【狗月神社】2話をあらすじから結末まで全てネタバレ解説

- 主人公のかずねは、13年前に「よっちゃん」という少年をかくれんぼの最中に死なせてしまったかもしれないという、非常に重い罪悪感を長年抱えていました。
- 彼女の記憶によれば、よっちゃんを近所の「鬼ばばあの家」と呼ばれる廃屋の長持に隠した後、その家が取り壊されるのを目の当たりにした、というものでした。
- しかし、同窓会で再会した旧友から、その廃屋は今もなお現存しており、彼女が目撃したのは学校の「旧校舎」の解体工事であったという、記憶とは異なる事実を知らされます。
- 自身の記憶が全くの勘違いであったことに激しく混乱したかずねは、13年越しの真実を確かめるため、恋人である哲史と共に、全ての始まりの場所である「鬼ばばあの家」へと向かうことを決意したのでした。
【狗月神社】第2話をネタバレありでわかりやすく解説する
前話にて、自身の記憶が不確かであるという衝撃の事実に直面したかずねは、恋人の哲史に付き添われ、ついに全ての元凶である「鬼ばばあの家」の前にたどり着きました。13年という歳月は、家の傷みを深くし、子供の頃に感じた以上の不気味なオーラを放っています。まるで、過去の秘密を暴こうとする者を拒絶するかのように、廃屋は静まり返っていました。この忌まわしき場所で、かずねは一体どのような真実と対峙することになるのでしょうか。
13年ぶりの「鬼ばばあの家」
目の前に広がる光景は、かずねの朧げな記憶の中にある姿よりも、遥かに荒廃していました。 屋根は一部が崩れ落ち、壁には蔦がびっしりと絡みついています。隣に立つ哲史は、「持ち主のおばあちゃんが超気難しい人で、絶対壊さないって言ってるって噂を聞いたけど…」と、どこか探検気分で話しますが、かずねの顔は恐怖と過去への悔恨で青白く、言葉を発することもできません。
「ねえここ 開くよ 中 入れそう…」。 哲史が無邪気に軋む扉に手をかけると、その音に弾かれたように、かずねは「やめてよ!!怖いよ…!!」と、かすれた悲鳴をあげます。 彼女の尋常ではない怯え方を見て、哲史は一度はその手を止めます。 しかし、「でもさ せっかく こんなとこまで 来たんだから…」と、彼女の心を縛り付けている鎖を断ち切るように優しく諭すと、その不安を包み込むかのように、そっと唇を重ねるのでした。
恐怖と安堵、そして再会
哲史の優しさに少しだけ勇気をもらったかずね。しかし、家の中を覗き込もうとした哲史の身体が、突然、見えない糸に引かれたかのようにバランスを崩し、家の中へと倒れ込んでしまいます。予期せぬ出来事に、かずねの心臓は凍りつきました。パニックに陥り、哲史の名を叫ぼうとしたその瞬間、背後から全く思いがけない声が聞こえてきました。
「おおー かずね! 久しぶりー!!!」
恐る恐る振り返ると、そこに立っていたのは、13年前に死んだとばかり思っていた「よっちゃん」本人、吉田克之でした。 彼は、かずねが立ち寄った喫茶店で友人たちから「かずねが俺のこと さがしてたって言うから」と聞き、この場所まで会いに来てくれたのです。 そして、なぜ同窓会の友人たちが「よっちゃん」の存在を知らなかったのか、その単純な理由も明らかになります。「俺のこと『よっちゃん』って呼ぶの お前だけだったから」と、彼は照れくさそうに笑いました。 他の友人たちからは「かっちゃん」と呼ばれていたため、話が噛み合わなかったのです。
13年間、鉛のように重くのしかかっていた罪悪感が、春の雪解け水のように一瞬で消え去っていきました。「よかったぁー!」と、かずねは堰を切ったように涙を流し、彼の無事を心から喜びます。 彼女を長年苦しめ続けた悪夢は、全てが単なる記憶違いと、子供の頃の些細な勘違いの積み重ねだったのです。
衝撃のつぶやき 「箱の中で窒息死なんてさ」
これ以上ないほどの安堵感に包まれたのも束の間、よっちゃんが放った旧友を気遣う何気ない一言が、物語を再び奈落の底へと突き落とします。
「哲史のこと ショックだったよな 箱の中で 窒息死なんてさ」
「てつしのこと…?」かずねの思考は完全に停止します。よっちゃんの言葉が何を意味しているのか、全く理解できません。彼の視線の先を見ても、先ほどまで自分の隣でふざけていたはずの哲史の姿はどこにもありませんでした。代わりに、かずねの脳裏に、今まで固く閉ざされていた記憶の扉がこじ開けられ、封印されていた本当の光景が鮮烈なイメージとなってフラッシュバックします。
甦る本当の記憶「返してください、てっちゃんを」
