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映画【誰?】ネタバレあらすじ解説!結末と視聴者の考察

ずっちー

映画【誰?】ネタバレありでわかりやすく解説する

日常に潜む、声だけの恐怖。今回は、短編ながら強烈なインパクトを残すホラー作品【誰?】の物語の全貌を、ネタバレありで徹底的に解説していきます。ドア一枚を隔てた攻防と、じわじわと心を蝕む恐怖の正体に迫ります。

娘を名乗る「何か」の来訪

ブルックを送り出した後、静寂に包まれた深夜。フィルは、玄関のドアを叩く音で目を覚まします。ドアの向こうから聞こえてきたのは、間違いなく娘の声でした。

「…フィル起きてる?…ドアを開けて」

しかし、その声は続けて奇妙な言葉を口にします。

「もしもし。ドアを開けて、パパ。ねえ?パパ、寒いって言ってるの。お願い、入れて」

その言葉を聞いた瞬間、フィルの表情が曇ります。なぜなら、ブルックは普段、決して自分のことを「パパ」とは呼ばないからです。この些細な、しかし決定的な違和感が、物語の恐怖の幕開けを告げるのでした。

決定的な一言と恐怖の確信

フィルが訝しんでいる、まさにその時。彼のスマートフォンに、本物のブルックからメッセージが届きます。

「あと10分で家に到着するわ」

このメッセージが、フィルの疑いを確信へと変えました。今、ドアの前にいるのはブルックではない。では、娘の声を完璧に真似て、家の中に入ろうとしているこの存在は、一体「何」なのでしょうか。

ドアの向こうの声は、なおもブルックとして語りかけ続けます。

「パパ、心配になってきたんだけど。どうしたの?」と。しかし、フィルは静かに、そして鋭く問い返します。

「お前…お前は俺のこと『パパ』なんて呼んだことないだろ。ママと結婚してから一度も」

核心を突かれた声は、「疲れてるのね。聞き間違えよ」と巧みに言い逃れようとしますが、もはやフィルの警戒心は頂点に達していました。彼はドアを開けることなく、郵便受けの差し込み口からそっと外の様子をうかがいます。しかし、そこには誰の姿も見当たりません。まるで、フィルの視線を予測して隠れたかのように。

「何か」の狡猾な揺さぶりと正体のヒント

正体を見破られたと悟った「何か」は、ここからさらに恐ろしい本性を現し始めます。ブルックの声でフィルを騙せないと分かると、今度は次々と別の人物の声を真似て、フィルの心の隙を突こうとするのです。

声を自在に操る悪魔的な能力

最初に聞こえてきたのは、フィルの兄弟と思われる親しげな男性の声でした。「おい、大丈夫か!俺だよ。さっきのヤツはもうどっか行った。開けてくれよ、兄弟」。さらに、母親らしき声で「フィル!お兄ちゃんの言うことを聞きなさい!いますぐに!」と、有無を言わせぬ口調でドアを開けるよう命令します。

しかし、最も残酷だったのは、次に聞こえてきた声でした。

「ねぇ、私よ。すごく会いたかった。ドアを開けて、話しましょう。もう一度、家族になりたいの。あなたと一つになりたいの」

それは、フィルが愛した妻の声でした。亡くしたのか、あるいは離れてしまったのかは定かではありません。ですが、その声がフィルの心の最も柔らかい部分を抉ったことは、彼が隠してあった拳銃を慌てて取り出したことからも明らかです。この存在は、ただ声を真似るだけでなく、相手の記憶や人間関係を探り、最も効果的な揺さぶりを仕掛けてくる、知的な捕食者なのです。

一瞬だけ映る「何か」の姿

この声だけの攻防の中、怪物の正体に関する唯一の視覚的なヒントが示されます。フィルが外の様子をうかがっていた時、玄関先に停められたバイクのミラーに、黒くうごめく触手のようなものが一瞬だけ映り込むのです。そのおぞましい姿は、ドアの向こうにいる存在が、決して人間ではないことを明確に物語っていました。

