【狗月神社】1話をあらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー

【狗月神社】第1話をネタバレありでわかりやすく解説する

物語の幕開けは、土砂降りの雨が全てを濡らす夜です。古びた神社の鳥居の前で、ずぶ濡れになりながらも「神様 お願いします なんでもしますから」と、か細い声で、しかし必死に祈りを捧げる一人の女性、かずねの姿が映し出されます 。彼女のその表情には、ただ事ではない切迫感が滲み出ており、見る者の心を強く引きつけます。一体彼女は何を背負い、何をそこまで願っているのでしょうか。

場面は一転し、穏やかな光が満ちる室内へと移ります。かずねは同棲している恋人である哲史の待つ部屋へ静かに帰宅します。何気ない日常の風景ですが、週末に控えた地元の同窓会が、彼女の心の奥底に封じ込めていた過去の記憶の扉を、静かに、しかし確実にこじ開けようとしていました。この帰省が、止まっていた彼女の時間を大きく動かすきっかけとなるのです。

重い告白「人を死なせちゃったかもしれない」

哲史が淹れてくれた温かい飲み物を手に、二人は週末の同窓会の話題に触れます。しかし、久しぶりに旧友たちと会えるはずのその話題に、かずねの表情は晴れません。むしろ、どこか遠くを見つめ、心を閉ざしているかのようです 。彼女のわずかな変化も見逃さない優しい哲史が「気が進まないの?」と尋ねると、かずねはしばらく逡巡した後、ついに堰を切ったように、長年誰にも言えなかった重い秘密を打ち明けます。

「あたしね 人を 死なせちゃったかもしれないって……」

その衝撃的な一言は、部屋の穏やかな空気を一瞬で凍りつかせます。これは、今から遡ること13年前、かずねがまだ小学5年生だった頃に起きた、決して忘れることのできない出来事でした 。クラスメイト数人で公園で遊んでいたかくれんぼの最中、少し気弱で、いじめっ子たちの標的になりがちだった「よっちゃん」というあだ名の少年がいました 。正義感の強いかずねは、いじめっ子たちの悪意から彼を守ろうと、ある行動に出たのです

悲劇の始まり「鬼ばばあの家」

かずねがよっちゃんを隠す場所に選んだのは、子供たちの間で「鬼ばばあの家」と呼ばれ、気味悪がられていた古い廃屋でした 。誰にも見つからないようにと、彼女は廃屋の押し入れにあった大きな長持の中によっちゃんを隠しました 。そして、鬼役だった自分は、すぐに見つからないよう、その場から急いで逃げ出したのです

しかし、運命は残酷な悪戯を用意していました。廃屋を離れて間もなく、かずねは近所の人から「お母さんが倒れた」という衝撃的な知らせを受けます 。突然の出来事に頭が真っ白になった彼女は、よっちゃんを長持に隠したことなど完全に意識の外へ追いやられ、ただひたすらに母親の元へと走りました

幸い、母親の病状は盲腸で、緊急手術の末に無事回復しました 。しかし、かずねが安堵したのも束の間、次の日、よっちゃんが学校に姿を見せることはなかったのです

曖昧な記憶と衝撃の真実

言いようのない不安に駆られたかずねが、恐る恐る「鬼ばばあの家」の様子を見に行くと、そこには信じがたい光景が広がっていました。あれほど不気味な存在感を放っていた廃屋が、重機によって跡形もなく取り壊されていたのです 。この光景を目の当たりにしたかずねの心は、絶望で満たされます。彼女は近くの「狗月神社」へと駆け込み、「よっちゃんを返してください」と、泣きじゃくりながら祈り続けました

この狗月神社には、亡くなった飼い犬の魂が飼い主の元へ戻ってくるという、「犬憑き」と呼ばれる不思議な言い伝えがありました 。子供だったかずねは、科学的な根拠などあろうはずもないその言い伝えに、最後の望みを託すしかなかったのです

前述の通り、13年という長い歳月は、かずねの記憶を曖昧なものに変えていました。よっちゃんが転校生だったこと 以外、彼の本名すら思い出せない状態です 。優しい哲史に慰められ、落ち着きを取り戻そうとしますが、彼女の心の奥底に刻まれた罪の意識が消えることはありませんでした。

