【枯れた花に涙を】57話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 蓮は樹里の家に泊まることになるが、体を求めるのではなく、ただ一緒にいたいという純粋な想いを伝える 。
  • 連絡が取れない樹里に苛立つ鉄平は、過去に彼女に抱いた歪んだ愛情の記憶を回想し、彼女の元へ向かう 。
  • 樹里は過去のトラウマから自分の服装を卑下するが、蓮は「俺は喜んで受け入れる」と彼女の全てを肯定する絶対的な愛を告げる 。
  • 鉄平が合鍵を使い樹里の部屋に侵入し、中にいた蓮と遭遇してしまうという最悪の状況で幕を閉じる 。

【枯れた花に涙を】第57話をネタバレありでわかりやすく解説する

前話、ついに樹里の部屋で鉢合わせてしまった蓮と鉄平。第57話は、その息詰まる対決の火蓋が切って落とされる、緊迫感に満ちた回です。しかし、これは単なる男と男のぶつかり合いではありませんでした。全ては、蓮が周到に仕掛けた罠。鉄平の暴力性と歪んだ独占欲を逆手に取り、完膚なきまでに叩きのめす、蓮の冷徹な知略が光ります。

仕掛けられた罠―蓮の、恐るべき先見の明

物語の冒頭、鉄平が樹里の家へと向かう姿を、物陰から見つめる男がいました。蓮の部下・譲二です。この時点で、読者はこの遭遇が偶然ではないことを知ります。

全ては想定内

譲二は、鉄平が元妻の家に向かっていることを確認しながら、心の中で静かに感嘆します。「まったく…俺のご主人様は勘が鋭いのか 単なる化け物なのか…」 。

蓮は、鉄平が必ずここへ来ることを見越していたのです。譲二は蓮に「もうすぐ着くはずです。遅くとも1時間以内に」とメッセージを送り、蓮もまた、静かにその時を待っていました 。彼はただ待っていたのではありません。拳にバンテージを巻き、コンドームの袋を開けるなど、これから始まる「戦い」に向けて、心と体の準備を整えていたのです。

独善の暴走―玄関先で膨れ上がる、鉄平の歪んだ期待

一方、何も知らない鉄平は、傲慢な思い込みを胸に、樹里の部屋へと続く階段を上っていました。彼の目に入るものすべてが、彼の歪んだ憶測を加速させていきます。

都合のいい解釈

鉄平は、樹里が連絡してこない理由を「具合が悪いのに病院に行かないで放置してたら悪化した」からだと決めつけていました 。そんな中、彼は樹里の部屋の前に置かれた2つの大きなゴミ袋を発見します。彼はこれを、自分への当てつけだと解釈。

俺に見せつけるためにわざと捨てたのか?」と怒りを滲ませながらも、その必死さが、逆に「戻ってきてほしいという気持ちの裏返しに見えて…」と、胸を熱くするのでした 。彼の認知の歪みは、もはや末期の状態に達していました。

静寂の対峙―寝室に横たわる、見知らぬ男

鉄平は、持っていた合鍵で躊躇なくドアを開けます。しかし、そこで彼が目にしたのは、自身の妄想を木っ端微塵に打ち砕く、信じがたい光景でした。

あるはずのない、男の靴

玄関に置かれていたのは、「見慣れない男の靴」 。鉄平は一瞬、「女の一人暮らしは危ないからってどっかから持ってきた靴だろ?」と現実逃避を試みますが、彼の心を「不吉な予感」が支配していきます 。

そして、寝室を覗き込んだ彼の目に飛び込んできたのは、ベッドの上で半裸で横たわる、美しい男―蓮の姿でした。

「お前…誰だ?」

床に落ちた赤い女性ものの下着。そして、自分のものではない、見知らぬ男。現実を理解できない鉄平は、絞り出すように問いかけます。「…誰だ?お前」 。

それに対し、蓮はゆっくりと身を起こし、先ほど開けたコンドームの袋を静かに落とすと、逆に問い返します。「ここに住んでた女は…どこだ?」 。その挑発に、鉄平の怒りは頂点に達し、蓮に殴りかかるのでした。

