【狗月神社】6話をあらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 主人公のみひろは、失恋や事故物件への引っ越し、そして16年間連れ添った愛猫こむぎの死という不幸が重なり、人生のどん底にいました。
  • こむぎを失った深い悲しみに耐えきれず、狗月神社で「こむぎを返してください」と願った結果、こむぎの魂は、撮影中の事故で意識不明となった人気アイドル・雨宮ユウトの体に憑依する形で現世に帰ってきます。
  • しかし、こむぎが語る死後の世界は、飼い主が信じる「虹の橋」のような楽園ではなく、暗く冷たい無の待機場所であり、みひろの願いが彼に「呪い」をかけ、成仏を妨げていたことが判明します。
  • 憑依している雨宮ユウトの肉体はすでに限界を迎えており、生命活動を維持するためには、他の「タマシイ」を捕食しなければならないという恐ろしい状態に陥っており、物語はさらなる悲劇を予感させながら終わります。

【狗月神社】第6話をネタバレありでわかりやすく解説する

前編で、愛猫こむぎとの奇跡の再会が、実は残酷な「呪い」の始まりであったことを知ったみひろ。愛するがゆえの身勝手な願いが、こむぎを魂を喰らう存在へと変えてしまった事実に打ちひしがれる彼女に、あまりにも切ない結末が訪れます。これは、深い喪失と後悔の先に見つけた、本当の愛と別れの物語です。

束の間の平穏とつきまとう現実

世間では、意識不明のまま忽然と姿を消した人気アイドル・雨宮ユウトの事件で持ちきりでした。 テレビやインターネットでは連日この話題が取り上げられ、憶測が憶測を呼ぶ事態となっています。特にネット上では、ユウトが入院していた病院に熱狂的なファンの看護師がおり、その人物が誘拐したのではないかという信憑性の低い情報が拡散。 ついには無関係な一個人の名前や顔写真まで特定され、激しい誹謗中傷に晒されるという、現代社会の闇を象徴するような事態にまで発展していました。 その全ての元凶が、自分の隣で「みひろ だいすき」と無邪気に眠る愛猫こむぎ(の魂が入ったユウト)であるという現実に、みひろは胸が張り裂けそうなほどの計り知れない罪悪感を覚えていたのです。

それでも、みひろにとってこむぎは、何にも代えがたい世界で一番大切な存在です。 彼女は仕事を休むことを決意し、この先どれだけ残されているか分からない、あまりにも貴重で儚い時間を、その全てをこむぎのために使うと心に誓います。 そんな彼女の悲痛なまでの想いに応えるように、こむぎは一つだけ、彼が心の底から望む願いを口にしました。

「ぼく 前のおうちに 帰りたい!!!」

それは、みひろが恋人との同棲のために一人暮らしを始めるまで、父と母、そしてみひろとこむぎ、家族みんなで当たり前の毎日を幸せに暮らしていた、温かい思い出の詰まった実家のことでした。

思い出の場所への帰郷

みひろは、世間の喧騒からこむぎを隠すため、彼に深めの帽子やサングラスで変装をさせ、細心の注意を払いながら新幹線で実家へと向かいます。 しかし、その道中のターミナル駅である品川駅で、思いがけず破局した元カレとばったり遭遇してしまうのです。 彼の隣には、自分とは対照的に幸せそうな笑顔を浮かべる新しい恋人が寄り添っており、その光景は、みひろの心をさらに重く、そして複雑にさせました。

様々な想いを抱えながらも、ようやくたどり着いた実家は、こむぎにとって心からの安らぎを得られる場所そのものでした。彼は懐かしい家族の匂いに満たされた家の中を嬉しそうに駆け回り、そして、かつてみひろからもらった大切なおもちゃを、家具の隙間から見つけ出します。 それは、みひろが中学生の時の修学旅行のお土産として、友達とお揃いで買った何の変哲もない根付でした。 彼女にとってはただのお土産でしたが、こむぎは、みひろが自分のためにわざわざ京都まで取りに行ってきてくれたのだと、16年間ずっと信じ続けていたのです。

そんな二人を、事情など何も知らずに温かく迎え入れたのは、みひろの母親でした。 彼女は、突然訪ねてきて、息を切らしながら自分に勢いよく抱きついてくる美しい青年(こむぎ)を、娘の新しい恋人だとすっかり勘違いしながらも、その人懐っこさに目を細め、優しく微笑みかけます。 そして、亡くなったこむぎが、どれほど家族みんなから深く愛されていたか、どれほど大切で、かけがえのない存在だったかを、涙ながらに語り始めるのでした。

愛ゆえの、別れの決意

家族の変わらない温かい愛情に触れ、みひろの心はついに決まります。人気アイドル・雨宮ユウトの体を借りた、この偽りの生を無理やり続けさせることだけが、こむぎにとっての本当の幸せではない。他者の魂を喰らい続けなければ生きられない、そんな化け物のような存在にしてしまった彼を、これ以上苦しませてはいけない。本当に心から愛しているからこそ、彼を安らかに、本当の眠りへと送ってあげなければならない、と。

その悲痛な決意を悟ったかのように、こむぎの体はすでに限界を迎えていました。彼は、みひろが腕によりをかけて作った大好物のクリームシチューを前に、「タマシイ 吸わないと…」「もうやっちゃ ダメなんだよね」と、魂を喰らうことへの本能的な欲求と、みひろを悲しませたくないという理性の間で激しく葛藤し、体の崩壊が刻一刻と近づいていることを告げます。

