【慟哭の残響】9話ネタバレ解説

ずっちー

8話では、検視室でイブリンが身元不明の遺体を調べる中、ベラの魂がそばで自分の痛みを訴えていました。メーガンが修復されたスマートフォンを持ち込み、最後の通話相手がポール・ハート刑事だったことが判明します。イブリンは、それがアナのピアノコンクールの日にポールが受けた電話だと気づき、目の前の遺体とベラの失踪がつながっている可能性に近づき始めました。

【慟哭の残響】第9話をネタバレありでわかりやすく解説する

ベラの死後4日目、検視室に新たな遺体の一部が運ばれる

第9話は、ベラの死後4日目の検視室から始まります。

明るく無機質なラボには、白いシーツで覆われた遺体が横たわっています。そのそばには、誰にも見えないベラの魂が立ち、自分の身体を悲しげに見つめています。

そこへ、ポールとジョージが大きな黒い袋を持って入ってきます。

袋には証拠品ラベルが貼られており、中にあるものがただの荷物ではないことが分かります。ポールは険しい表情で、近くのレストランの下水道から新たに遺体の一部が見つかったとイブリンへ伝えます。

そして、それが同じ被害者のものか確認してほしいと頼みます。

イブリンは、検視官として冷静に「わかったわ」と受け止めます。

けれど、ベラの魂にとっては、自分の身体が少しずつ集められていく現実を見せつけられる時間です。死んだあとでさえ、彼女は自分に起きたことから逃げられません。

ポールはまだ、それが娘の身体だと知らない

ポールは刑事として、捜査に必要な証拠をラボへ届けています。

彼の態度は真剣で、事件を解決しようとする責任感もあります。しかし、そこにある遺体の一部が実の娘ベラにつながるものだとは、まだはっきり理解していません。

このすれ違いが、ずっと続いています。

父は娘のために動いているようで、まだ娘のためだと気づいていない。

母は娘の身体を調べているのに、それが娘だと分かっていない。

ベラだけが真実を知っていて、何もできずに見ている。

第9話でも、この残酷な構図は変わりません。

ベラの古い傷跡が、過去の記憶を呼び起こす

ポールたちが持ち込んだ遺体の一部を確認する流れの中で、物語はベラの過去へ移ります。

生前のハート家のリビングでは、イブリンとアナがソファーに並んで座っています。イブリンはアナに、化学のテストがどうだったか優しく尋ねます。

アナが良い成績を取れそうだと答えると、イブリンは嬉しそうに頭を撫でます。

その少し後ろには、同じ制服を着たベラがいます。彼女は大きなぬいぐるみを抱きしめながら、二人のやり取りを寂しそうに見つめています。

この場面だけでも、ベラとアナへの扱いの差がはっきり伝わります。

アナには、母から自然な愛情が注がれています。

成績を褒められ、頭を撫でられ、安心できる笑顔を向けられています。

一方で、ベラはその輪の外側に立っています。

母に声をかけてもらうのを待っているようにも見えますが、その視線はアナへ向いたままです。

アナはベラの傷跡を「気持ち悪い」と言う

その場で、アナはベラの足元を指差します。

そして、ベラの傷跡が大きくて気持ち悪いと言います。

その傷がいつできたものなのか、詳しい経緯までは分かりません。ただ、ベラが過去に深い傷を負っていたことは確かです。

本来なら、その傷はベラが苦しんできた証です。

家族なら、からかったり嫌がったりするのではなく、痛かったね、大丈夫だったの、と寄り添うべきものです。

しかしアナは、その傷をベラを傷つける材料にします。

ベラの身体に残った過去の痛みを、さらに心の痛みに変えてしまうのです。

イブリンはベラの傷を守らず、隠すよう命じる

アナの言葉を聞いたイブリンは、ベラの傷跡を一瞥します。

そして、ベラに対して、これからは長いズボンだけを穿きなさい、スカートは禁止だと言います。

理由は、アナが怖がっているからです。

この言葉は、ベラにとってあまりにも冷たいものでした。

傷跡があるベラを気づかうのではなく、傷跡を見たアナを守ろうとしているからです。

ベラは傷ついている側です。

