映画【ボディビルダー】ネタバレ結末!ラストは妄想か現実か解説

ずっちー

映画『ボディビルダー』の衝撃的なあらすじと結末について、ネタバレありで徹底解説します。主人公キリアンの行動は嘘か本当か、彼の見る世界は妄想か現実か、多くの観客が考察を巡らせています。

彼の挑戦が招いた失敗や後悔の先にあるラストとは一体何だったのでしょうか。この記事では、海外の感想や評価も交えながら、物語の核心に迫ります。

この記事を読むと以下のことが理解できます
  • 主人公キリアンがたどる壮絶な物語の結末
  • ラストシーンが示す妄想と現実の境界線
  • 主演ジョナサン・メジャースの演技と海外での評価
  • 作品のテーマや監督が込めたメッセージ

映画【ボディビルダー】ネタバレあらすじ

  • キリアン・マドックスの孤独な日常
  • 惨憺たるデートの結末とジェシー
  • ステロイドによる心身の崩壊
  • 暴力の連鎖と孤立の深化を解説
  • ブラッド・ヴァンダーホーンへの執着
  • 衝撃的なラストシーンは彼の妄想

キリアン・マドックスの孤独な日常

キリアン・マドックスは、プロのボディビルダーとして雑誌の表紙を飾るという、一つの強烈な夢に取り憑かれた孤独な青年です。彼の世界は極めて狭く、障害を持つ祖父の介護、1日に6000キロカロリー以上を摂取するための異常な食事、そしてジムでの過酷なトレーニングという、ほとんど変化のないルーティンで構成されています。彼の内面世界を映し出すかのように、寝室の壁と天井は有名なボディビルダーたちのポスターで隙間なく埋め尽くされており、その中心には伝説的なチャンピオン、ブラッド・ヴァンダーホーンが神のように君臨していました。

言ってしまえば、キリアンの日常は、現実社会との断絶そのものでした。彼はヴァンダーホーンに宛てて、日々の出来事から心の奥底の悩みまでを綴った熱烈なファンレターを何百通も書き続けますが、その想いが届くことは一度もありません。彼の精神は常に不安定な状態にあり、激しい気分の浮き沈みや、締め付けられるような偏頭痛、そして不気味な悪夢に夜ごとうなされています。時には、亡くなったはずの母親の声が聞こえる幻聴を経験することさえありました。州から義務付けられたカウンセリングでは、担当医に「人々の頭蓋骨を叩き割り、その脳をスープのように飲みたい」という、心の奥底に渦巻く暴力的な衝動を吐露するほど、彼の精神は追い詰められていたのです。このように、彼の日常は栄光への渇望と、誰にも理解されることのない深い孤独感によって、静かに支配されていました。

惨憺たるデートの結末とジェシー

社会との接点をほとんど持たずに生きてきたキリアンですが、彼にもささやかな想いを寄せる相手がいました。それは、近所のスーパーマーケットで働くレジ係のジェシーです。しかし、二人の勤務シフトが重なることはなく、内気な彼が彼女に声をかける機会はなかなか訪れませんでした。ある日、彼はついに勇気を振り絞り、彼女をデートに誘うことに成功します。この一世一代のチャンスに、キリアンは身だしなみを完璧に整え、最高の自分を演出しようとレストランへと向かいました。

しかし、そのデートは惨憺たる結末を迎えることになります。会話の滑り出しは順調で、二人の間には穏やかな空気が流れているように見えました。ところが、彼はボディビルダーとしての食事計画を優先し、メニューにある7種類もの料理を一度に注文すると、ジェシーを前にして一人で猛烈な勢いで食べ始めます。彼女がその異様な光景に困惑する中、キリアンは突然、父親が母親を殺害した後に自ら命を絶ったという、あまりにも痛ましい過去を唐突に語り出しました。そこからは、彼の独壇場となります。話題は一方的にボディビルの世界へと移り、自身の三角筋や上腕二頭筋の素晴らしさ、トレーニングの過酷さ、そして「僕はミスター・オリンピアになる」という壮大な夢について、延々と熱弁をふるい続けたのです。彼の常軌を逸した言動と、会話のキャッチボールを完全に無視した態度に、ジェシーは次第に恐怖を感じ始めました。そして、ついに彼女は「トイレに行く」と嘘をつき、そのまま店から逃げ出してしまいます。一人残されたキリアンには、なぜ彼女が自分の元を去ってしまったのか、その理由を全く理解することができませんでした。

