【大正學生愛妻家】1話をあらすじから結末まで全てネタバレ解説

- 舞台: 大正十年、春。東京市にある士族・橋家のお屋敷。
- 主人公: ふき。尋常小学校を卒業後、橋家で12年間働く女中。現在は24歳。
- 主人公の状況: 非常に倹約家で、夜なべ仕事(内職)をしてお金を貯めている。
- 橋家の状況: 6年前に、ご次男の勇吾(ゆうご)坊ちゃんが本家の養子となり、北海道へ渡った。
【大正學生愛妻家】第1話をネタバレありでわかりやすく解説する
大正時代の東京を舞台に、一人の健気な女中の運命が動き出す『大正學生愛妻家』第1話。彼女の前に、美しくも謎めいた青年に成長した「坊ちゃん」が6年ぶりに現れます。
さっそく、胸が高鳴る第1話の展開を詳しく見ていきましょう。
ささやかな幸せと倹約の日々
物語は、主人公のふきが、夜遅くまで内職の計算をしている場面から始まります。
「今月は…羽織が一枚、二圓五十銭。襦袢が二枚、二圓四十銭…」
彼女のささやかな目標は、今月の稼ぎを十圓超えにすること。そのために夜更かししていると、同僚の女中に「あんまり根詰めると明日辛いわよ」と心配されてしまいます。
ふきは橋家で働く女中。彼女の日常は「倹約」そのものです。
翌日、台所では、同僚が賄い(まかない)の「つみれ汁」を作っていました。
「実はこれ、材料費無料!! いつもは捨てちゃうアラと野菜の葉で作ったの!」
この言葉に、ふきの目は輝きます。
「お金をかけずに大満足の味…こんなことある? はぁ幸せ♡」
お金をかけずに得られる幸せを噛しめるふき。
しかし、その様子を見た後輩の女中から、「ふきさんってばー ほんっと貧乏…」「そろそろ結婚とか考えてますゥ?」「結婚資金でも貯めてるのかな~~って…」と、無邪気(?)で失礼な質問を浴びせられてしまいます。
もちろん、先輩の女中が「お喋りはそこまで」と止めてくれましたが、ふきがこれほどまでに節約に励むのには、実は深く、切ない理由があったのです。
突然の破談と二千圓の借金
ふきは、毎日がとても充実していると感じながら働いています。しかし、彼女は過去に大きな絶望を経験していました。
彼女は19歳で結婚が決まっていました。
しかし、祝言(結婚式)の直前、故郷の父親が急死。さらに、父親に二千圓もの借金があったことが発覚します。
(※大正時代の二千圓は、現在の価値で数百万円から一千万円以上とも言われる大金です!)
この借金が原因で、相手の家から「話が違う」「この縁談はなかったことに」と、一方的に婚約を破棄されてしまったのです。
絶望的な状況の中、奉公先である橋家の旦那様は「長年勤めたお前のことだ。援助が必要なら…」と温かい言葉をかけてくれます。
しかし、ふきは涙を浮かべながらも、毅然とした態度でこう宣言しました。
「なんでもありません! もうすっかり 腹を決めました!」
「たとえ何年かかっても 自分の力で働いて返ずって…ですから どうか 今まで通り 働かせてください」
彼女は、誰にも頼らず、自分の力だけで借金を返済する道を選んだのです。
同僚たちが「日々の節約すら楽しむ境地に至ってますもの」と評するように、ふきは絶望的な状況下でも前向きさを失わない、芯の強い女性でした。
6年ぶりの再会
そんなふきが働く橋家に、明るいニュースが舞い込みます。
それは、6年前に本家の養子として北海道へ渡ったご次男・勇吾(ゆうご)坊ちゃんが、進学のために東京へ戻ってくるという知らせでした。
奥様は「我が子と感動の再会ですもの」と大喜び。
ふきも、勇吾の好物だった和菓子屋「ひさご堂」の最中を買いに走ります。
ふきにとって、勇吾は特別な存在でした。
女中頭が「坊ちゃんは誰よりもふきに懐いてましたから」と言う通り、ふきは幼い勇吾の世話を本当によくしていました。
しかし、旦那様だけはなぜか、勇吾の帰郷を喜ぶ奥様たちとは裏腹に、少し難しい表情を浮かべています…。