それなのに、まるでベラの存在や身体そのものがアナを不快にさせているかのように扱われてしまいます。

ベラは「うん、わかった」と小さく答えます。

逆らうこともできず、自分の痛みを飲み込むしかありません。ぬいぐるみを抱きしめる姿からは、誰にも守ってもらえない寂しさが伝わってきます。

アナにだけ向けられる「大丈夫よ」

イブリンは、ベラには冷たく命じたあと、アナを抱き寄せます。

そして、優しい声で「大丈夫よ」と慰めます。

ここでも、母の愛情はアナへ向かっています。

ベラの傷は、ベラの痛みとして見てもらえません。

アナを怖がらせるもの、アナを不快にさせるものとして扱われています。

第9話のこの回想は、ベラが家族の中でどれほど小さくされていたのかを静かに示しています。

ベラは悪いことをしていません。

ただ、傷を持っているだけです。

それでも、その傷を理由に服装まで制限され、アナを優先される。こうした積み重ねが、ベラの心を少しずつ追い詰めていったのでしょう。

現在の検視室で、遺体の縫合が進む

場面は現在の検視室へ戻ります。

イブリンは、集められた遺体の一部を確認し、切断のパターンや血液型から同一人物のものだと判断します。

そして、四肢と胴体を縫い合わせる作業を終えます。

残されているのは、まだ見つかっていない頭部だけです。

この作業は、検視官として必要なものです。身元確認や死因の特定、事件の全体像を知るためには、避けて通れない仕事でもあります。

けれど、ベラの視点から見ると、それは自分の身体が修復されていく様子を見つめる時間です。

しかも、その作業をしているのは実の母イブリンです。

母は娘を抱きしめるのではなく、娘の遺体を縫い合わせている。

この事実が、静かに重くのしかかります。

古い傷跡が、ベラの身元に近づく手がかりになる

縫合された身体には、回想で描かれたものと同じ古い傷跡が残っています。

それは犯人がつけた新しい傷ではなく、昔からベラの身体にあった傷です。

イブリンは、その傷を見れば何かを思い出せるはずです。

以前、ベラに長いズボンだけを穿くよう命じた、あの傷跡です。アナが「気持ち悪い」と言い、ベラが涙をこらえた、あの傷です。

ブレスレットに続き、スマートフォンに続き、今度は身体に残った古い傷跡が、ベラの身元へ近づく手がかりになっています。

けれど、イブリンはまだ決定的な答えにはたどり着いていません。

目の前には、娘の人生の痕跡がいくつも残っているのに、まだ娘として認識できないのです。

ポールは捜査範囲を広げ、頭部の捜索へ向かう

イブリンの報告を受け、ポールは捜索範囲を広げる必要があると判断します。

四肢と胴体は揃いましたが、頭部はまだ見つかっていません。

ポールは、さらに証拠を集め、残る部分を探すよう動き出します。ジョージも同意し、イブリンの仕事を評価したうえで、捜索を続けると話します。

ここでも、ポールたちは職務に集中しています。

事件としては少しずつ前進しています。

しかし、家族としてはまだ真実に追いついていません。

ベラの魂は、縫い合わされた自分の身体を見つめるしかありません。自分が何者なのか、誰の娘だったのかを、誰かに思い出してもらうのを待つしかないのです。

事件は進むが、ベラの孤独は終わらない

第9話では、遺体の一部がさらに見つかり、検視も進みます。

しかし、ベラの孤独は薄れません。

むしろ、身体が集まっていくほど、彼女の存在が「事件の被害者」としては形を取り戻しているのに、「ベラ」としてはまだ見てもらえないもどかしさが増していきます。

ポールもイブリンも、真実のすぐ近くにいます。

でも、あと少しのところで届かない。

この緊張感が続いたまま、物語は思わぬ来訪者を迎えます。

アナが突然、検視室へ現れる

ポールとジョージが部屋を出ていった直後、検視室のドアがゆっくり開きます。

そこに姿を見せたのは、アナでした。

アナは心細そうな声で「お母さん」と呼びかけます。

イブリンは驚きます。そもそも検視室は、若い娘が気軽に訪れるような場所ではありません。まして、今は凄惨な事件の遺体を扱っている最中です。

