涼太の存在が一筋の光となっています。3ヶ月の介護休暇を取得し、一人で全てを背負う覚悟を決めた彼の愛情の深さには、心を打たれます。彼の存在がなければ、千夏はとっくの昔に壊れていたでしょう。
ラストの「産むんじゃなかった」「私を返して」という千夏の魂の叫び。これは、彼女の本心から出た言葉ではないと信じたいです。病によって極限まで追い詰められた末の、あまりにも悲しく、痛ましい心の声なのだと思います。彼女が本当の「私」を取り戻し、翼くんをその腕に抱きしめられる日は来るのでしょうか。重い余韻と、涼太という存在がもたらすかすかな希望が入り混じる、壮絶な回でした。
【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】8話のネタバレまとめ
- 涼太が問題視した薬は、患者を「廃人状態」にするほど強い鎮静作用のあるものでしたが、主治医は「その方が楽だ」と意に介しませんでした 。
- 涼太は妻と息子を支えるため、3ヶ月の介護休暇を取得し、一人で育児と向き合う覚悟を決めました 。
- 薬の影響で感情を失った千夏は、我が子・翼を「知らない子」「かわいくもない」と認識し、完全に拒絶してしまいました 。
- 薬の副作用か、一時的に視力を失った千夏は絶望の底で、「産むんじゃなかった」「あんな子いらない」と心の中で叫んでしまいました 。
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