ステロイドによる心身の崩壊

キリアンの常人離れした肉体と、それを維持するための強迫的な夢の追求は、パフォーマンス向上薬物、すなわちアナボリックステロイドの継続的な乱用によって支えられていました。しかし、この禁断の力は、彼の心と体を着実に、そして確実に蝕んでいきます。彼は以前から抱えていた精神的な不安定さに加え、激しい腹痛や身体の節々の痛みといった、深刻な肉体的副作用にも常に苦しむようになりました。そしてある日、精神的に錯乱した状態で車を暴走させた結果、自損事故を起こして病院に運ばれたことで、彼の健康問題がもはや看過できない危険なレベルに達していることが白日の下に晒されます。

医師から告げられた診断は、彼の未来を打ち砕くには十分すぎるほど過酷なものでした。長年にわたる高濃度のステロイド乱用により、彼の血圧は生命を脅かすほどの異常な数値を記録しており、腎臓や心臓といった複数の臓器がすでに機能不全に陥り始めていたのです。さらに、超音波検査によって肝臓には複数の腫瘍が見つかり、即時の手術が必要だと宣告されました。しかし、キリアンにとって、それは自身の夢の終わりを意味する宣告でした。彼は大会に出場できなくなることを何よりも恐れ、医師からの生命に関わる忠告を完全に無視します。そして、その夜のうちに手術を拒否して病院を抜け出すと、破滅へと続く道だと知りながら、再び自身の体にステロイドを注射するのでした。

暴力の連鎖と孤立の深化を解説

社会から認められ、賞賛されたいという彼の切実な願望とは裏腹に、キリアンの行動はますます反社会的で暴力的になり、彼をさらなる孤立の淵へと追い込んでいきました。例えば、自宅の塗装の仕上がりに不満を抱いた彼は、業者に電話をかけてやり直しを要求します。しかし、その要求が拒否されると激しく逆上し、夜中に塗装業者の店へと車で乗り付けました。店が閉まっていることに腹を立てた彼は、ドアのガラスを叩き割り内部に侵入して物を壊し始め、その過程で自らの腕を深く傷つけてしまいます。

この一件を皮切りに、彼の内なる暴力の衝動はエスカレートの一途をたどります。あるボディビルディングの大会当日、会場へ向かう途中で、以前トラブルになった塗装業者の男たちに待ち伏せされ、集団で暴行を受けてしまいます。肋骨を折るなどの重傷を負いながらも、彼は血まみれのまま会場へ向かい、ふらつきながらステージに上がりました。しかし、渾身の力でポーズを取ろうとした途中で意識を失い、観客の前で無様に倒れてしまいます。この屈辱的な一件で彼の精神はさらに不安定になり、職場では些細な不満から客のパイに唾を吐きかけるといった奇行が目立つようになりました。当然ながら、彼はついに解雇されてしまいます。社会との最後の繋がりを失った彼は、まるで自身の無力感を埋めるかのように銃器店に通い始め、次第に複数の銃を収集し、その扱いに習熟していくのでした。

ブラッド・ヴァンダーホーンへの執着

キリアンの歪んでしまった世界の中で、彼が唯一、純粋な憧れと希望を抱き続ける対象、それがアイドルであるブラッド・ヴァンダーホーンの存在でした。彼はキリアンにとって、単なるチャンピオンではなく、成功の象徴であり、孤独な自分を理解してくれるかもしれないという幻想の対象でもあったのです。しかし、この最後の希望の光も、想像しうる限りで最も残酷な形で打ち砕かれることになります。ある日、彼の熱心な手紙がようやく届いたのか、信じられないことにヴァンダーホーン本人から電話があり、彼の写真撮影の現場に招待されるという奇跡が起こりました。

夢にまで見た憧れの人物と対面し、自身の肉体を褒め称えられ、キリアンは有頂天になります。それは、彼の人生で最も輝かしい瞬間だったかもしれません。しかし、その輝きは長くは続きませんでした。撮影後、ヴァンダーホーンはキリアンを自身のトレーラーに招き入れると、彼の純粋な憧れと尊敬の念を踏みにじるかのように、一方的に性的な関係を強要したのです。この衝撃的な出来事によって、キリアンの心は修復不可能なまでに完全に崩壊します。彼が長年信じてきた英雄はどこにも存在せず、目の前にいたのは、ファンを利用する自己中心的で残酷な人間でしかありませんでした。彼の不安定な世界をかろうじて支えていた最後の柱が、音を立てて崩れ落ちた瞬間でした。