イブリンは、臭いが酷いから近づかないようアナを気づかいます。

アナは、昨夜ポールとイブリンが家に帰ってこなかったから寂しくて会いに来た、と甘えるように話します。

その姿は、これまで何度も見せてきた「可愛い娘」の顔です。

アナは危険を知っていても一人で外へ出てきた

イブリンは、最近は危険だと父から聞いていないのか、一人で外を出歩いてはいけないと注意します。

ここには、母親としてアナを心配する気持ちが表れています。

しかし、ここでもベラとの扱いの差が浮かびます。

ベラが行方不明になった時、ポールとイブリンはすぐに心配しきれませんでした。むしろ、家出や反抗だと思い込み、責める言葉を重ねました。

一方、アナが一人で検視室まで来ると、イブリンはすぐに危ないと心配します。

ベラの魂は、そのやり取りをそばで見つめています。

自分には向けられなかった心配が、アナには当然のように向けられる。その光景は、ベラにとってまた一つの傷になります。

アナの不審な一言に、イブリンが初めて疑いを向ける

アナはイブリンに甘え、翌日のピアノコンクールへ来てほしいと頼みます。

イブリンは重大な事件を抱えているため、最初は迷います。けれど、アナが「優勝する娘の姿を見たくないの?」と甘えると、結局は根負けしたように笑い、観客席から応援すると約束します。

そのやり取りを、ベラの魂はすぐそばで見つめています。

ベラにとって、それはまたしても母が自分ではなくアナを選ぶ瞬間でした。生きていた頃も、死んだあとも、母の優しさはアナへ向かっていきます。

ところが、その直後に空気が変わります。

アナは検視台のほうを見ながら、何気ない口調で「このバラバラ殺人の事件は……」と口にします。

その一言を聞いた瞬間、イブリンの動きが止まります。

なぜなら、この事件が『バラバラ殺人』であることは、公表されていない機密情報だったからです。警察や検視関係者しか知らないはずの情報を、なぜアナが知っているのか。

イブリンは、母親の顔ではなく、検視官としての鋭い目つきでアナを振り返ります。

「どうしてこれが『バラバラ殺人事件』だと知っているの?それは機密情報よ」

この問いかけは、第9話の大きな転換点です。

これまでイブリンは、アナの言葉をほとんど疑ってきませんでした。アナが泣けば信じ、アナが怯えれば守り、アナがベラを悪者にすれば、そのまま受け入れてきました。

しかしこの瞬間だけは違います。

アナの言葉に、初めて明らかな矛盾が生まれたのです。

「電話で聞いた」というアナの言い訳

アナは一瞬だけ言葉に詰まります。

けれど、すぐに表情を整え、「お父さんが夕食の時に言っていた」と説明します。さらに、「電話で、覚えてない?」と付け加え、まるでイブリンの記憶違いであるかのように話をすり替えます。

この返し方は、とてもアナらしいものです。

自分が知るはずのない情報を口にしてしまったのに、すぐに相手の記憶へ責任を移し、自然な会話だったように見せようとしています。

イブリンはしばらく沈黙します。

そして、小さく息を吐きながら「そうだったわね」と答えます。

表面上はアナの言い訳を受け入れたように見えます。けれど、その表情には完全な納得はありません。

アナが何かを隠しているのではないか。

この事件について、普通なら知るはずのないことを知っているのではないか。

イブリンの中に、初めてアナへの疑いが芽生えます。

ベラの魂は、その様子をじっと見つめています。

これまでどれだけベラが真実を訴えても、母は信じてくれませんでした。けれど今、アナ自身の口から出た不用意な一言によって、長く隠されてきた嘘が少しずつ崩れ始めようとしています。

【慟哭の残響】9話を読んだ感想(ネタバレあり)

第9話は、ベラの身体が少しずつ戻ってくる一方で、アナの嘘にも初めて亀裂が入る回でした。

冒頭で、レストランの下水道から新たな遺体の一部が見つかる場面は、かなり重いです。ポールもイブリンも職務として受け止めていますが、ベラの魂がすぐそばにいることを考えると、見ているだけで苦しくなります。