帰宅するブルックと届かない警告

最悪の事態は、最悪のタイミングで訪れます。フィルの心に揺さぶりをかけているまさにその時、何も知らない本物のブルックが家の前に帰ってきてしまうのです。

危険を察知したフィルは、ブルックの携帯に電話をかけ、必死の形相で留守番電話にメッセージを残します。

「ブルック?何があっても、絶対に玄関のドアに近づくな。外に『何か』がいるんだ。絶対に玄関に来ちゃダメだ」

しかし、その警告がブルックに届くことはありませんでした。それどころか、ドアの向こうにいる「何か」は、その留守電メッセージを再生してブルックに聞かせるという、悪趣味極まりない方法で彼女を挑発します。

父親の必死の叫びを、ただの意地悪な悪ふざけだと思い込んでしまうブルック。「じゃあ、あなたが本物のあなただってどうやってわかるの?」と、彼女は軽口を叩きますが、その直後、事態は急変します。

悲劇の連鎖と絶望のラスト

ブルックは、ふと自分の背後に異様な気配を感じ取ります。振り返った彼女の目に映ったのは、言葉を失うほどの恐怖でした。

「…待って。外に何かいる。…何あれ?何?…うそでしょ。フィル…フィル、開けて!今すぐ!冗談じゃないの!フィル!フィル!こっちに来る!フィル、助けて!助けて!」

響き渡る絶叫。しかし、ドア一枚を隔てたフィルには、どうすることもできません。やがて、ブルックの悲鳴は無情に途絶え、不気味な静寂が訪れます。

静寂の後、再びブルックの声が聞こえました。

「なんて冗談よ。でも、もういいでしょ。ずっと外に立ってて疲れたわ」

あまりにも平然としたその声に、フィルは全てを悟ったのでしょう。彼は、憑き物が落ちたように落ち着き払った声で、こう告げるのです。

「鍵は空いている」

家に入ってきたブルックは、床に転がった拳銃と、どこにもいないフィルの姿に気づきます。そして、リビングの奥から、今度はフィルの声が聞こえてくるのです。

「こっちにいるよ」

その声に誘われるように、彼女がリビングへ向かおうとした瞬間、化け物の餌食となって物語は終わりを告げます。この家で起きた惨劇、そしてこれから始まるであろう新たな惨劇を暗示して。この声は、果たして誰の声だったのでしょうか。

【誰?】第1話を読んだ感想(ネタバレあり)

初めてこの【誰?】を読んだ時の衝撃は、今でも忘れられません。派手な演出やグロテスクな描写に頼らず、「声」と「ドア一枚」という限定的な要素だけで、ここまで人間の根源的な恐怖を抉り出してくるとは、まさに圧巻の一言です。

特に心を揺さぶられたのは、父フィルの葛藤でした。彼は、娘の声を真似る得体の知れない存在に対して、終始冷静に対応しようとします。しかし、亡き妻の声を聴かされた瞬間、彼の心は激しく乱れます。家族を愛しているからこそ生まれる弱さ、その一点を的確に突いてくる怪物の狡猾さには、本当に背筋が凍る思いでした。

そして、何よりこの物語を忘れられないものにしているのが、救いのない絶望的な結末です。必死の抵抗もむなしく、親子は二人とも「何か」の餌食となってしまう。さらに、最後にはフィルの声が次の獲物を誘うための「餌」として使われるという、どこまでも残酷な幕引き。

日常と非日常は、実はドア一枚で隔てられているだけなのかもしれない。そんなことを考えさせられる、後味の悪い、しかし最高の読書体験でした。

【誰?】第1話のネタバレまとめ

  • ブルックが出かけた深夜、ブルックの声を真似る「何か」が家を訪れる
  • 父親のフィルは、普段呼ばれない「パパ」という呼び方から、その正体が偽物であると見抜く
  • 「何か」は兄や亡き妻など、フィルの近しい人間の声を次々と真似て、精神的に追い詰める
  • フィルの警告もむなしく、帰宅した本物のブルックがドアの外で「何か」に襲われてしまう
  • ブルックを乗っ取った「何か」が家に入ると、今度はフィルが「何か」に捕らえられたことが示唆され、絶望の中で物語は終わる
ABOUT ME
コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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