それは、13年前の冷たい雨が降りしきる日のことでした。黄色いKEEP OUTのテープが張られた「鬼ばばあの家」の前で、白い布を被せられた小さな体が担架で運び出されていくのを、ただただ見つめて泣き叫ぶ幼い自分の姿。 そして場面は、あの狗月神社へ。土砂降りの雨の中、神様に向かって必死に繰り返していた祈りの言葉は、「よっちゃんを返してください」ではありませんでした。
「てっちゃんを 返してください お願いします…!!!」
そう、あの日、あの薄暗い長持の中で息絶えたのは、よっちゃんではなく、てっちゃん…恋人である哲史だったのです。あまりにも辛く、受け入れがたい現実から自分自身の心を守るため、かずねの脳は無意識のうちに記憶をすり替え、行方不明になった「よっちゃん」を身代わりにすることで、かろうじて精神の均衡を保っていたのでした。
神様への願いが招いたもの
全ての真実がパズルのピースのように組み合わさった瞬間、かずねの目の前に、幼い頃の哲史の姿が幻のようにふわりと現れます。彼は悲しむでもなく、怒るでもなく、ただ穏やかに微笑み、こう語りかけました。
「怒ってないよ ちょっと 苦しかったけど かずねが 神様にお願いしてくれたから ずっと一緒にいられるもんね」
前述の通り、狗月神社には「犬憑き」の言い伝えがありました。それは、死んだ者の魂を現世に呼び戻してしまう、禁断の力を持っていたのです。かずねの純粋で必死な祈りは、皮肉にも神様に届いてしまいました。今まで恋人として共に過ごしてきた哲史は、彼女の願いによってこの世に呼び出された、死者の魂そのものだったのです。彼に触れるたびに感じていた、あの真夏でもひやりとする氷のような体の冷たさは、彼がこの世の住人ではないことの紛れもない証でした。
「ごめんね」と、幻の哲史が愛おしそうに、そして悲しそうに謝罪の言葉を口にすると、その姿は陽炎のように掻き消えます。 現実へと引き戻されたかずねは、「鬼ばばあの家」の前で一人、魂が抜け落ちたように呆然と立ち尽くしていました。心配そうに「かずねー?大丈夫か?」と呼びかけるよっちゃんの声だけが、あまりにも遠く、虚しく響き渡るのでした。
【狗月神社】2話を読んだ感想(ネタバレあり)
第2話は、まさに感情のジェットコースターと呼ぶにふさわしい、息つく暇もないほどの衝撃的な展開でした。よっちゃんが生きていたことが判明した瞬間は、主人公のかずねと全く同じように心の底から安堵し、「ああ、これで全て解決するんだ」と胸を撫で下ろした読者がほとんどだったのではないでしょうか。しかし、それこそが作者によって周到に仕掛けられた、巧みな罠でした。
その安堵の頂点から、よっちゃんのたった一言で物語が180度反転し、残酷な真実が牙を剥く構成は、見事としか言いようがありません。一人の少女の心の傷と記憶違いを巡るヒューマンミステリーだと思っていた物語が、一瞬にして背筋も凍るジャパニーズホラーへと変貌する様は、読んでいて鳥肌が立ちました。「犬憑き」という単なる地域の言い伝えが、物語の根幹をなす呪いそのものであったとは、想像の埒外です。
愛する恋人だと思っていた存在が、実は自分が幼い頃に過失で死なせてしまった友人の霊であり、その霊をこの世に呼び出してしまったのも自分自身だったという事実は、あまりにも残酷で救いがありません。かずねがこれから、このあまりにも重い真実とどう向き合っていくのか。そして、彼女の純粋な願いによって歪められてしまった運命の歯車は、一体どこへ向かっていくのか。深い余韻と、じっとりとした恐怖を残す、忘れられない一話となりました。
【狗月神社】2話のネタバレまとめ
- かずねと哲史は、全ての元凶である「鬼ばばあの家」へ向かい、そこで死んだと思っていた「よっちゃん」本人と奇跡的に再会する。
- よっちゃんは無事であり、かずねの13年間にわたる罪悪感は、単なる勘違いだったことが判明し、彼女は心の底から安堵する。
- しかし、よっちゃんの口から「哲史のこと ショックだったよな 箱の中で 窒息死なんてさ」という、物語を根底から覆す衝撃的な言葉が語られる。
- かずねは封印していた記憶を思い出す。13年前に長持の中で死んだのはよっちゃんではなく哲史であり、自分が狗月神社で「てっちゃんを返してください」と必死に祈っていたことを。
- これまで一緒に過ごしてきた恋人の哲史は、かずねの祈りによって現世に呼び戻された霊であり、彼女が全ての真実を思い出したことで、その姿を消してしまった。
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