【枯れた花に涙を】54話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 鉄平は、職場で樹里を他の男に紹介されそうになり、逆上して同僚に暴力を振るう。
  • 蓮の兄・丈が登場し、蓮と会社の後継者の座を巡って激しく対立する。
  • 樹里は、一日連絡がなかったことで蓮への想いの深さを自覚する。
  • 深夜、蓮は樹里の家の前に突然現れ、何も言わずに彼女に激しいキスをする。

【枯れた花に涙を】第54話をネタバレありでわかりやすく解説する

前話、突然現れた蓮からの、激しくも切ないキスで幕を閉じました。第54話は、その直後から始まり、二人の間に生まれた、これまでとは違う微妙な距離感を描きます。蓮の不可解な行動に、樹里の心は疑惑と不安で揺れ動きます。しかし、物語の終盤で、その疑惑の真相と、蓮の静かなる決意が明らかになる、見逃せない回です。

深夜のキスと、謎めいた拒絶

深夜の来訪者である蓮。彼の行動は、樹里を喜ばせると同時に、深い戸惑いを与えました。

なんだか、疲れてるみたい…

蓮の強引なキスを受け入れながらも、樹里は彼の様子がいつもと違うことに気づきます。「なんだか…疲れてるみたい…」と感じるほど、彼の瞳には疲労の色が浮かんでいました 。彼の内部で、何か大きな変化が起きていることを予感させるに十分な表情でした。彼の心の内では、樹里への「溢れる衝動を…我慢しようとしたけどできなかった」という、激しい葛藤が渦巻いていたのです 。

「今度にします」―初めての、曖昧な約束

彼の疲れを察した樹里は、「よかったら…上がっていかない?一緒に朝ご飯も…」と、勇気を出して彼を部屋に招き入れます 。しかし、蓮からの返事は、彼女の予想を裏切るものでした。

いいえ 今度にします」 。これまでは「また明日」と確かな約束をくれた彼が、初めて見せた曖昧な態度。その拒絶は、樹里の心に小さな、しかし確かな寂しさを残しました。

あなたの香りに混じる、知らない女の匂い

蓮が去った後、一人残された樹里は、先ほどのキスに違和感があった理由に気づいてしまいます。それは、彼女の不安を煽る、決定的な証拠でした。

疑惑の香り

蓮が去った玄関で、樹里は彼の残り香を確かめます。そして、自分の気のせいではなかったと確信するのです。いつもの彼から香る爽やかな匂いに、明らかに「知らない女性ものの香水の香り」が混じっていたことに 。

蓮の帰還と、交わらない二つの世界

樹里との激しくも切ないキスを終え、彼女の部屋を後にした蓮。そこには、彼の帰りを待つ部下・譲二の姿がありました。この場面では、情事の後の気だるい空気と、二人の間に横たわる、あまりにも大きな世界の隔たりが描かれます。

乱れた姿と、部下の冷静な視線

樹里の部屋から出てきた蓮は、シャツが乱れ、どこか疲労の色を浮かべていました 。そんな彼を出迎えた譲二は、そのただならぬ様子を見て、「なんだよその格好…猫にでも襲われたのか…?」と、冷静に、しかし皮肉を込めて問いかけます 。譲二からの「すぐにご出発なさいますか?」という問いに、蓮は「いや…ちょっと休んでから行こう」とだけ答え、心身ともに消耗している様子を見せました 。

孤独な高層ビルと、古びた路地裏

場面は、蓮の心情を表すかのように、譲二のモノローグへと移ります。蓮の財閥の坊ちゃんとして生きている世界を「物寂しい高層ビルにぽつんと置かれたクマのぬいぐるみみたい」でと表現し、「人の匂いなんてしない」場所だと想像していました 。「狭く古びた路地」で、「この男の存在だけがまるで汚点みたいだ」とまで感じてしまいます 。この独白は、蓮の普段の振る舞いや環境の違いを痛感し、哀れんでいるような譲二の胸の内を、鮮明に映し出しています。