衝撃的なラストシーンは彼の妄想

すべての希望を打ち砕かれ、信じていた世界そのものを失ったキリアンは、唯一残された感情である憎悪に身を任せ、復讐を決意します。彼は自宅で組み立てたアサルトライフルを手にブラッド・ヴァンダーホーンのポージング・ショーの会場に乗り込み、バックステージからステージに立つ彼に向けて、静かに銃口を向けました。そして、引き金に指をかけ、長年の憧れと裏切りが入り混じった対象を殺害しようとした、まさにその瞬間、彼の脳裏にこれまでの人生が走馬灯のように駆け巡ります。両親との幸せだったかもしれない記憶、献身的に介護してきた祖父の優しい顔、そして、かつて自分が誇らしげにステージに立っていた栄光の瞬間。

その時、彼の内面で何かが決定的に変化しました。彼は、まだ自分は、決して越えてはならない最後の一線を越えていないことに気づいたのです。キリアンは静かに銃を下ろし、誰にも気づかれることなく会場を後にして、家路につきました。帰宅した彼は、何も言わずにただ祖父の腕の中で、堰を切ったように子供のように泣き崩れました。翌朝、彼は新しい人間になることを決意したかのように、所有していたすべての銃を解体して線路脇に遺棄し、残っていたステロイドの瓶を全てトイレに流し込みます。それは、これまでの彼の人生を支配してきた狂気との完全な決別を意味する儀式でした。しかし、物語は、彼が自宅のガレージで再び筋肉を誇示するポーズを取り始める姿を映し出して幕を閉じ、彼の未来がどうなるのかという重い問いを、観客一人ひとりの解釈に委ねるのでした。

映画【ボディビルダー】ネタバレ以外の作品情報

  • 結末考察:キリアンに未来はあるのか
  • 主演ジョナサン・メジャースの怪演
  • 海外の感想評価まとめと評判
  • 作品情報と監督イライジャ・バイナム
  • ボディビルダーのネタバレまとめ

結末考察:キリアンに未来はあるのか

この映画は、観客に明確な答えや救いを提示しない、非常に曖昧で示唆に富んだ結末を迎えます。キリアンが自らの破滅の象徴であった銃とステロイドを捨てるという行動は、間違いなく、彼がこれまでの自己破壊的なサイクルから脱却し、新たな人生を始めようとする意志の表れです。これは、彼が暴力と歪んだ執着から解放され、より健全な道を歩み始めるかもしれないという、かすかな希望を観客に与えます。祖父との関係を再構築し、ボディビル以外の新たな目標を見つける可能性もゼロではないでしょう。

一方で、物語の最後に彼が再びガレージでポージングを始め、「いつか、全世界が俺が誰なのかを知るだろう」と感じる場面は、彼の問題の根深さをも示しています。つまり、彼の行動の根源にあった強烈な承認欲求と、社会から認められたいという渇望は、全く消えていないのです。これは、彼が再び同じ過ちを繰り返す危険性をはらんでいます。より健全な方法で自己実現を目指すのか、それとも何かのきっかけで再び歪んだ夢に取り憑かれてしまうのか、彼の未来は極めて不透明です。結局のところ、彼は最後まで誰にも本当の意味で理解されることなく、孤独の中で自身の存在価値を問い続けるのかもしれません。この結末は、承認欲求という現代的なテーマの複雑さと、一度傷ついた人間の精神が回復することの困難さを、容赦なく描き出していると考えられます。

主演ジョナサン・メジャースの怪演

本作の強烈なインパクトと芸術的な評価を語る上で、主演を務めたジョナサン・メジャースの存在は絶対に欠かすことができません。彼はこのキリアン・マドックスという難役を演じるにあたり、観客の度肝を抜くほどの驚異的な肉体改造を行いました。一部の報道によると、役作りのために1日に6100キロカロリーもの食事を摂取し、4ヶ月間にわたって1日3回の過酷なトレーニングを続けたとされています。その結果、スクリーンに映し出される彼の肉体は、単なる俳優の役作りというレベルを遥かに超え、長年この競技に人生を捧げてきた本物のボディビルダーが持つ凄みとリアリティを放っています。

しかしながら、彼の演技の真価は、その圧倒的な肉体的な側面だけにとどまりません。社会にうまく馴染めないコミュニケーションの不器用さ、時折見せる子供のような純粋さ、そしていつ爆発するとも知れない危険な怒りといった、キリアンの極めて複雑な内面を、完璧にスクリーン上で体現しました。彼の繊細な目線の動き一つ、か細く震える声のトーン一つが、キャラクターの深い孤独と、内側から崩壊していく狂気を雄弁に物語っています。海外の批評家からは「キャリア最高の演技」「次世代のデンゼル・ワシントン」「オスカー級のパフォーマンス」と、これ以上ないほどの賛辞が送られ、彼の俳優としての評価を確固たるものにしました。残念ながら、彼の私生活における法的問題が作品の公開に大きな影響を与えましたが、俳優としての彼の才能と、この作品で見せた鬼気迫るパフォーマンスが疑いようのないものであることは、誰もが認めるところでしょう。