「まだいたのか」―変わり果てた坊ちゃん
ふきが最中を買いに出かけている間に、勇吾が屋敷に到着します。
学生服に身を包み、背も高く、見違えるように立派な青年に成長した勇吾。
女中たちがその姿に「まあ なんてご立派に」と沸き立つ中、勇吾は玄関先で雑巾がけをしているふきの姿(を遠目で見ながら)に気づき、同僚にこう尋ねました。
「あの女中…まだいたのか。どこかへ嫁いだとばかり思ってた」
同僚が「事情があって破談になっちまって」と説明すると、勇吾は「へぇ…破談。なぜ?」と無表情で返します。
一方、ふきは台所でお茶の準備をしながら、一瞬見かけた勇吾の姿に戸惑っていました。
「はー…驚いちゃった。姿も声も 別人みたいに変わってて。一緒にいた頃のことは もう忘れちゃったのかな…」
かつてあれほど懐いてくれた坊ちゃんの変わりように、寂しさが胸をよぎります。
突然の膝枕と「俺の妻になるか?」
勇吾は自室に入ると、荷物を置き、慣れた手つきで机の引き出しを開けます。そこには古い手紙が。
彼は万年筆を取り出し、**「ここに 一筆加えれば…」**と呟き、その手紙に何かを書き加えようとします。その手紙には「身分は一切問はぬ」という一文が…。
彼が何を計画しているのか、この時はまだ誰も知りません。
その後、両親との再会を果たした勇吾。
彼は、養父の事業を継ぐために帝都(東京)で最高の教育を受けること、そして学校卒業後には事業の後継者に指名されたことを堂々と報告します。その姿は、かつての泣き虫な少年とはまるで別人でした。
女中たちも「まさに御曹司」「雲の上の存在だわ…」と噂しきり。
ふきも「気安くお呼びするのも気が引けちゃうねぇ…」と、その距離感に寂しさを感じながら、勇吾の荷物を部屋に運びます。
部屋には、かつて勇吾が使っていたままの懐かしい空気が残っていました。
ふきが「(昔は)泣き虫で甘えん坊で いつもそばにくっついてたなぁ…」と幼い勇吾を思い出していると、そこへ当の勇吾本人が入ってきます。
ふきが慌てて「あ あのっ お帰りなさいませ! ご立派に成長されて 何より…」と他人行儀に挨拶すると、勇吾はふっと表情を緩め、こう言いました。
「やだな ねえや。普通に話してよ。昔みたいに」
「ねえや」――それは、幼い頃のままの呼び名。
ふきが驚いて彼を見つめると、勇吾は「案外 中身はあの頃のまんま…?」と本棚を眺め、そしてふきに向き直ります。
「ふっ いや その顔。ねえやは変わらないなって。背は縮んだけど」
からかうようなその言葉に、ふきは「ぽすっ」と顔を赤らめます。
すると勇吾は、ふきの頭にそっと手を置き、優しく撫でたのです。
「そっちが伸びたんですよ」
「冗談だ 冗談だ」
慌ててごまかすふきの頭を撫でたかと思うと、勇吾は次の瞬間、なんとふきの膝に「ごろーん」と寝転び、膝枕の体勢に!
「なつ…ああ この感じ すごく懐かしいような…」
「ちょっと!! どいてください 坊ちゃん!!」
顔を真っ赤にして慌てるふきに、勇吾は「なぜ? たしか 昔は普通にしてたよな」と悪びれません。
昔、幼い勇吾が泣き疲れて、ふきの膝の上で眠ってしまった日のことを思い出すふき。
「そりゃまあ そうですけど…」と戸惑う彼女に、勇吾はとんでもない一言を告げます。
「なあ ねえや 提案があるんだが」
「俺の妻になるか?」
「どうだ? ねえや」
あまりに衝撃的な言葉に、ふきは完全に固まってしまいます。
しかし、その沈黙を破ったのは、ふき自身が忘れていた「最中(もなか)」のことでした。
「ふきや どこへ!? 最中はどうしました!?」
同僚の声に我に返ったふきは、「あ~…そうそう すっかり忘れてた」と大慌てで部屋を飛び出していきます。
扉の外で「嘘でしょ? あんなの… 知ってる坊ちゃんじゃない」と崩れ落ちるふき。
一人残された部屋で、勇吾は静かに何かを考えていました。
坊ちゃんは軟派男!?
