漫画【カラオケ行こ!】前編|狂児死亡の真相やラストの刺青の考察まで全てネタバレ解説

ずっちー

この物語は、合唱部部長として真面目な日々を送る男子中学生と、絶対にカラオケが上手くならなければならないヤクザ、という全く接点のないはずの二人が出会うところから始まります。

この記事では、和山やま先生の漫画『カラオケ行こ!』(前編)のあらすじと解説を、ネタバレありでご紹介します。二人の奇妙な関係は、一体どのようにして始まったのでしょうか。

【カラオケ行こ!】前編をネタバレありでわかりやすく解説する

物語は、主人公である岡聡実(おか さとみ)が、合唱部部長として最後の大会に臨んだ、ある蒸し暑い日の記憶から始まります。

憂鬱な合唱大会と謎の視線

梅雨の時期のうだるような暑さのせいか、あるいは観客の熱気が充満したホールの空気のせいか、聡実は言いようのない息苦しさを感じていました。 中学最後の大会というプレッシャーもあったかもしれません。 しかし、そのどれもが息苦しさの本当の理由ではないような気がしていました。

なにより、聡実はステージの上から、客席にいる誰かの強い視線を感じずにはいられなかったのです。

そして大会が終わった後、聡実は視線の主であった男に呼び止められます。 するとその男は、突然こう言いました。

「カラオケ行こ!」

ヤクザ「成田狂児」との出会いと依頼

雨が降りしきる中、聡実は男に連れられて「カラオケ天国」というお店に入ります。 そこで男は名刺を差し出し、「成田狂児(なりた きょうじ)」と名乗りました。 名刺に書かれた「四代目祭林組若頭補佐」という肩書きを見て、聡実は目の前の男がヤクザであることに気づき、恐怖で固まってしまいます。

そんな聡実の様子を気にも留めず、狂児は合唱コンクールでの聡実の歌を褒め称えます。

「森丘中は銀賞やったけど一番うまかったなぁ」

そして、にこやかな表情のまま、狂児は信じられないような本題を切り出しました。 「ちゃっちゃと本題に入るけど」

「歌がうまなるコツ 教えてくれへん?」

絶対に負けられない恐怖のカラオケ大会

あまりに突飛な依頼に聡実がついていけないでいると、狂児は自分の組で開かれる、とあるイベントについて語り始めます。

狂児が所属する組では、年に4回、カラオケ好きの組長が主催する組総出のカラオケ大会が開催されるというのです。 しかし、それは和やかな親睦会などではありませんでした。

組長は「絶対音感」の持ち主であり、組員たちの歌を自ら厳しく審査します。 そして、カラオケの次に組長が愛してやまないもの、それは「刺青」でした。

この大会で「一番歌がへたやとジャッジされた奴」は、罰として組長自らの手で刺青を彫られてしまうのです。

地獄の罰ゲームと必死の懇願

組長は彫師としては全くの素人です。 にもかかわらず「色に深みが出るからええんや」と言って手彫りにこだわり、わざと痛い場所を狙って容赦なく彫るため、その痛みは想像を絶します。

最悪なことに、組長には絵心が全くありません。 過去の「歌ヘタ王」は、ノコギリで皮膚を削られるような痛みの中で、見るも無残な「化け猫」を彫られたといいます。

「組長のモルモットになるんだけは死ぬ気で回避したい!!!」

狂児は、中学生である聡実に、文字通り命がけで助けを求めてきました。

渾身の『紅』と的確すぎるダメ出し

あまりに現実離れした話に、聡実は「無理です…」と断りますが、狂児は引き下がりません。 彼は自分の実力を見せるため、長年の勝負曲だというX JAPANの『紅』を歌い始めます。

長い前奏が終わると、狂児はシャウトし始めます。 しかし、その熱唱を聴き終えた聡実の口から出たのは、あまりにも率直な感想でした。

「終始裏声が 気持ち悪い」

聡実は続けて、狂児のような声が低い男性にとって『紅』は難易度が高すぎると冷静に分析します。 しかし狂児は、「俺ずっとこの1曲で勝負してきてん!」「この曲で生き残ってきたんや!」と悲痛な叫びを上げるのでした。