海外の感想評価まとめと評判

映画『ボディビルダー』は、その挑戦的な内容から、海外の批評家や観客の間で大きな議論を呼び、概ね高い評価を受けています。特に主演ジョナサン・メジャースの演技に対する称賛の声が圧倒的に多く、同時に物語が内包する重いテーマ性も様々な角度から分析されました。

評価サイト批評家スコア観客スコア概要
IMDb6.9/10(高評価傾向)現代社会における孤独の危険性を描いたダークな物語として評価されています。多くのレビューで、ジョナサン・メジャースの圧倒的な演技が、時に散漫になりがちなプロットを力強く支えているとの意見が見られます。
Rotten Tomatoes80%92%批評家から高い支持を得ているだけでなく、観客からは92%という驚異的なスコアを獲得しています。キャラクターの怒りや孤独、身体醜形障害の苦悩などを生々しく描いた点、そしてメジャースの爆発的な演技が絶賛されています。
Metacritic65/100主要な批評家からの評価は賛否両論です。メジャースの演技は満場一致で高く評価される一方で、物語のペース配分や、救いのない陰鬱な展開に対して批判的な意見も見られました。

多くのレビューで共通して指摘されているのは、本作がマーティン・スコセッシ監督の傑作『タクシードライバー』や、近年の話題作であるトッド・フィリップス監督の『ジョーカー』の系譜に連なる作品だという点です。社会から疎外され、理解者を失った孤独な男が、徐々に精神のバランスを崩し、最終的に暴力へと向かっていく様を描いた、痛烈な心理ドラマとして捉えられています。また、主人公が黒人であるという設定を活かし、アメリカ社会における人種的な怒りや構造的な問題を掘り下げた作品として高く評価する声もありました。

作品情報と監督イライジャ・バイナム

本作は、アメリカインディペンデント映画界で注目を集める新進気鋭の映画監督、イライジャ・バイナムが脚本と監督を務めた、彼の長編2作目となる野心作です。彼の長編デビュー作である『ホット・サマー・ナイツ』(2017年)は、ティモシー・シャラメを主演に迎え、そのスタイリッシュな映像美とノスタルジックな雰囲気で高い評価を受けました。バイナム監督は本作で、HBOの傑作ドラマ『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』のシーズン1を手がけた名手アダム・アーカポーを撮影監督に起用し、主人公キリアンの混乱した精神世界を、ざらついた質感のフィルムと陰影の深い照明を駆使した、表現主義的なネオノワールのスタイルで見事に描き出しています。

2023年のサンダンス映画祭でワールドプレミア上映されると、その禁忌に触れるような衝撃的な内容と、前述の通りジョナサン・メジャースのキャリアを代表する圧倒的な演技が絶賛され、瞬く間に大きな話題を呼びました。しかし、主演俳優の私生活における法的問題により、サーチライト・ピクチャーズが配給権を手放し、当初2023年12月に予定されていた公開は無期限の延期となります。その後、ブライアクリフ・エンターテインメントが新たに権利を取得し、2025年3月21日にようやく全米で劇場公開を果たしたという、非常に波乱に満ちた経緯を持つ作品です。

ボディビルダーのネタバレまとめ

この記事で解説した映画『ボディビルダー』の重要なポイントを、最後に改めて以下にまとめます。

  • 主人公キリアンはボディビルの夢に取り憑かれた孤独な青年
  • 彼の日常は祖父の介護と過酷なトレーニングで構成される
  • ステロイド乱用により心身ともに崩壊していく
  • 憧れのボディビルダーはブラッド・ヴァンダーホーン
  • スーパーのレジ係ジェシーとのデートは悲惨な結果に終わる
  • 彼の暴力性は次第にエスカレートし社会から孤立する
  • 医師から肝臓の腫瘍と手術を宣告されるが拒否して逃亡
  • 憧れのヴァンダーホーンに性的虐待を受け絶望する
  • ラストの銃撃シーンは全て彼の妄想だった
  • 最終的に銃とステロイドを捨て、狂気と決別する
  • 結末は彼の再生と破滅の両方の可能性を示唆し曖昧に終わる
  • 主演ジョナサン・メジャースの鬼気迫る演技は絶賛された
  • 海外では『タクシードライバー』や『ジョーカー』と比較される
  • Rotten Tomatoesでは観客から92%という高い支持を得た
  • 監督は新鋭イライジャ・バイナムが務めた
ABOUT ME
コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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