翌朝。ふきは昨夜の出来事で一睡もできず、仕事に身が入りません。
朝食の席でご飯を山盛りによそってしまい、「めずらしいわね ボンヤリして」「体調でも悪いか?」と主人夫婦に心配される始末。
そこへ、勇吾が「おはよう」と入ってきます。
ふきは動揺を隠せず、まともに顔が見れません。
(ああどうしよう 昨日のこと いったいどんな顔してればいいの!?)
しかし、勇吾は「見ろこの たくあん 芸術的な切り方だなぁ」と、昨夜のことはまるでなかったかのように、至って普通に振る舞っています。
その態度を見たふきは、ある結論に達しました。
(何あれ どういうこと!? 坊ちゃん全然普通なんだけど…てことは昨日ののは ただの冗談)
ふきは、奥様の雑誌で読んだ「不良学生」の記事を思い出します。
「婦女子の体に気安く触れたり 簡単に甘い言葉を囁いたりする」「まさかあの坊ちゃんが… そういう破廉恥な軟派男に染まってしまったじゃ…」
ふきは、勇吾が6年の間に悪い遊びを覚えたのだと激しく誤解してしまったのです。
買い物と明かされた真意
ちょうどその時、奥様が勇吾に「学校はいつ始まるの?」「学用品は新調した?」と尋ねます。
「それじゃ 街へ買い物に出てきたら? 久々に ふきでも連れて…」という奥様の言葉。
(ふきは今日 調子が悪そうだったっけ)と心配する奥様を遮り、ふきが「いーえ奥様 坊ちゃんのお供 是非ともさせていただきます!」と、鬼気迫る形相で名乗り出ます。
(年長者として、ご進言せねば…!)
軟派男になってしまった(と誤解している)坊ちゃんを更生させるため、ふきは勇吾と二人で出かけることに。
街を歩きながら、ふきは早速「ご年長者として ご進言します」と説教を始めます。
「あんな冗談 笑えません」「妻になんて… 質の悪い悪ふざけを! 女性に対して あまりに非常識でしょ!!」
ふきが怒りに任せて前も見ずに歩いていると、荷車が。勇吾がとっさに彼女の腕を引き、事故を防ぎます。
「…おい どんな不良か知りませんが…」
まだ説教を続けようとするふきに、勇吾は静かに口を開きました。
「冗談じゃない」―借金返済と契約結婚
「…昔 ふたりで 一緒に この先の神社で 祝言を見たよな」
その言葉に、ふきは幼い日の記憶を思い出します。
花嫁行列を見て「綺麗だなぁ…」とうっとりするふきに、幼い勇吾が「ねえやも 花嫁さんになりたいの?」と尋ねた日のこと。
「とんでもない 相手もいないし」と慌てつつ、「でも やっぱり “いつか” は お嫁さんになりたいですねぇ」と夢を語った、あの日のことを。
「そういう会話… あった」「坊ちゃん… よく覚えて…」
驚くふきに、勇吾は真っ直ぐ向き直ります。
「昨日の言葉は 冗談じゃない」
「本気で俺の妻になるかと言ったんだ」
彼は、上京前に養父から「至急 結婚を命じる」と言われたことを告白します。
後継者として認められるには、学生のうちに家庭を築き、子供をもうけることまで要求されたというのです。
「養父は極端だからな」と呆れつつ、勇吾は養父が出した「花嫁の条件」を語ります。
「健康快活」「労働の苦労と金の価値を知り 虚栄に走らず」「素直で温厚な精神」「時には俺を諌め 導く度量を持ち 愛情に満ちた女」
その条件は、あまりにも目の前の女性、ふきそのものでした。
「ねえやのことだよ」
そして、彼はふきの事情をすべて承知の上で、こう言い切ります。
「借金はすべて俺が引き受ける」
「だっ… だめです それに 女中と…」「士族の方が…」「歳だって 六つも上で…」
身分差や年齢差を気にしてためらうふきを、勇吾は「士族など名ばかりの称号だ」「ナポレオンも ジョセフィーヌの 六つ下だった」と一蹴します。
「ねえや これは互いが救われるための話なんだ」
勇吾は、面倒な見合いをさせられる前に、養父の条件に完璧に合うふきを選んだ、と。
そして、ふきを木に追い詰め、優しく抱き寄せます。
「すべては会社のため ひいては橘一族の未来のために」「ねえやは橋家の忠実なる女中 そうだろう?」
「だったら 俺の頼みを断ったりしないよな?」
それは、命令とも懇願ともとれる、強引で、しかし真剣な申し出でした。
「はい…」と答えるしかないふき。
信じられない展開にふらふらになりながらも、屋敷に戻った二人。
勇吾はふきの手を固く握り、両親が待つ部屋の襖を開け、こう宣言します。
「お話があります」
ここで第1話は終わり。二人の運命が、今、大きく動き出しました。
【大正學生愛妻家】1話を読んだ感想(ネタバレあり)
第1話、最高でした! まさに「掴みはOK!」という感じで、一気に物語の世界に引きずり込まれましたね。
いやもう、後半の怒涛の展開に心臓が持ちません!