「ボスにとられる前にな」―譲二の、完璧なる撹乱作戦

鉄平が蓮に暴力を振るい始めた、その瞬間。背後から現れた譲二が、鉄平を羽交い締めにします。ここから、蓮と譲二による、完璧な心理戦が始まりました。

借金取りの芝居

喧嘩なら外でしようぜ」と冷静に鉄平をいなす譲二 。鉄平は彼らを借金取りだと勘違いし、「樹里はどこだ?あいつに何をした?」と激昂します 。譲二は、その誤解を逆手に取り、冷酷な借金取りを演じ切ります。

お前が借金の肩代わりでもするってのか?」「完済するには臓器何個か取り出す必要があるが」と、容赦ない言葉で鉄平を追い詰めていきました 。

植え付けられた恐怖

そして、譲二は決定的な一言を放ちます。

あの女ならここにはいないぜ」 。そして、自分たちの「ボス」(蓮のこと)は借金の取り立てが趣味であり、自分たちも樹里を探しているのだと、嘘の情報を与えます 。最後に、彼はこう言い放ちました。

お前の嫁ならお前が捜せ ボスにとられる前にな」 。この言葉は、樹里がどこかへ消え、自分ではない何者かに狙われているという、新たな恐怖を鉄平の心に深く植え付けたのでした。

【枯れた花に涙を】第57話を読んだ感想(ネタバレあり)

まさに圧巻の一言。前回のラストから、壮絶な殴り合いを想像していましたが、描かれたのはそれ以上に恐ろしい「心理戦」でした。鉄平の行動パターン、思考、そして弱点をすべて読み切った上で、完璧な罠を張った蓮の知略には鳥肌が立ちました。

彼はただの優しい御曹司ではなく、愛する人を守るためなら、悪魔にでもなれる冷徹な頭脳の持ち主だったのです。 特に、譲二の働きは見事でした。冷静沈着に、しかし相手の心を的確に抉る言葉を選ぶ彼の姿は、最高のパートナーそのもの。蓮と譲二の信頼関係の深さも垣間見えた気がします。 一方、哀れなのは鉄平です。彼の歪んだ思い込みは、蓮の掌の上で完璧に利用されてしまいました。

暴力という最も原始的な手段しか持たない彼が、知略で戦う蓮に敵うはずもありません。ラスト、譲二に植え付けられた「ボス」への恐怖に怯える彼の姿は、まさに滑稽で、彼の完全敗北を物語っていました。次はどんな手を打ってくるのか、あるいは打てないのか。最高の形で決着した第一ラウンドに、興奮が収まりません。

【枯れた花に涙を】57話のネタバレまとめ

  • 蓮は鉄平が樹里の家に来ることを予測しており、部下の譲二に彼を尾行させていた。
  • 鉄平は、樹里の部屋の前に置かれたゴミ袋を「自分への当てつけ」だと、都合よく解釈し、彼女の家へ向かう。
  • 合鍵で侵入した鉄平は、半裸でベッドに横たわる蓮を発見し、激昂して殴りかかる。
  • そこへ譲二が介入し、蓮と二人で冷酷な「借金取り」を演じ、鉄平を精神的に追い詰める。
  • 譲二は「樹里はここにいない」「俺たちのボスも彼女を探している」と嘘を伝え、鉄平に新たな恐怖を植え付ける。

◁前の記事はこちらから

あわせて読みたい
【枯れた花に涙を】56話あらすじから結末まで全てネタバレ解説
【枯れた花に涙を】56話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

▷次の記事はこちらから

あわせて読みたい
【枯れた花に涙を】58話あらすじから結末まで全てネタバレ解説
【枯れた花に涙を】58話あらすじから結末まで全てネタバレ解説
ABOUT ME
コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
記事URLをコピーしました