聡実自身の悩みと、ヤクザたちの歌声

この奇妙な出会いをきっかけに、聡実の日常は非日常に侵食され始めます。 ヤクザに歌を教えるというあり得ない状況の中で、聡実自身も大きな悩みを抱えていました。それは、合唱をする者にとって致命的ともいえる「変声期」です。

今まで簡単に出ていた高音が出なくなり、声はかすれてしまう。 自分の声に裏切られたような感覚に、聡実の心は沈んでいきます。 そんな心の余裕のない時に、狂児は再び聡実の前に現れ、カラオケボックスへと連行します。

そこには、狂児と同じように歌に悩む組員たちが集まっていました。 引くに引けない状況で、聡実は彼らの歌のレッスンをすることになります。

「ピッチが不安定です」

「声が汚いです」

「うるさいです」

「カスです」

恐怖のあまり一周回ってしまったのか、聡実の口からは辛辣すぎるアドバイスが次々と飛び出します。

芽生えた奇妙な絆と不穏な贈り物

レッスンを終え、疲れ果てた聡実は「もう無理です」「今日でもう終わりです」と狂児に別れを告げます。 しかし、車で送ってもらう道中、狂児は「レッスン代」として、聡実が行きたがっていたいちご狩りの代わりに、高級ないちごを差し出しました。

その優しさに触れた聡実は、思わずこう口走ってしまいます。 「でも狂児さんだけなら……大丈夫です」

こうして、二人の奇妙なレッスンは続くことになりました。後日、聡実が狂児に合いそうな曲のリストを渡すと、狂児は「かわいいなぁ!」と彼の頭を嬉しそうに撫でます。

「この辺りには絶対来んなよ」という狂児の言葉は、彼の優しさなのか、それとも警告なのか。 物語は不穏な余韻を残して、次へと続きます。

【カラオケ行こ!】前編を読んだ感想(ネタバレあり)

まず、設定の勝利だと感じました。「合唱部の中学生」と「歌がうまくなりたいヤクザ」という、水と油のような二人が出会う導入部から、一気に物語に引き込まれます。

恐怖とユーモアのバランスが絶妙で、組長による罰ゲームの「下手くそな刺青」は、怖いけれどどこか笑ってしまいます。狂児のキャラクターも魅力的です。ヤクザらしい凄みを見せたかと思えば、中学生に必死に教えを請う姿はとても人間味にあふれています。

特に印象的だったのは、聡実がヤクザたちを前にして「カスです」と言い放つシーンです。 恐怖の極致で飛び出した本音なのでしょうが、彼の真面目さと歌に対する真摯な姿勢が、結果的にヤクザさえも黙らせる説得力を持っているのが痛快でした。

一方で、聡実自身が抱える「変声期」という悩みも、物語に深みを与えています。自分の思い通りに歌えなくなった少年と、下手に歌うと命の危険がある男。歌という共通の悩みを抱えた二人が、これからどんな関係を築いていくのか、そして聡実は自身の壁を乗り越えられるのか、続きが非常に気になる展開です。最後に渡された「指」が、今後の物語にどう絡んでくるのかも目が離せません。

【カラオケ行こ!】前編のネタバレまとめ

  • 合唱部部長の岡聡実は、大会後にヤクザの成田狂児に「カラオケ行こ!」と声をかけられる。
  • 狂児は、組で最も歌が下手な者に組長が直々に下手な刺青を彫るという罰ゲームを回避するため、聡実に歌のレッスンを依頼する。
  • 聡実は狂児の勝負曲『紅』に対し、「終始裏声が気持ち悪い」と辛辣な評価を下す。
  • 聡実自身も「変声期」で高音が出なくなるという悩みを抱えていた。
  • 狂児に連れられ、他の組員たちの前でも歌のレッスンをすることになり、恐怖のあまり「カスです」などの辛辣なアドバイスを連発する。
  • 一度は関係を終わりにしようとするが、狂児の優しさに触れ、彼だけのレッスンを続けることを承諾する。
  • 狂児は帰り際に、破門された組員の「指」を聡実に見せ、危険な地区に近づかないよう警告する。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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