自分の身体が集められ、縫い合わされていくところを見なければならない。

その残酷さは、言葉にしづらいものがあります。

そして、回想で描かれた古い傷跡の場面も印象的でした。

ベラの傷跡をアナが「気持ち悪い」と言い、イブリンがベラにスカートを禁止する。これは、ベラが受けた傷をいたわるどころか、隠すべきものとして扱う行為です。

本来なら、傷跡を見て守られるべきはベラだったはずです。

でも、イブリンはアナを守ります。

このすれ違いが、本当に残酷でした。

第9話の後半では、アナが検視室に来る場面が大きな転換点になります。

アナはいつも通り、可愛らしい娘としてイブリンに甘えます。寂しかった、会いたかった、ピアノコンクールを見に来てほしい。言葉だけを聞けば健気ですが、これまでのアナを知っていると、すべてが計算に見えてしまいます。

しかも、イブリンはまた約束してしまいます。

重大な事件を抱えているのに、アナにねだられてコンクールへ行くと約束する。その横で、ベラが(いつも私じゃなくてアナを選ぶのね)と嘆く場面は、とても切なかったです。

ベラは死んだあとも、母がアナを選ぶところを見続けなければならない。

この構図が本当に苦しいです。

ただ、第9話には少しだけ流れが変わる瞬間もありました。

アナが「バラバラ殺人」と言ってしまう場面です。

この一言は大きいです。

これまでイブリンは、アナの言葉をほとんど疑ってきませんでした。ベラが何を言っても信じず、アナの涙や演技を信じてきました。

でも今回は、イブリン自身が「なぜ知っているの?」と問いかけます。

初めて、母の目がアナの不自然さへ向いたように感じました。

アナはすぐに言い訳しますが、イブリンの表情には完全には納得していない様子が残ります。

ここから、アナの嘘がどこまで崩れていくのか。ベラの過去の冤罪も明らかになるのか。第9話は、真実へ向かう大事な入口になっていました。

【慟哭の残響】9話のネタバレまとめ

  • 第9話は、ベラの死後4日目の検視室から始まる
  • ポールとジョージが、近くのレストランの下水道で見つかった新たな遺体の一部を運び込む
  • ポールはイブリンに、それが同じ被害者のものか確認するよう依頼する
  • イブリンは検視官として冷静に承諾する
  • ベラの魂は、自分の身体が少しずつ集められていく現実を悲しげに見つめる
  • 回想では、イブリンがアナの化学のテスト結果を優しく気にかけている
  • ベラはぬいぐるみを抱きながら、母に愛されるアナを寂しそうに見つめている
  • アナはベラの古い傷跡を「気持ち悪い」と言って傷つける
  • イブリンはベラを守らず、アナが怖がるからという理由でベラに長いズボンだけを穿くよう命じる
  • ベラは涙をこらえながら「わかった」と受け入れる
  • 現在の検視室では、イブリンが切断パターンと血液型から遺体の一部が同一人物のものだと判断する
  • イブリンは四肢と胴体の縫合を終え、残るのは頭部だけだと報告する
  • ポールは捜索範囲を広げ、さらなる証拠と頭部の発見を目指す
  • ポールとジョージが出ていった直後、アナが突然検視室に現れる
  • アナは両親が帰ってこなくて寂しかったと甘え、翌日のピアノコンクールへ来てほしいと頼む
  • イブリンは重大事件を抱えていると言いながらも、最終的にアナのコンクールへ行くと約束する
  • ベラは、母がまた自分ではなくアナを選ぶ姿に深く傷つく
  • アナは検視台の遺体を見て、「このバラバラ殺人の事件」と口にする
  • イブリンは、それが機密情報であることから、アナがなぜ知っているのか疑問を抱く
  • アナは、父が夕食の時に言っていたと取り繕う
  • イブリンは表面上は納得したふりをするが、アナへの小さな疑いが芽生える
  • 第9話は、ベラの身元につながる手がかりと、アナの嘘が崩れ始める兆しを描いた回になっている

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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