「あたしが 悪いの 何度も 苦しい思い させてごめん」 みひろは、弱っていくこむぎを強く、しかし壊れ物を扱うかのように優しく抱きしめ、何度も何度も謝罪の言葉と止めどない愛を伝えます。一人暮らしを始め、彼を実家に残してしまった深い後悔。「こむぎより 大切なものなんて なかったのに…!」 その魂からの叫びに、こむぎは全てを悟ったかのように、静かに答えるのでした。

「ぼくは また ねむるんだね」 そして、まるで子猫が甘えるように、「なでてほしいよ」と、最後の願いを告げるのでした。

最後の奇跡と、永遠の別れ

雪が全ての音を吸い込み、世界を白く染め上げる静かな夜、二人は最後の場所、全ての始まりである雨宮ユウトが入院していた病院へと向かいました。 こむぎは、長きにわたって借りていた体を本来あるべき場所へ返すために、たった一人で病院の救急入口へと、覚悟を決めた足取りで歩いていきます。

「今度は 虹の橋を 渡るんだよ」 「うん」 「大好きだよ こむぎ」 「ぼくもみひろが だいすきだよ わすれないでね」

それが、16年間と、奇跡の数日間を共に過ごした二人が交わした、最後の言葉でした。病院の闇へと消えていくこむぎの小さな背中を、みひろはただ涙で見送ることしかできませんでした。

後日、テレビのニュースは、人気アイドル雨宮ユウトが病院で発見され、その後死亡が確認されたことを、感情を排して淡々と報じます。 みひろの部屋には、もうこむぎの温もりはありません。しかし、彼女の心の中には、雨の中で拾った小さな命、厳格だった父の膝の上で満足そうに甘える姿、いつも自分を真っ直ぐに見つめてくれていた美しい緑色の瞳、そして毎晩一緒に眠った時の柔らかな毛の感触が、決して色褪せることなく鮮やかに生き続けていました。

狗月神社からの帰り道、みひろはまた別の誰かが、自分と同じように叶わぬと知りながらも、愛するがゆえに禁断の願いを抱いて、あの鳥居をくぐるのだろうかと、静かに想いを馳せます。 今の彼女は、その人を責めることはできません。 愛する者を失うという、身を切るような痛みを、誰よりも深く知ってしまったから。深い悲しみと取り返しのつかない後悔を乗り越え、彼女はこむぎとの数えきれないほどの思い出を胸に、再び自分の人生を、自分の足で歩き始めるのでした。

【狗月神社】第6話を読んだ感想(ネタバレあり)

前編で提示された、魂を喰らうというショッキングでグロテスクな設定から、一体どのような残酷な結末が待ち受けているのかと身構えていましたが、後編は私の予想を心地よく裏切る、非常に切なく、そして涙なしには読めない感動的な物語でした。特に、みひろとこむぎが思い出の詰まった実家で過ごす一連のシーンは、本作屈指の名場面と言えるでしょう。何も知らない母親が語る、家族みんなのこむぎへの変わらぬ愛情を通して、みひろが自分の犯した過ちの本当の大きさと、本当の意味でこむぎを愛するとはどういうことなのかに気づいていく過程は、見事な心理描写だったと思います。

本作は、「狗月神社」というオカルトでホラーな要素を物語の装置としながら、愛するがゆえに犯してしまう人間の「身勝手さ」と、それでもなお決して揺らぐことのない「愛情の尊さ」という、誰もが共感しうる普遍的なテーマを描いているように感じます。愛するペットを失う悲しみは、それを経験した者にしか分からない、計り知れないほどの痛みです。だからこそ、主人公のみひろが理性を失い、「呪い」に手を出してしまった気持ちも、痛いほどに理解できてしまいます。

しかし、物語の結末で彼女が選んだのは、偽りの生を与え続けることではなく、愛するこむぎを安らかな眠りへと送ってあげる「本当の意味での別れ」でした。それは、これ以上ないほど辛く、胸が張り裂けそうな決断でありながら、彼女がこむぎを心の底から愛していることの、何よりの証明だったのではないでしょうか。結末そのものは悲しいものですが、読後には温かい涙と、深い感動が心に残る、忘れられないエピソードとなりました。

【狗月神社】第6話のネタバレまとめ

  • みひろとこむぎは、世間の目から逃れるように、たくさんの思い出が詰まったみひろの実家へと帰郷します。
  • 実家で母親から家族みんなの変わらぬ愛情を聞かされたみひろは、こむぎをこの世に縛り付けるのではなく、彼を安らかに眠らせてあげることこそが本当の愛だと悟り、別れを決意します。
  • こむぎもまた、他者の魂を喰らい続けなければならない苦しみから解放されることを望み、みひろの決意を受け入れ、借りていた雨宮ユウトの体を病院に返しに行くことを選びます。
  • 二人は涙ながらに最後の別れを告げ、こむぎの魂は、今度こそ安らかな眠りの地である虹の橋へと旅立っていきました。
  • 後日、雨宮ユウトの死亡が報じられ、みひろは深い悲しみと取り返しのつかない後悔を乗り越え、こむぎとの大切な思い出を胸に、再び自分の人生を歩み始めるのでした。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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