食い違う友人たちの記憶

重い心を引きずったまま帰省したかずねは、同窓会の前夜祭として集まった地元の友人たちと再会します 。昔と変わらない賑やかな雰囲気の中、かずねは意を決して、ずっと胸に秘めていた「よっちゃん」の存在を皆に尋ねてみました

友人たちの記憶にも、小学5年生の時に突然いなくなってしまった男の子の存在は確かに残っていました 。そして、会話が進むにつれて、かずねが13年間信じ続けてきた記憶を根底から揺るがす、驚愕の事実が明らかになります。

「『鬼ばばあの家』? もうないよね?」とかずねが尋ねると、友人は「え? まだあるよ?」とこともなげに答えるのです

友人たちの話を総合すると、「鬼ばばあの家」は今も取り壊されることなく、現存しているというのです 。では、かずねが目撃した解体現場は何だったのか。それは、当時校舎の建て替えで取り壊されていた「旧校舎」だったことが判明します 。友人たちは、旧校舎にあったウサギ小屋のウサギが移動させられる際に、かずねが「ウサギが死んじゃう!」と大泣きしていたことまではっきりと覚えていました

自分の記憶が、全く別の出来事と結びついていたという事実に、かずねは愕然とします。長年彼女を苦しめてきた罪悪感は、単なる勘違いだったのでしょうか。しかし、そうだとしたら、よっちゃんは一体どこに消えてしまったのか。謎はさらに深まります。真実を自分の目で確かめなければならない。その強い衝動に駆られたかずねは、東京にいるはずの哲史に電話をかけ、「一緒に来て!」と叫ぶところで、物語は次話へと引き継がれます。

【狗月神社】1話を読んだ感想(ネタバレあり)

第1話から、読者の心を鷲掴みにして離さない、非常に巧みなストーリーテリングに圧倒されました。主人公かずねが抱える「人を死なせたかもしれない」という罪悪感は、誰の心にも潜む可能性のある過去の後悔と共鳴し、読んでいて胸が締め付けられるようなリアリティを感じさせます。子供の頃の些細な行動や判断が、長い年月を経てどれほど重く心にのしかかるのか、その心理描写の緻密さには舌を巻くばかりです。

特に秀逸だと感じたのは、物語の核心に据えられた「記憶の不確かさ」というテーマです。かずねが絶対的な事実として信じていた「廃屋の取り壊し」が、友人たちの証言によってあっけなく覆されるシーンは、物語における最大の見せ場と言えるでしょう。この鮮やかな展開により、本作は単なる過去のトラウマを巡る物語から、人間の記憶の曖昧さと危うさを鋭く問う、質の高いミステリーへと一気に昇華されています。

恋人である哲史の包み込むような優しさや、久しぶりに会った友人たちの屈託のない会話が、かずねの抱える心の闇とのコントラストを際立たせ、物語に深い奥行きを与えています。これからかずねが「鬼ばばあの家」で目の当たりにする真実とは何か、そして忽然と姿を消した「よっちゃん」の行方はどうなったのか。ページをめくる手が止まらなくなるほどの、強烈な引き込まれる力を持った第1話でした。

【狗月神社】1話のネタバレまとめ

  • 主人公かずねは、13年前にかくれんぼで隠した少年「よっちゃん」を廃屋の長持に閉じ込めたままにしたことで、彼を死なせてしまったかもしれないという深い罪悪感を抱き続けている。
  • かずねは、よっちゃんを隠した直後に「鬼ばばあの家」と呼ばれるその廃屋が取り壊されるのを目撃したと、長年信じ込んでいた。
  • しかし、同窓会で再会した友人たちとの会話から、「鬼ばばあの家」は現在も取り壊されておらず、かずねが見たのは「旧校舎」の解体現場だったという衝撃の事実が判明する 。
  • 自身の記憶が全くの勘違いであったことに気づいたかずねは、本当の真実を確かめるため、恋人の哲史と共に「鬼ばばあの家」へ向かうことを決意し、物語は新たな謎へと進んでいく。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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