第1話の前半で「頭ポン」にキュンとしたのが、まるで序章。まさかその直後に膝枕、そして「俺の妻になるか?」という爆弾発言が来るとは!
ふきが「軟派男!」と勘違いするのも無理ないですよ。あんなことされたら一晩眠れません(笑)
でも、勇吾が翌朝ケロッとしていたのは、彼の中では「冗談」ではなく「本気の提案」のつもりだったからなんですね。
そして、街での真意の告白。
養父からの無茶な命令、「結婚しろ、子供も作れ」というプレッシャーの中で、彼が花嫁として選んだのが、他の誰でもない「ねえや」だったという事実に震えました。
彼が挙げた「花嫁の条件」は、まさにふきが12年間、真面目に、健気に生きてきた証そのもの。勇吾は6年離れていても、ふきのこと、そして彼女が背負った借金のことまで、ちゃんと知っていてくれたんですね。
「借金はすべて俺が引き受ける」
これはもう、ふきにとって最大の救いであり、抗えない提案です。
「互いが救われるための話なんだ」というセリフは、これが「契約結婚」であることを示していますが、ふきを木に追い詰めた時の「ねえやだから」という一言。
これ、絶対に「養父の条件に合うから」だけじゃないですよね!?
幼い頃からずっと見てきた「ねえや」への、彼なりの特別な感情が込められているとしか思えません。
「俺の頼みを断ったりしないよな?」という強引さも、エリート後継者としての顔と、昔のままの独占欲が混じった感じで最高でした。
最後にふきの答えも聞かずに手を引いて両親の元へ…!
エリート学生・勇吾、強引すぎる! でもそこがいい!
二人の「契約」から始まる関係がどうなっていくのか、そして橋家の皆の反応は!? 第2話が楽しみで仕方がありません!
【大正學生愛妻家】1話のネタバレまとめ
- 主人公の女中・ふき(24歳)は、過去に婚約破棄され、父親が遺した二千圓の借金を返済するために倹約生活を送っている。
- 6年ぶりに帰郷した勇吾(18歳)は、エリート学生に成長しており、ふきにだけ昔のように「ねえや」と呼ぶ。
- 勇吾はふきに膝枕をしながら**「俺の妻になるか?」**と突然の求婚をする。
- 翌日、勇吾が何事もなかったように振る舞うため、ふきは彼を「破廉恥な軟派男」と誤解する。
- 街へ出かけた際、勇吾は「昨日の言葉は冗談じゃない」と真意を告白する。
- 勇吾は養父から「後継者のため、学生のうちに結婚して子供も作れ」と命じられていた。
- 養父の出した「花嫁の条件」がふきに完璧に当てはまるため、勇吾はふきに「契約結婚」を申し込む。
- その条件として、勇吾はふきの借金二千圓をすべて引き受けると提案する。
- ふきが承諾(せざるを得ない状況に)すると、勇吾はふきの手を引いて、両親に「お話があります」と宣言するところで第1話が終了した。
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