休息を許さぬ、新たな命令

蓮はそんな思いを抱く譲二に対して「明日から出張だ 代わりに行ってほしいところがある」という、一方的な業務命令をします 。「どこでしょうか?」と不思議がる譲二でしたが、これは蓮がまた、何か良からぬことを企んでいる布石なのでしょうか。

「あなたと、もっと一緒にいたくて」―樹里の決意と不安

蓮の不可解な態度と、彼から香った女性の匂い。樹里の心は、疑惑と不安でいっぱいでした。しかし、彼女はその不安を、意外な行動力へと変えていきます。

幸せの女神―コンビニバイト、最後の日

樹里は、コンビニの夜勤バイトを辞めることを決意します。店長は、「樹里さんが来てからいいこと続きだったのに」と、涙ながらに彼女の退職を惜しみました 。店長は知る由もありませんが、店から迷惑な酔客がいなくなったのは、蓮が裏で手を回していたからでした。

樹里は、そんな彼ともっと一緒にいたいという、自分の「わがまま」のために、職場を去ることを選んだのです 。

疑惑を裏付ける、同じ香りとの遭遇

バイトを辞めても、多忙な蓮からの連絡は以前より遅くなりがちでした。そんなある日、樹里は花屋で、蓮から香ったものと全く同じ香水をつけた、美しい女性客と遭遇します。その香りが、自分の知らないところで蓮が他の女性と会っている証拠ではないかと、彼女の不安は頂点に達しました。

逆転する疑惑―男女兼用の香水

樹里は、勇気を出してその女性客に香水の名前を尋ねます。すると、彼女は「最近発売された新商品で」「中性的な感じもあって男性にも人気なんですよ」と、それが男女兼用の香水であることを教えてくれました 。蓮が自分で購入したのかもしれない。その可能性に、樹里の心は少しだけ軽くなるのでした。

「戻ってくるよ」―蓮の、静かなる宣戦布告

物語のラスト、場面は再び蓮の元へ。彼は、「物語の冒頭であることに行ってほしいとお願いしていた」譲二から元夫・鉄平に関する調査報告を受けていました。その表情は、樹里に見せる優しい顔とは全く違う、冷徹なものでした。

鉄平の現状

譲二の報告によれば、鉄平は若い女と暮らし、子どもはおらず、かつて樹里との間で生じた借金は、すべて彼女の名義になっているため、もう彼女の元に戻ることはないのではないか?と推測します。

「警戒を解くなよ」

譲二は、鉄平が樹里の元へ「戻ってくることはないと思いますが」と付け加えます。しかし、蓮はそれを「いや 戻ってくるよ」と、確信を持って否定しました 。そして、「自分のものだと言い張るお前に俺は何一つやるつもりはないから」「絶対に警戒を解くなよ」と、鉄平との全面対決を譲二に命じるのでした 。

【枯れた花に涙を】54話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回は、読者の心を巧みに揺さぶる、見事なミスリードが光る回でした。蓮から香る、知らない女性の香水。これは誰もが浮気を疑う状況ですが、まさかそれが「男女兼用の香水」だったとは。この一つの事実で、樹里の絶望と安堵、そして読者の感情までをもコントロールする、脚本の巧みさに唸らされました。

樹里が、蓮との時間を作るために夜勤のバイトを辞めるという決断にも、彼女の愛情の深さと、人生を変えようとする強い意志を感じて、胸が熱くなりました。彼女が少しずつ、自分の幸せのために貪欲になっている姿は、見ていて本当応援したくなります。

そして、ラストの蓮の宣戦布告。樹里の前では甘く、時に子供っぽささえ見せる彼が、鉄平を前にすると、冷徹な策略家へと変貌する。この二面性こそが、彼の最大の魅力だと改めて感じました。「戻ってくるよ」と断言した彼の言葉通り、これから鉄平との直接対決が始まるのでしょう。二人の男が、樹里という一人の女性を巡ってどうぶつかり合うのか。今後の展開から、ますます目が離せません。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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